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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
12/37

エリーに大目玉を食らう

追跡者が現れる。それを難なく撃退したが、どこで見ていたのかピクチャーロイドのエリーに大目玉をくらう。

 夕食もボルケーノで食べようと学園を出た。校門を出ると、後をつけられているのがわかる。どちらかというと前世の懐かしい感じの追跡者だ。オレは、バザールに向かう途中にある袋小路に入って追跡者を待った。

 相手が、なぜこんなところに来たんだと、影に潜んでいる。その首根っこを念動力でつかんで、この袋小路に引きずり出した。


「お前は、何処の手のものだ」

「オッ、グッ、貴様。なぜこんなことをする」

「それは、おれのセリフだ。おれが、お前を見ていなかったと思っていたのか。もう一度聞く、誰の差し金だ」

「なっ、何のことだ」

 ボギッ

 腕を一本折った。

「ギャウッ・・」

「どうだ、話したくないなら、悲鳴も上げられないようにしてやろう。右手の次は左手でいいか。骨はまだいくらでもある」

 ボギッ

 左腕も折った。

「ウーウー・・・」

 念動力で宙づりになった男は、ガクガク痙攣を起こしだした。

「オレの気は短いぞ」

 掴んでいる首の力を緩めてやる。

「カハッ、貴様!、俺に命令したのは、ヨハン・アウグスト様だぞ。貴族を敵に回して、タダで済むと思っているのか」

「そうなのか、そりゃ楽しみだ。次は、おれが乗り込んでいくと伝えとけ。今回は、お前の腕二つで済ませてやる。次は、これだけでは済まないと言っとけ」

 暗黒の手を放してやった。

「ギャフッ」

 折れた腕が地面にたたきつけられて、男は気を失った。

「チッ、軟弱者め」


 この件は、後でエリーから大目玉を食う。ピクチャーロイド恐るべし。この袋小路のどこに絵があったことやら。



 バザールにあるボルケーノに行く途中、魔石屋に声をかけられた。バザールは、今日もにぎわっていた。


「ようダーク、寄って行かないか。掘り出し物の魔石が出たんだ。ホレストスワロウの魔石だ。こんなバザールの小さな店で、こんなものがあるなんて思わないだろ」

 魔石屋が、嬉しそうに声を弾ませる。。

「オレ、魔石の価値がよくわかっていないんだけど」

「気にするな。これは、スピードアップの魔石だ。普通の魔石屋で買ったら、金貨3枚する。どうだ、金貨2枚でいいぞ」

「スピードアップって、属性は?」

「聞いて驚け、雷だ」

「買った!」

 電気の魔石だ。相棒のドロイドのサブシステムに、従来の電気式装置を組み込みたいと思っていた。核融合炉ができるまでは、これが使えそうだ。

「売った」


 金貨2枚払って、残り金貨1枚。オレは、この魔石屋に、一番、金を落としていると思う。そこでドロイドの部品のことを思い出したので、ボルケーノを素通りして路地裏の、そのまた裏路地に入って小間物職人のスミスの工房に行くことにした。(工房と言ってもタダの長屋)

「こんちはー、この間頼んだ物できた?」

「もう来たのか。普通は、期日までできていないって言うが、できているぞ。で、いったいこれは何なんだ」

「ゴーレムのコア収納庫だよ。それと、大きい方は記憶装置の。こっちは金ができたらもっと頼むからね」

「俺は、儲かりゃそれでいいけど、なんで10個もコアが収納できるものを作るんだ」

「そりゃあ、命が多い方が壊れないだろ」

「そうか、そういや、すぐ壊れるもんな。もっといいコアを作れるようになれよ」

「分かってる」

 この間は、わざと壊れるように作ったが、本当は、そんなことは起きない。魔法陣のペン先を作って貰った後頼んだのは、並列装置だ。これでメインコアを10個並べて稼働できるようになった。メインは、厚手の魔石を使うが、その中にナノボット化されたサブコアが、幾万と並ぶことになる。それは、記憶装置も同じ。


