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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
8章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、学園でのんびりする。

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魔王ちゃんと今日の報告

「ただいまぁ」



「おかえりなさい。リョカ、ご飯」



「あ~はいはい、すぐ作るから待っててね」



 アルマリアとの戦闘を終え、再度商談の話に戻ったのだけれど、ギルマスはすでに僕のことを無条件に信頼してくれているのか、特に突っかかりもなく話はまとまっていき、ジブリッド商会とゼプテン冒険者ギルド、ヘリオス先生の3組が納得する形で終わった。



 その後は細かい調整やら何やらで、結局夜までかかってしまった。

 作業が終わったのち、大人たちは大人たちで食事に出かけたのだけれど、僕は寮に帰ってミーシャのご飯を作らなければならなかったし、何より寮でゆっくりしたかったから、お父様の誘いは断って、こうして寮に戻ってきた。



 出迎えの言葉が幼馴染らしいものだったけれど、あまりそう言うのに耐性がないのか、獣耳の幼女が呆れたような顔をしていた。



「お前作ってもらう立場だろうが。まずはリョカを労ってあげたらどう?」



「あ~アヤメちゃんいいんだよ。ミーシャにそういうのは求めてないし、美味しく食べてもらえるだけで僕は満足だよ」



「……なあ魔王、俺ずっと思ってたのだけれど、あんたってダメ男に絶対引っかかるタイプよね?」



「そ、そんなわけないじゃないですかぁ。僕だってちゃんと選べる魔王様ですよ」



「おい獣、暗にあたしのことダメ女だって言わなかったかしら?」



 じゃれ合いのような喧嘩をし始める聖女と神獣を横目に、僕は頭の中で何度も否定する。

 ダメ男には引っかからない、ダメ男には引っかからない。良し大丈夫。

 そもそも僕がミーシャを甘やかすのは、ミーシャがその手の手伝いをすると逆に被害が出るからだ。断じて頼られているのが嬉しいとか、求められる人生を歩んでこなかったから、こうして求められたら求められただけ応えてしまっているわけではない。



「リョカさんリョカさん、わたくしは、そこに愛があれば、どのような思想でもきっと素晴らしいものだと思いますよ」



「……うん、ありがとうルナちゃん、晩ご飯何食べたい?」



「肉」



「肉」



「えっと、わたくしはリョカさんの作ったものなら何でも美味しいですよ。強いて言うのであれば卵を使ったものがお気に入りです」



「カツど――オムライスにしますね」



 ミーシャとアヤメちゃんが喜びそうなメニューを口走りそうになったけれど、これでも花を恥じらう乙女。どんぶりをかきこむはしたない真似をルナちゃんにさせるわけにはいかない。

