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エスカレーター

作者: 金子文誉
掲載日:2023/01/14

 エスカレーターを上っていた。目的があるわけではなく、ただ時間つぶしと言うか、そうウィンドウショッピングをしようとしているらしかった。エスカレーターからフロアに出ると、目の前にはブランド物のバッグがワゴンに積まれていた。興味はない。そのフロアを歩きまわることにした。財布、鞄、靴、スーツにシャツにネクタイ。どれにもそそられることがなく、ただただ歩きながら目視するばかりだった。内ポケットの財布には十分な金銭があることが見なくともその重さで分かっていた。

 エスカレーターを上ることにした。上がって行く。次のフロアに降りると、またブランド物のバッグがワゴンに積まれている。デザインが階下で見たはずのそれらと同じと言う記憶が思い出された。フロアを歩きまわる。財布、鞄、靴、スーツにシャツにネクタイ。どれも階下の配置と同じなのだ。おかしい。

エスカレーターをさらに上った。動悸がおかしい。次のフロア。またしてもブランド物のバッグがワゴンに積まれている。早歩きに回る。やはり財布、鞄、靴、スーツにシャツにネクタイが階下と同じなのだ。焦燥と呼んでいい動悸に変わった。

 上りエスカレーター前で足が止まった。行くべきか、降りるべきか。もう一度だけ、と心に決めてエスカレーターを上がった。その上のフロアも同じだった。

 下ろう。下りる下りる下りる。エスカレーターを下りて、下った。そこは一番最初に歩いたフロアの下の階のはずだ。数えていたのだから間違えはない。下りたその前にブランド物のバッグがワゴンに積まれていた。乱れる呼吸のまま、もう走っているのと変わらない速度で歩いた。財布、鞄、靴、スーツにシャツにネクタイ。

 もう一階下った。動悸や焦燥を穏やかにしてくれるような光景ではなかった。このデパートなのか、ショッピングセンターなのか、何なのか知れない場所で一体何をすればいいというのだろうか。ただ上がり、下りフロアを歩きまわるくらいしかできることがなかった。


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