「お代は、まけて金貨1枚でいいぞ」

「そんなにするの!。それって、全財産だよ」

「お前、外装は、あとで変えるって言っていたが、連結部分は、そうはいかないだろ」

「だからアダマンタイトを渡したでしょ」

「それは、魔導線だろ。当然本体の強度を考えると外装は、青鉄を使うしかないだろ」

 スミスの言う通りだ。メインコア収納ボックスの外装強度を失念していた。

「わかったよ、金貨1枚。おれ、すっからかんだよ」

「仕方ないガキだな、将来設計が成ってない。俺も似たようなもんか。どうする?。ここで、飯を食っていくか?。出前をおごるぞ」

「食ってく」


 ついでに、超難関な光学部品の相談をする。簡単に言うと目の部分。現在魔剣士として必要な武器は剣だ。クリスタルソードは、元となるクリスタルがないと作れない。しかし、ライトニングブレードなら、今制作しているドロイドが作れる。ライトニングブレードは精細な武器だ。ドロイドに精細な物を作ってもらおうと思ったら、目は必須だ。


「ゴーレムに目なんかいらないだろ」

「魔力感知の目って、ぼーっとしているよね。おれ、姫たちの護衛に抜擢されただろ。姫たちがゴーレムを欲しいっていうんだ。粗相があったらまずい」

「そうだろうな。まあ、面白そうだから付き合ってやるか」

 スミスの仕事への意欲は、本人が面白いかどうかだ。


 目は、高価素材の塊だ。目の心臓にあたる画像素子のベースは、闇魔石で作ることになり、感光部分は光魔石と4属性の魔石のナノプローブで補う。それを目玉の形に加工しないといけない。目に入ってくる光量を調節する虹彩も精細な部分だ。スミスに頼るしかない。


「いちばんの問題は、瞳孔部分だろうな」レンズ部分。

「出来れば、厚くなったり薄くなったりするのがいいんだけど」

「無茶言うなそんな素材・・・あるな」

「あるんだ」

 言って見るもんだ。

「透明で、伸縮自在で、強度のあるものだろ。スライムの核にそういうのがある」

「そんなにすごい物を核にしているなら、とても強いスライムなんだろ」

「なあに、ダークでも倒せる低級スライムさ。核はそんなに大きなものじゃないんだ。そんなもの、使い道がないから誰もとろうとしない。ただなー、スライムがいるのは、魔の森の湿地帯だろ。冒険者に依頼するしかないが、依頼すると高くつくぞ」

「そのうち採りに行くよ。飛べるようになれば、オレでも魔の森に入れるんだろ」

 ドロイドの製作は秘密だ。いい加減な方法でグラン森林に入ろうと思っている。

「言うなー、少年。死ぬなよ」

「おう」

 拳を付き合わせた。

 スミスは、こんなことで、大人ぶっておれを止めることはしない。

「核は丸いが、それで大丈夫か?」

「えっと、こんな形にしてもらいたい。こういうのをレンズって言うんだけど」

 まず目の詳細な絵を描いて、瞳孔のレンズ部分の絵を描いた。

「それで、これが、こう薄くなったり、厚くなったりできるようにしてもらいたいんだ。例えばだけどね、この紙に開けた小さな穴を覗いてみてよ。そう言って紙の小さな穴をあけて覗かせた」

 この世界にレンズはあるが、顕微鏡の概念は、まだない。

「この穴をか?」

「いいから、それで自分の指を近づけてみてみなよ」

 空気レンズ。

「うおっ、なんだ、俺の指の模様がよく見えるぞ」

「これは、厚いレンズと同じかな。薄い方は遠くが見えるようになるよ。と言ってもちょっとだけどね」

 ナノブローブが調整すると、とんでもないことになるけどね。

「うおーーー、すげえ。大発見じゃないか」

「紙に穴をあけただけだろ」

「本当にダークは面白いな。スライムの核を持ってこい。使えるように加工してやる」

「やった」

「お代は、負けないけどな。これ、難しそうだぞ」

「ですよね」


 スミスに飯をおごってもらって、今度は、目ぬき通りの銀行に向かった。まさか文無しになるとは思わなかった。銀行に寄って、親がくれたお金をおろすしかない。この時間ならギリギリ間に合う


