ボーロファミリー1
週末になった。今月の残りは、姫たちと狩りに行かない。姫たちの魔力や知力を上げるために学園で頑張ってもらう。二人とも、勉強は嫌いじゃないというだけあって、図書館に籠って何やら勉強している。普通の魔法の勉強は、授業でやりたいそうだ。
いつものようにボルケーノに朝食を食べに行くと、アマンダに、加奈のところに行くように言われた。朝食なのにニッチもカウンターにいる。
「大体事情は聞いたけど、無理しないでね」
「加奈が来たのか?」
「珍しくね。加奈は、あなたのことが心配みたい。鬼人族に好かれるなんて、普通無いことよ」
「帝国の闇が深いってことか」
「そうね。加奈に聞いてちょうだい」
「おい、この変な仮面をスミスに頼まれた。仮面は、防毒マスクも兼ねているそうだ」
「衣装も仕上がっているわよ」
「俺のお下がりだ。このリュックに入れてもってけ」
「ありがと」
二人は、加奈自身から色々聞かされたようで、ちょっと神妙な顔をしていた。情報は、加奈から聞けの一点張りで、何も教えてくれない。今までになかったことだ。スラムの加奈邸に行って門番の小鬼に声をかけると、いつものように鬼人族の大男が出てきてオレを案内した。
コンコン「姐さん、ダークです」
「入ってもらって」
「朝から酒か?」
「いいでしょ、それにしても早いのね。ツインは、まだ来ていないわよ」
加奈は、昨晩から飲んでいたみたいだ。
「アマンダとニッチの様子がおかしかったからな。何を吹き込んだ」
「情報共有しただけよ。いいから座って。捜査結果が知りたいんでしょ」
「そうだな」
オレは、加奈の前に座った。
「ボルケーノに行ったんだってな。アマンダと仲悪いのによく行ったな」
加奈は、少し肩を上げた。
「商売敵ってだけよ。仲良くする理由はないでしょ。それでも情報共有しないといけない時もあるのよ」
「それで?」
「闇ギルドだった。ヒパティアの監視は、ルービン家の依頼よ。だけど帝国は、関わってはいないと思う」
「分かった」
「どうする?。ルービン家は、帝国子爵よ。相手が悪いわ」
「闇ギルドを潰す。この件にかかわっている連中は、わかっているんだろ」
「ツインを襲った連中のこともね。ボーロって言う殺人組織よ。そいつらは、闇ギルドのギルド長が良く使っている連中で、暗殺も請け負っているわ。ツインには、当分王都から離れろって言った。でも、情報をダークに渡すまでいるって、さっきまでいたんだけど」
「ツインを一人にしたのか。ツインの居場所を教えろ、オレが行く。ツインから、ボーロの話を聞く。こいつらは、殲滅だ。ツインには、酒をおごるって言ったしな。闇ギルドは潰す。闇ギルド組織が壊滅するだけで、ヒパティア先輩の依頼は消える。でも、ボーロは許さん。殲滅と言ったが、ほとんど殺せればいい。自分たちがどうなったか喧伝する奴もいるからな」
「本気で言っているの!」
「ツインのところに連れていけ」
チリリン、チリリン、チリリン
「へい」
「赤鼻、ダークをツインのところに連れてって。ボーロファミリーがらみよ」
褐色の鬼人族がやってきた。
「分かりやした」
「もう動くんでしょ。赤鼻は、鼻が利くのよ。何かに役立てて」
「ありがとう」
「赤鼻、ダークをよろしくね」
「へい姐さん。ダーク、行こう」
「二人とも気をつけて」
赤鼻が、フード付きのコートを着て外に出た。ツインは、王都に住んでいる。鬼人族は、王都に入れない。
「赤鼻は、どうやって王都に入るんだ」
「フィールドインから下水道に入る。抜け道はいくらでもある」
「それいいな。いろいろ教えてくれ」
