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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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ヒパティア先輩

ヒパティア・ベラ・ルービンは、天文学者だ。そして、宇宙開発素材のチタンを生成できる魔術師でもある。

 オビトに大剣を教えると約束して問題があることに気が付いた。この世界に大剣なるものがない。全く無いわけではないが、アダマンタイト以上。つまりミスリル製とかでないと、重さも強度も足りないだろう。そんな高価なものは、国単位で一本とか二本しか持てない。学生には全く無理な話だ。ところが、前世の知識で言うと、ありふれた金属で大剣を作ることができる。チタンは、鉄より硬く、鉄の2/3の重さだ。それも、金属の中で4番目に多い金属。おれは、チタンの原石である金紅石の鉱脈を見つけているから作れないことはない。ただ、電気炉がないとこれを生成できない。おれの相棒になるドロイドは、成長すると宇宙船をメンテナンスする、メンテナンスドロイドになる。彼に頼むとチタン製造は簡単なのだが、成長はこれからだ。困ったなと、サンプルで採った金紅石を取り出して見つめてしまった。


「あら、どうしたの?。殊勝な顔しちゃって。お姉さんに話してみなさい」


 ルームメイトのエリーが気軽に声をかけてきた。彼女は、ピクチャーロイド。絵の精霊と言えばいいのかな。


 エリーって、長生きだから、この世界のことに詳しいかも。


「こら!、なんだか嫌なことを考えたでしょう」


 それも勘がいい。


「これなんだけど、見たことある?。これで剣を作ると鉄より丈夫で重さの軽い剣が作れるんだ。太陽にすかすと紅色に見えるだろ」


「金紅石ね。これをどうしたいの?」


「大剣を作りたいんだ」


「ふうん、ヒヒイロカネにしたいってことね」


 その手があったか。ヒヒイロカネは、たぶんチタンの魔法金属だ。それなら将来錬金で生成できそうだ。そうしなくてもチタンに精製できる。


「エリー、ヒヒイロカネの元の鉱物の名前〈つまりチタン〉は、〈この世界で〉なんて言うんだったっけ」

「金鉱石を精製したものね。黒金でしょ」

「そう、それを手に入れることはできないか」

「そうね、こぶし大ぐらいのを見たことがあるわ。でも加工が大変で、みんなさじを投げてたけど」

「そうだった。純度の高いチタンの塊なんて、こぶし大がせいぜいだった」

 それも、ほとんど産出しない。


「どうしたの?。聞いてあげるから、そんなに落ち込まないで、お姉さんに相談しなさい」

「友達に、剣を教えてくれって言われたんだけど、特殊な経歴の奴でさー。床からこれぐらいの長さの大剣じゃないとうまくなりそうにないんだ。でも鉄で、その大きさの剣を作ると、重すぎて振れない。でも、黒金=チタンは、鉄の2/3の重さなのに固いんだ。くろがね製の大剣が欲しい」

「う~ん、無茶な注文だけど、何とかなるかも」

「本当か!!」

「あの子、変わっているから、気に入られないと無理かな。ヒヒイロカネの錬金を研究している子がいるのよ」

「学園に?」

「そうだけど、変わった子なのよ。たぶん魔法が嫌いなのね。だから、魔法耐性の高いヒヒイロカネを作りたがっていると思うんだけど、ヒヒイロカネって、魔力を黒金に、これでもかって注いでやっとできるレアメタルでしょう。ちょっと屈折しているのよ。話が合わないと、相手にしてもらえないと思うわ」

「変わり者ってことだ」

「そうよ。どうする。会ってみる?。私は、彼女のいる場所を教えることしかできないわよ」

「女性なの?」

「突っ込みどころ満載のね。夜に屋上にある天体観測所に行くと会えるわよ。望遠鏡で、ずっと星を見ているわ」

「そういうの、ちょっと知ってるタイプかもしれないかな」

 星をずっと見ていられるなんて、まるで艦隊士官か星間学者みたいだな。

「結構美人さんなのね。だから何人も、その時間にアタックしたんだけど、みんな空振りで、一時話題になったのよ。今は誰も相手にしないわ」

「ちょっとわかるかな。ああいうのは2種類いるんだ。星を見ているからって、ロマンティストとは限らないんだよ」

「ふうん、じゃあ行って見れば。当たって砕けなさい」

「趣旨が変わってないか」



 サウザンド魔法学園の本校舎は、城みたいにデカい。その天辺に展望台がある。この惑星が、ちょっと変わったタイプだというのは感じていた。そのため、天文学が進んでいない。


 ヒパティア・ヴェラ・ルービンは、天文学者。星の世界の謎を解き明かしたい。彼女は、子供のころから、星の世界にあこがれていた。サウザンド魔法学園には、天文学科はないが、選択授業に天文学がある。希望に満ちて入学し、天文学を学んだが、謎は深まるばかりだ。


 なぜ、天の川が二つある。

 どうして、太陽は、点滅することがある。


 事象の記録量は素晴らしい。マイナーな学問だけどこの国は、国の予算を使って何千年にわたって記録してきた。最初は天文学というより星読みで、占いだった。それを学問にしたアリスト先生は素晴らしい。先生により、この世界の一部が解明された。私は、その先に行きたい。アリスト先生は、756年前の学者。それから天文学は進んでいない。


ギィ

 珍しい。展望室に来る生徒がいるのね。今年の新入生かしら。


 そのヌボーっとした長身の男子は、何も言わないで、ずっと星を見ている。どうしよう。話しかけるべきか。もう、長いこと、私の後輩ができていない。研究員になって3年。部員は私ひとり。この天体観測部も、あと3年で廃部になる。