 銀行に行こうとすると、まだウッドホテルにいる、エマの側使えのヨハンに呼び止められた。ウッドホテルは、銀行の向かいだ。


「ハアハア、ダークさんじゃないですか。どちらへ?」

「銀行です。生活費が切れちゃって」

「ハアハア。それなら、少し融通しますのじゃ。とにかく、ここではなんですから、わたくしたちの部屋に行きますのじゃ。さあさあ」

 ヨハンは、老骨鞭打って、ホテルから急いで降りてきたようで息が荒い。オレの背中をぐいぐい押してホテルに入ろうとする。

「そんなに急かさなくても逃げませんって」


 エマは、もう、寮に引っ越したし、一人枠のメイドも連れて行っている。それでも心配だし、王都にいる気のヨハンは、まだホテルにいる。ヨハンも国の客人として、ウッドホテル最上階の4階に泊まっていた。ヨハン達は、エマ姫が学園の外に出るとき、どう守護するか話し合っているところだった。


 ヨハンの部屋に行くと、レジーナの護衛長のメルド大尉みたいな人を筆頭に、何人もの護衛が雁首をそろえていた。オレが部屋に入ると、皆なぜか肩の力を抜く。そこには、もっと偉い人がいた。


「ダーク君が来てくれましたのじゃ」


「おお、エマ様は、元気に過ごしておられるか」


「さっき学園を出るときにレジーナといるところにばったり出くわしました。これから、二人でお茶だと言ってましたよ」


「そうかー。わしらは、無力だ。学園に入ることもできない」


 アー、うん。やっぱり前世がらみで、彼らの気持ちがよくわかる。

「学園の外に姫が出るときは、皆さんが必要だと思いますけど」


「それはそうだが・・・」

「彼はエマ様の護衛隊長のジョナサン・ジョーンズ大佐ですじゃ」


「大佐って、国に居なくていいんですか?」


「姫は将来、聖女になられるかもしれんのだぞ。しかし、サモル王国を刺激するわけもいかん。エイギル少佐に、引継ぎを済ませた所だ」

「エイギルです」

 知ってます。

 知っているがなんとなくもう一度挨拶をした。

 エマが聖女の器だというのをローマン王国の高官や軍は重要視していた。

「よろしくお願いします。そういえばさっそくなんですが、今週末から、レジーナと荒野に魔獣をと、言っても小動物なんですが、魔獣を狩りに行きます」


「護衛の初仕事ですな。聞いていますぞ」


「エマに、同行したいと言われまして」


「聞いてないぞ!」


「さっき出がけの話ですから」


「ウムムムム、やはり、わしらは無力だー」


 大佐がことさらこう言うのは、ここに残りたいからだろうな。


「レジーナ姫の護衛は3人です。護衛長のメルド大尉、カイ少尉とアベド少尉です。護衛長のメルド大尉は、まだ24歳です」


「グッ」

「ジョーンズ大佐。ここは、我らも、相手の護衛に合わせんといかんのですじゃ」

「分かっておりますぞ。しかしここは、異国の地。エイギル少佐と、セビン中尉とメイデル中尉の出撃で釣り合うと思いませんかヨハン殿」


 ヨハンが、オレに何か言ってもらいたいと目で合図してくる。はぁ、困った。成人したばかりのオレにどうしろと。


「オレは、それでいいと思います。それで、ジョーンズ大佐がおられるうちに、メルド大尉たちと護衛の打ち合わせをしてはどうですか。エマとレジーナは、とても仲がいいです。これからも一緒に行動することが多いでしょう。二人の動向の情報も彼らからもらっていいと思います」