「任された」
王都とスラムの間には、フィールドインがある。ここには、人族も人族に近い亜人もいる。鬼人族も普通に生活している。
「こっちだ。川側に下水道の入り口がある」
スラムからみゆき通りに出ないで、澄み音川に向かう。そこには、みゆき通りと比べ物にならないほど屋台が出ていた。
「こんな所があったんだ」
「下水道の整備は、王家からの仕事なんだ。過分な予算を貰っているから、綺麗なものだぞ」
屋台の先には、下水道の大きな入り口があった。王都の下水道を清掃するにしては、人足が多すぎる気がする。まだ午前中なので、どんどん、亜人たちが下水道に吸い込まれていく。
「王都の下は、亜人たちでいっぱいだぞ。下水の整備と清掃事業は、王家の資産で賄われているんだ。みんなで分け合うと、これぐらいの人数は賄える」
「王家の人たちが!」
「公の話だが、いちいち貴族にするな。俺らで、勝手に拡張もしているしよ。いろいろ口出しされると面倒だ」
「分かるよ。もしかして魔法学園から、ここに入れるか?」
「王城からもだぜ。王家と公爵家は知っている。侯爵家以下は知らない。宰相のマトバ様は知っているんだったか。すまん、詳しくは知らない」
「後で、レジーナに聞くよ」
下水道から広いところに出た。運河だ。下水と別に運河がある。運河では、魚人族が往来している。魚人族の一種族だったか、人魚族だったかが、浄化の能力を持っている。彼らもここで働いているのだろう。最初下水道しかなかったのは、カムフラージュじゃないかと思われる。
「人魚族の子供が、オレの近くで跳ねて、キャッキャ言っている」
「おまえ。人魚族にもてるんだな」
「初めて、フィールドインに来た時も、人魚族の子供に抱きつかれたよ」
「人魚族の子供が人族になつくのは、珍しいことなんだぜ」
下水道なのに運河も兼ねているので、外の明かりも入ってくる。結構騒いでいるが、王都で、これらの声を聞いたことがない。協力者がいるのだろうと思う。もしかしたら平民は、ほとんどそうか。貴族だけ、蚊帳の外な気がする。
「貴族街やメインストリートは、暗川だ。通気も悪い。ここには、光の魔法を得意とする一つ目族と、風を操るのが得意なムササビ族がいる。ダークは魔法使いだろ。勉強するなら紹介する」
「そのうちに頼む。旨いトンテキ屋台を知っているんだ。飯をおごるよ」
「オークの親父がやってるトンテキ屋か。そこは知ってる」
「だよなー。そこ以外は知らないんだ。他の店も紹介してくれ。金はオレが出す」
「まかせな」
運河は、貴族街にも1本だけあるが、ほとんど使われていない。赤鼻は、王家のために作ったと言っていた。メインストリートと貴族街は、もっぱら下水の浄化や清掃が行われている所。そこは、汚いので、みんな嫌がると言っていた。
ダークは、バザールの人たちが多く住むコレット通りのアパートメントに住んでいる。
「そろそろ兄貴のアパートだ。裏から入れるから、俺も行くぜ」
赤鼻が、フードを深くかぶった。
赤鼻は、鬼人族の中では小柄な方だ。オレと変わらない。だけど、肌が褐色で、特に鼻が赤い。フードを深くかぶらないと目立つ。
そういや、バザールで、フードをかぶっていたやつを結構見たな。
王都に、亜人もいたんだと思う。
下水道から裏路地に出てアパートの裏口から入る。
コンコン「兄貴、ダークを連れてきやした」
コンコン「兄貴」コンコン
赤鼻が、青い顔をしておれに振り向いた。
「返事がない」
「ドアを開けてみろ。そう―っとだぞ」
そっ
ギィー
赤鼻が、扉が開くと、目を見開いてオレを見る。
「替われ、オレが行く」




