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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
7章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、世界の敵と対峙する。

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聖女ちゃん、明後日の方向に覚醒する。

「――」



 祈り方など正直わからない。我らが主に確かに祈っているけれど、一体それは何をどこに届けているのか、あたしにはわからない。

 ただ漠然と手を組み、信仰寄越せと想いを投げる。



 ルナにお祈りをする時、それはもうすんなりとあたしに力が入り込んだのがわかった。けれど今は違う。

 今朝祈りをささげた時もそうだったけれど、今あたしを見ている何かはどうにも力を惜しんでいる感じがする。



 正直それどころではないから、さっさと寄越してほしいのだけれど、いくら声を想いに変えてもそれが届いている気がしない。




 あたしはチラリとガイルとテッカ、アルマリアを見る。



「ガイル! さっさと雑魚を倒せ! あの爺さん、アルマリア1人では荷が重いぞ!」



「倒せっつてもな、ここは敵地であまり派手なことを今したくねぇんだが」



「そんなこと言っている場合か! アルマリアが数で押され始めている。俺たちが行かなければどうにもならないぞ」



 テッカの言う通り、あのゲンジとかいうジジイが次々と鍵師のスキルで召喚し、それをアルマリア1人に差し向け、物量で押し込もうとしていた。



「悲しいねぇ、いくら空間を飛び回るスキルを持っていようとも、こうも1人で立ち回らなければならない状況では、あんたの力も映えないだろう」



「余計な、お世話ですよぅ」



 アルマリアがどこから取り出したかわからない大槌で召喚された化け物をぶん殴っているけれど、どうにも頭が戦闘ではなく、ジジイのギフトを暴く方向にいっているためか、動きがぎこちない。



 あたしが彼女に暴けと言ったのが枷となっている。



 リョカだったらどうしただろうか。



「ミーシャ! おめぇはおめぇのやるべきことをやれ! 余計なことを考えるのは俺たちの仕事だ!」



「……ん、そうね。ただ今あたしについてるクソ獣、どうにも頭が固いみたいなのよ」



「神獣か。彼女は闘いを好む女神だ、お前についたという事実は納得のいくものだが、そもそもあれはズルや甘えを許さないと聞く。こんな時間の信仰回復を許してはくれないのではないか?」



「知ったこっちゃないわ。というか、勝手にあたしに付きまとって、役に立たないなら二度とあたしの力を勝手になんてさせないわよ。これならルナの方がマシよ」



 ルナという言葉にガイルとテッカが首を傾げているけれど、今説明してもしょうがないとあたしは大きく息を吸う。

 集中する。

 そもそもどこに届けるかわからないのだ、それならばあたしの想いが届く場所に、あたしをいさせればいい(・・・・・・・)

 深く、深く先行する。



 思考の奥底まで、あたしの信仰まであたしを潜らせていく。



 神獣といったかしら。

 つまりプリマと同じ獣のことのはず。



 どこにいる、どこにる――段々と苛立ってきたあたしは、生命力と魔王オーラをただ純粋に体に集める。



 そしてついに臭ってきた。

 鼻に突くケダモノの気配(におい)

 あたしはそれに瞬時に手を伸ばした。



『みぎゃっ!』



「見つけた。この耳引き千切るわ」



『ちょ、ちょっと待って! というかお前どこに現れて――』



「五月蠅い、死ね」



『俺も話聞かない女神だけれど、お前はそれ以上だな!』



 姿は見えない。けれど確かにあたしが届けるべき存在に手を伸ばせた。

 視界ではなく意識、信仰が届くのなら、あたしの意識だって届くはず。故に届けた。



『ま、待てって! というかお前、いざ対峙してみると本当に頭おかしいな!』



「言いたいことはそれだけかしら? 時間がないって言っているの、さっさとあたしに信仰を寄越しなさい」



 しかし、その気配から怒りの感情になったことを察することが出来た。



『いや、それはいかんだろう。いくら緊急事態といえ、神々が高が1人の人間を特別視するわけにはいかん。ルナは甘すぎる。よって俺はそれを受け入れられない――ぬあぁぁぁぁっ!』



