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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
7章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、世界の敵と対峙する。

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ギルドマスターと化石の英雄

「鍵師、ですか~」



 攻撃を躱されても顔色1つ変えないお爺さんに私は目をやる。

 というよりあのお爺さんには見覚えがあります、表舞台に出てこなくなってからそれなりに時が経ちましたけれど、まさかこんなところで腐っているとは思いませんでしたぁ。



「アルマリア、そっちは大丈夫か!」



「はい~、これでもギルド長なので~、例え目の前に化石の英雄がいようとも~何とかしてみせますよぅ」



「化石?」



 ミーシャさんが首を傾げた。

 こうやって見ると、まだあどけない少女ですねぇ。こんな子たちまで戦場にかり出さなければならないとは~、自分の不甲斐なさにちょっとやきもきしてしまいますぅ。



「あの爺さん、俺たちの3つほど前の強大な勇者を支えた者の1人だ。名は確か――」



「ゲンジ――ゲンジ=アキサメ。もう少しでそこのお嬢ちゃんの首をとることが出来たんじゃがの」



 老人『百魔夜行(ひゃくまやこう)の門番』こと、ゲンジ=アキサメがしゃがれた声で言い放った。

 彼の声に私は眉を顰めます。



「意識があんのか?」



「そんじゃそこいらのちり芥どもとわしを同列に語るか小僧」



「それならば、その違いという物をご教授願いたいものだな」



 テッカの挑発に、ゲンジが口角を吊り上げた。

 すると次の瞬間には、別の門を開けるためのスキルを彼が使用。



 一切の痕跡が見えず、リョカさんのように技でそれを成したわけではない何かが、すでにスキルを使用させた。



 ゲンジの背後には一つ目の怪物、しかし本来なら鍵師とは同時に召喚を行なえるギフトではないはずで、しかし目の前には――否、すでにミーシャさんに飛び掛かって行った手が鎌のようになっている小動物が召喚されていた。



「同時召喚だと!」



 ガイルさんの驚きはわかります。けれど今はミーシャさんを助けるのが先決です。

 けれどふと、彼女が一切の回避行動をしていないことに気が付く。



「まず1人」



 ゲンジのニヤケ顔に、私ははらわたが煮えくり返る感覚がする。

 しかし肝心のミーシャさんが目を閉じたまま、一切動かない。



「ミーシャさん――」



「遅いぞ爺さん。そんな速さで生きているから、無様に生き永らえるんだ」



 私がスキルを発動するよりも早く、テッカさんの短剣が小動物たちの首を落とした。



「悪いテッカ、反応が遅れた」



「いや良い。お前は周りの雑魚を落とせ、俺はミーシャを守る」



「了解。しっかしミーシャ、一切動かないのはどうかと思うぜ」



「あたしのこと守ってくれるんでしょう? それなら動く必要なんてないじゃない」



 本当に彼女には驚かされます。

 まだ成人を迎えたばかりの女の子が、この状況でここにいる誰よりも肝が据わっている。



 私は少し恥ずかしくなってしまいました。

 私は私に出来ることを――。



「グリッドジャンプ! もう容赦しないです! ミーシャさんはうちの時期主力なんですから~!」



 私はギルド長を名乗ってはいますけれど、リョカさんのように頭の良い戦い方は出来ません。どちらかというとガイルさんやミーシャさん寄りな戦闘体勢を取ります。



「『潜ませる絢爛な玩具(トイボックス)』行きますよ~」



 空間に手を突っ込み、中から大槌を取り出してそれをゲンジに向かって振り下ろす。



「ほ~、空を超える者。中々に厄介なギフトじゃのぅ。それならこんなのはどうじゃ――」



「嘘っ!」



 まただ。またなんの気配も動作もなく、新たな怪物を召喚した。

 その怪物は頭に角らしきものがある巨大な人型、この怪物が私の大槌を悠々と受け止めました。



「ホ、ホ、ホ。まだまだ若いのぅお嬢ちゃん」



 すでに3体の召喚が成功している。

 何かのスキルを使っているのは確かなのですが、それを察知することも出来ない。

 私はどうしたらこの状況を打破できるかを考えてみるのですが、まったく浮かばず、闇雲に攻撃を繰り返していく。



「苦戦しているな。ガイル、あっちに――」



「アルマリア、そっちじゃない」



「え?」



 そんな声を放ったミーシャさんが、イルミナグロウこと神だまを見当違いな方向に打ち込んだ。



 しかし、ミーシャさんの神だまに一番に反応したのはゲンジで、角の生えた怪物を差し向け、神だまを体で止めさせていた。



「……お嬢ちゃん、あんた見えているのかい?」



「いいえ、ただそっちが臭かっただけよ。目をつぶっているのに見るわけないでしょ」



「恐ろしいねぇ、恐ろしや恐ろしや。やはりあんたからやることにするよ」



 今の出来事で、ゲンジの視線が完全にミーシャさんに行ってしまった。彼は大量の手が鎌の小動物をまた突然召喚し、私を通り過ぎて彼女に向かっていった。



「アルマリア! あたしは勘でしか動けないわ! だからどうしてそこを狙ったのか説明も出来ないし、なんでジジイが怒ったのかもわからない! だからあんたが暴きなさい!」



「無茶振りですよぅ。でも、はい~わかりました~。格好良いギルド長を見せてあげますよぅ」



 これ以上の失態を、私のギルド員に見せることは出来ないです。

 私は深呼吸をすると、改めてゲンジを観察するのでした。

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