「おお、ダーク君。我らとレジーナ姫の護衛を引き合わせてくださるか」


 国同士でやればいいんじゃないかと思うけど、どうしても大佐が、打ち合わせに混ざりたいんだろうな。


「公式ということで?」


「それは、かまわん」


 おれが話すってことは、非公式だと思うけど。

「メルドさんたちは、学園の前にいると思うんで呼んできましょうか」


「いやいや、席を設けた方が良いですじゃ」


「じゃあ、バザールのボルケーノという酒場でどうでしょう」


「うむ、少佐は?」

「その方が話が弾むと思います」

「ではダーク君、そのように先方に伝えてくれ」


「分かりました。時間は、寮の門限の7時以後でいいですか?」


「望むところだ」

「ダーク殿、助かったですじゃ」


 サウザンド魔法学園の前には、サモル王国衛兵の派出所がある。メルド大尉たちは、そこに詰めることができる。訪ねて行くのは簡単だ。それにしてもこの件をボルケーノに行ってアマンダたちに話さないといけない。


 お金を融通するという話に乗って、ここまでついてきたけど、簡単にはいかないか。


「これは少ないですが、爺のポケットマネーですじゃ。姫を頼みましたぞ」

 金貨五枚貰う。この間、金貨十枚を貰ったばかり。無理をしているんじゃないかと心配になる。

「いやいや、足りんだろ」

 エイギル少佐に短剣と金貨二十枚を渡された。そして短剣も。

「ワシ、これでもローマン王国の伯爵なのだ。この短剣には、我が家の家紋が入っとる。ダーク君を客人として認める。何かあったら言ってくれ」

「ジョーンズ大佐もポケットマネーですじゃ」

「もっと持っていれば良かったわい」


 メルド大尉たちには、ジョーンズ大佐が伯爵だというのは黙っておこう。じゃあないと、ボルケーノで話が弾まない。

「ありがとうございます」

 すごく助かる。今日は、1件を除いて、いい出会いが多いな。軍人と話すのは、落ち着く。


 結局、学園とホテルとボルケーノを往復しているうちに夕方になった。アマンダが、「夕飯食べてく?。お客さんを連れてきてくれたからおごりよ」と、言う。夕飯は、スミスに奢ってもらっている。なので、翌朝の食事をタダにしてもらうことにした。


 寮に帰るとエリーに捕まった。


「ちょっと、遅いじゃない」


 エリーの機嫌が悪い。

「ぎりぎり門限前だと思うんだけど」


「あなた、アウグスト騎士爵の密偵を半殺しにしたでしょう」


「よせよ、腕を2本折っただけだろ」


「誉めてない。そこに座って」


 エリーの絵は、ピアノの上にある。おれは、ピアノの椅子に座らされた。


「はー、事件を起こしたら、学園に居られなくなるって思わないの?」

「相手が悪意を持ってやってきたんだ。正当防衛だよ」

「貴族と平民だとそうはいかないの。今日の相手は、闇ギルドの子だったから、話が表に出ないだけよ」

 子って、結構歳いってたけど?。

「アマンダから、人種差別の話を学園でしただけで、居づらくなるって聞かなかった?」

「聞いた、だから大人しくしているだろ」

「こういう話が公になると、人種差別がどうとかよりきつい話になるのよ。やるなら、ダークだってばれないようにやりなさい」

「変装しろってことか」

「本当は、大人しくしてもらいたいけど、そうね。仮面でもかぶって見る?」

「小間物職人のスミスに頼んでみる。声も変わった方がいいんだろ。フルフェイスのを頼むかな。頭をすっぽり覆うやつ」

「もう!、反省の色なしね」

「いいんじゃない、ダークに世直ししてもらったらいいよ」

 グリーンがひょっこりやってきた。

「グリーンは、ダークに甘いのよ。そりゃあ、前の方が良かったけど」

 前の方って、差別前の話だろ。こいつら、300年以上生きているんじゃないか。

「決まりだね。ダーク、変装するんなら上から下まで全部やってよ」

「そうだな、ちょっと頑張るか」


 グリーンのおかげで、お小言が短くて済んだ。ダークは、小躍りしながら雷の魔石で、魔石ゴーレムの強化に入った。


「私がいないとあの子、すぐ悪い方に行く気がする」

「いい子だよ。少なくとも、帝国の彼よりはね。ずっと見守る気なんだろ」

「そうね」


 エリーは、グリーンに慰められて落ち着いたようっだった。もう夜だ。普通の絵に戻り動かなくなった。

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