「君、星が好きなのね」


「嫌いだね」


 何この子、何この子。

「じゃあ、何しに、ここに来たの?」


「星を見に来た」


 だから、どういうことよ。何なのよ、何なのよ。

「星が嫌いなのに、なんで星を見に来たの」


「そりゃあ、この世界が変だからに決まってる。オレは、この世界の謎を解き明かしたい」


「どう変なの?」


「見ろよ、スターダストベルトがあんなにあるじゃないか。ああいうのは、惑星の質量が大きくないと、こんなに、大きな輪っかにならないんだ。それに、アステロイドベルトの先じゃあないとそんな惑星はない」


 スターダストベルトは、土星の輪と同じ。この惑星を回っている塵。人が住める惑星で、ここまでの規模になるのは珍しい。


「アステロイドベルトって意味わからないし、スターダストベルトだって、まだ確立されていない理論よ」


「ふっ、遅れているな。その望遠鏡は飾りか?。天の川(銀河)と、スターダストベルトは明らかに動きが違うだろ」


「そうよ。でも、数が多すぎる。分別するのが大変なのよ。もう700年以上も観測が続いているわ。本当は、星たちを観測したいのに」


「魔法技術を発達させて、空に上がればいいだろ。スターダストベルトを超えればいい」


「それをやろうとしたアリスト先生は、この大地から10キロメートル上空までしかマナがないことを発見したのよ。それ以上は飛べないわ。だから私は、魔力なしで、空に上がろうと研究しているの」


 しまった、変人だと思われる。これじゃあ、天体観測部に入ってなんて言えない。


「なるほど、それでヒヒイロカネを作ろうとしているんだ」


「そうだけど、なんでわかるの?」


「分かるだろ、チタン、おっと、黒金は、ロケットの外装素材だからな」


「ロケットの概念を知っているの?」


「質問が多い先輩だな。オレは、黒金の大剣を作りたいだけなんだ。先輩が錬金できるって聞いた」


「できるわ。だけど、大きいのでも、こぶし大が限度よ。ヒヒイロカネにしないと、大きな物は作れないわ」


「そんなの、電子炉があればできるだろ。黒金の溶解温度は、1,668度しかないだろ。オレに、黒金を錬金してくれよ。ここに黒鉄になる金紅石がある。やってくれるのなら原石をいっぱい此処に持ってくる」


「電気炉って何?。魔力を通していないのに、黒金を溶かすことができるの?」


「先輩が黒金を錬金してくれたら、証明して見せるけど」

 この手の学者は、実証とか証明という言葉に弱い。


 ヒパティアは、声を出さないで、あうあうしていたが、スンと口を閉じた。

「あなた、新入生でしょ。名前は?」


「ダークだけど、ダーク・サンドストーム」


「ふうん、ダーク君が、天体観測部に入るのなら、黒金を錬成してあげてもいいわよ」


「そんなことしたら、寝る時間が、・・・・。分かったよ入部する。幽霊部員でもいいのか」

 おれの相棒のドロイド。MR1(メンテナンスロボット1)が、どうせ天体観測するか


「いろいろ、私の疑問に答えてくれるのならね」


「それなら喜んで」

「じゃあ決まりね」

 握手した。握手でわかるのだが、相手は、位の高いお貴族様だ。身分の高い女性は、力を抜いて手を差し出すだけ。姫たちとおんなじだ。先輩は、高貴な人なんじゃないかと思った。


 チタンが何とかなるのはありがたい。大剣もそうだが、これで、ドロイド製作が劇的に進む。チタンという金属自体は、金属の中で4番目に多い素材だ。ただ精錬技術のないこの世界で、使われていないだけだ。


 ヒパティア先輩と仲良くなれたとエリーに自慢した。


「へー、仲良くなれたの!」

「黒金も分けてくれるって」

「今日は、雷が落ちるのかしら」

「落ちないよ」

「だってあの子、学園に来て7年目だけど、誰にも心を開いたことないのよ。やっぱり、帝国の子女だからそうなのかなて思っていたけど、よりによってダークにねぇ」

 雷は、オレじゃあなく、ヒパティアの事を言っているようだった。

「ちょっと待て、帝国の子女ってどういうことだ。ヒパティアと握手したけど、うちの姫たちと変わらない握手だったぞ」

「ごめんね、小耳にはさんだだけで私もよく知らないのよ」

「敵か?」

「そんな感じに見えた?」

「見えなかった」

「私もそう思うけど」

「エリーがそう言うならそうなんだろうけど、決めた。アマンダに調べてもらう」

「女の子のことを?。それは酷いんじゃない」

「それが、条件が良すぎるんだ。先輩の錬金の研究室は半地下で、そのさらに地下に、広い倉庫があるんだと。そのうち話すけど、いろいろ都合がいいんだよ。でも、そこでオートマータ(ドロイド)の錬成をしようと思ったら、オレ等のことをヒパティアに全部話さないといけないんだ」

「話せばいいじゃない。調べても何も出ないと思うけど」

「それなら、それでいいんだよ」


 いまだに朝飯は、ボルケーノに行っている。アマンダに頼んで、ヒパティア先輩のことを調べてもらおうと思った。しかし、この手の調査は、加奈の方が上だという。このあいだ彼女の首を絞めたばっかりだけど、仕方なく加奈のところに行くことにした。

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