 有無を言わさず、あたしはその気配にフォーチェンギフトをぶちかました。



「そう、なら消え去りなさい。あんたの力すべてあたしが貰ってやるわ」



『無茶苦茶すぎるだろうお前! というかなんだそのスキル、在り方が最早神々の手に負えない感じになっているぞ』



「五月蠅い」



『ま、待て待て待て待て、わかった、わかったから俺から力を持って行くのは止めろ! ったく、どうなってんのよお前は』



「信仰」



『いや、やはりそれはあげられん――』



 あたしはスッと腕に力を込める。



『話は最後まで聞きなさいよ! ったく、いいかミーシャ、お前は今、ルナの信仰ではなく、俺の信仰で聖女として成り立っている。で、俺の信仰の源は闘争心だ。闘争心が俺の信仰を形作り、信仰となった力を信者どもに与えている』



「その話の長さと、あたしがあんたから力すべて奪うの、どっちが早いかしら」



『本当に話を聞きやがらないわねお前は! つまりだ、そこにいる金色炎の勇者を凌ぐくらいの闘争心さえあれば、もしかしたらそれが信仰に変わる……かもしれない』



「殺すわ」



『待ってって! それが可能かもしれない術が第4スキルにあるのよ。だからお前はまず、それを習得すべき』



 要求を先送りにされている気がしなくもないけれど、第4スキルという響きに、あたしは揺らいでいる。



「続けなさい」



『お前偉そうだな、俺一応女神なんだけれど……まあいいわ。いいミーシャ、聖女の第4スキルは【神格を縛る聖女の檻(アルティニアチェイン)】。聖女の力を物や場所に付与するスキルだ』



「それが何の役に立つのよ」



『本来このスキルは、聖女がいなくても効果を発揮させる場所や物を作ることが出来るんだが、ある聖女は、このスキルで1つの教会を神へと変えた。まあつまりだ、このスキルは神以上に信仰を集めることが出来る可能性を持っているということだ』



 話がややこしくなってきた。

 こういう時、リョカがいると説明をしてくれるのだけれど、あたしの頭ではもはや何を言っているのかすら理解出来ない。

 え~っと、つまり第4スキルを使えば女神の源になっている力を信仰に変換することが出来るということかしら。



 あたしが頭を捻っていると、どこからか覚えのある匂い(かれんなけはい)がした。



『だ、駄目ですミーシャさん! アヤメはあなたを――』



『ルナは黙っていろ! 今は俺の管轄だ』



『アルティニアチェインにそんな力は……それにあのスキルはそもそも信仰で女神の神格を模倣して、疑似的な教会を作るのが主な力です。だから闘争心を信仰に変えるには、信仰になるほどの逸話と人々の大量の闘争心があってやっとなるもので――』



『だから黙ってろって!』



『もうわたくしが変わります!』



『お前は魔王とやることがあんだろうがよ!』



『でも――』



 段々と喧しくなってきたわね。

 でも大分わかってきた。

 ルナの言葉とあっちの獣の言葉を合わせると、つまり実現できるというわけね。



「ええわかったわ。第4スキルは闘争心で出来た教会を作ることが出来て、そこに大量の信仰があれば神を通さなくても闘争心を信仰に変えられるというわけね」



『ん?』



『んぅ~?』



 女神たちが首を傾げている気配がする。

 でもきっとその通りなのでしょう。あたしの言葉が足りないのはいつものことだから、あたし以外の誰かに理解される必要などない。



 ならば簡単だ、あたしはただ全力の闘争心で教会を作り、その教会を信仰の的にすれば良い。

 そうすることで教会は闘争心から信仰を得ることが出来る。



 あたしを祀る、あたしだけの教会を生成する。



 女神たちの声すら届かない深淵で、あたしはただ、爪と牙を研ぐのだった。

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