 いや嘘だ。本当は僕の幼馴染がきっと気に入って毎食かつ丼を要求する様がありありと想像出来るから、どんぶり物は作らないようにしている。



 こうして僕は夕食の準備に取り掛かり、ゴロゴロお肉のデミグラスをかけたオムライスとサラダ、スープを作り、食卓に並べた。

 その際、ルナちゃんは手伝いを申し出てくれたけれど、ミーシャとアヤメちゃんは寝っ転がって菓子をぼりぼり食べていた。

 夕食前だぞお前たち。



 食卓に着き、2人と2柱との夕食が始まったのだけれど、相変らずミーシャは黙々と食べており、意外にもアヤメちゃんも嬉しそうにこそしているが声を上げてはいない。



「獣って食事中は静かなんですね」



「アヤメは食事をとられたくないのと、気に入ったものを満喫するために静かになりますね」



「ミーシャはお父様の躾の賜物だね」



 すると、大人しくしていたミーシャがジッと僕を見始めた。



「どうかした? 足りない? なんか足そうか」



「ん……おじさんは?」



「ああ、ガイルたちと食事に行ったよ。ミーシャも行きたかった?」



「ううん、こっちでいい」



「そう」



 改めて黙々と食べるミーシャの顔をジッと見て、僕は彼女の口元についてしまったソースを拭う。



「ん~、あによ?」



「うんにゃ、今日は大活躍だったそうじゃん。お疲れ様」



「別に、あたしはただムカついたから殴っただけ」



「本当にその通りって例は俺が知る限りあんまりねいわよね。もうちっと周りにも優しくしろよ聖女様」



「それがミーシャの優しさですから」



「はい、聖女としてとても立派だと思います。ジンギ=セブンスターさんもランファ=イルミーゼさんも、ミーシャさんには感謝していると思いますよ」



「……お前ら身内に甘すぎじゃない?」



 アヤメちゃんは呆れているけれど、僕とルナちゃんの称賛にどこか嬉しそうにミーシャがしている。

 何だかんだ、この幼馴染も褒められるとそれなりに態度に出てくる。



「そういうえばあんたはアルマリアと戦ったんでしょ、どうだった?」



「強かったよ。ミーシャはもしあの子と戦うのなら気を付けた方が良いかもね、あれがどの程度まで吸えるのかわからないけれど、多分過去最大威力になるだろうし」



「ん――ああそうだ、あたしもAランク冒険者の試験を受けるのかしら?」



「明日ガイルがやるって言ってたよ。ちゃんと準備して、怪我とかないようにね」



「……ええ」



 あの間を信用したくはないんだよな。と、僕はため息を吐き、今夜の内に幾つか糸に聖女の信仰を流し込んでおいて、明日多く出る怪我人に備えることを決めた。



「それで、ジンギくんとランファちゃんは僕と会話してくれそう?」



「いつか倒すって言っていたわ」



「もっと穏便な説得方法なかったわけ?」



「ない」



 嫌われる一方だったのが、ちゃんと目の前に据えてくれるという状況になったことを喜ぶべきか、どうにも状況の変化が未だにわからない状況に僕は苦笑いを1つ。



 まあミーシャが大丈夫だと言っているのだ、僕はこの聖女様を信じて明日を待つことにしよう。



 血冠魔王との戦いが終わり、愛すべき日常へと戻ってきた僕たち。けれど戻ってきてもどうにも騒がしい日々を抜け出せそうにもない。

 僕としてはもう少し可愛さアピールしていきたかったけれど、商売の話と魔王としての力の話だったし、そもそも学園で動いていたのが、僕のことを嫌っている人たち。数日は可愛さを全面に押し出したあざとい感じではなく、誠実にやっていこうと決めた。



「可愛いリョカちゃんを見せていけば、嫌われなくて済めばいいのになぁ」



「あんたせっかくあたしが交渉したのに、ぶっ潰すようなことは止めなさいよ」



「はいはい、わかってるよ」



 ミーシャに釘を刺され、やはり大人しくしていようと、僕は食事を再開し肩を竦めるのだった。

ジークランス=ジブリッド


 リョカの父親で、ジブリッド商会を一代で大商会まで育てたやり手。ギフトは聖騎士だが、戦闘は得意ではなく、リョカとミーシャの戦いを見る度に驚きの声を上げてしまう。

 サンディリーデ国内では様々な場所に店舗を構えており、それ故に情報も耳に入るのが早く、リョカとミーシャの噂話には一喜一憂しているが、2人に事を本当に大事に思っており、出来れば目の届く場所にいてほしいと切に願っているが、すでに手の届く場所にはいないことを薄々察しており、斉唱を喜ぶ反面、昔のように面倒をかけてほしいとも思っている。

 最近起きた嫌だったことは、娘2人が異性にモテると知った時。もちろん見た目も器量も良いことは彼が世話をしたのが大半なために自信を持っているが、見ず知らずの有象無象に娘2人を渡すわけにはいかないと燃えている。



ヘリオス=ベントラー


 リョカたちの学園の教員で、受け持っている授業はスキル全般。ギフトはマルティエーターで、第2ギフトは不明。

 リョカたちを冒険者ギルドに送り出した張本人だが、まさか魔王討伐にかり出されているとは思わず、そのことを知った時、一時だけギルドに対して不信感を覚えたが、リョカたちやガイルたちの在り様を見て改めた。

 しかしやはり生徒のことは心配しており、今後の冒険者ギルドとの付き合い方についてアルマリアと相談中。

 最近起きた嫌なことは、貴族連中に魔王を自由にさせ過ぎではと文句が出てきたことである。その場は適当に突っぱねたが、そのことをジークランスに相談したところ、すぐに対応するとリョカの親だなと感じる笑顔で告げられ、その辺りのことはジブリッドとグリムガントに任せることを決めた。



ジンギ=セブンスター


 学園の魔王討伐部隊を組んだ生徒であり、魔王を恨んでいる。

 しかし最近ではミーシャの方が恐ろしく、魔王よりも聖女を警戒している。

 最近起きた嫌なことは、勇者であるセルネが魔王の話しかせずに腑抜けてしまったことだったが、何とか和解した。



ランファ=イルミーゼ


 魔王討伐部隊を組んだ生徒の1人。ジンギと同じく魔王を憎んでいる。

 イルミーゼ家は5年ほど前は大きな家柄だったが、今はある事情により貴族たちからもハブられているが、ソフィアの家であるカルタス家は未だに彼女たちを気に変えており、ソフィアは幼少の頃から彼女と交流がある。

 最近起きた嫌なことは、魔王であるリョカが老若男女問わず人気になっていること。

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