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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
48章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、幻は残響に現は懐郷に。

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魔王ちゃんとリックバックの冒険者ギルド

「……そう、明日にはここを出るのね」



「うん、目的は達したからね」



 ギンさんがマクルールさんに包帯をとってもらっている間、僕はレンゲちゃんたちに明日ベルギルマを発つことを伝えた。



「……」



「わかるわレンゲさん、グエングリッターからこの人たちが出る時、私ずっとくっ付いて離れられなかったもの」



「スピカは甘えん坊だしね」



「あたしは別に――」



「お姉ちゃんヨリさんにはくっつけるよね? いつもは人に頼ることなんてしないのに、ヨリさんは大人っぽいからかな」



「だそうだよ」



「……あなたは何か安心するのよ」



「わかりますわ、この魔王様受け止める範囲が広いせいかなんでも受け入れてくれると錯覚してしまうんですわよね」



「愛が深いって言って」



「嫌ですわ」



 そっけないランファちゃんに、僕はため息をつきながらジンギくんの背中を叩き、雷星の勇者を指差しながら「なっ?」と声を上げた。

 見て見ろよこの勇者、そっけない顔も可愛いだろ。の意である。



「俺に振るな。まっ、レンゲは甘えるよりも今は誰かを甘やかしていたほうが良いかもな」



「なんでさ、甘えられたほうが可愛いでしょ」



「サジ以外の誰かも気にしてた方が、少しは頭も冷えて自分の状態もわかるだろ」



「視野が狭くて悪かったわね」



 ジンギくんは喉を鳴らして笑うと、コークくんの頭に手を置いた。



「レンゲが甘えたそうにしていたらちゃんとお前が甘やかせよ。お前はこれから他人を引っ張っていかなくちゃならない。ただ馬鹿みたいに我儘通すだけからは卒業しろな」



「……うん、頑張る」



「だそうだレンゲ、ちったあ素直になれよ」



「――」



 レンゲちゃんが顔を真っ赤にしてジンギくんを睨みつけており、それを受けたヒーローがからからと笑い声を上げた。

 こいつ人のことばかり口に出すな。と、僕と同じ感想を持ったのか、ランファちゃんもジンギくんを訝しげに見ていた。



 そしてそんなジンギくんをバッシュくんも見ている。



「ジンギから学ぶことがたくさんありそうだな。コークたちはちょっと見てもらったんだろ? 俺もいれば良かったぜ」



「お前国を出る気があるんだろ? ならグエングリッターに行ってそこの喧嘩好きの爺さんに相手してもらうといいぞ」



「強いのか?」



「アホみたいに強い。俺はその人に憧れたから今こうして立ててんだ」



「バイツロンドさん、ジンギさんの成長を一番に喜んでいたよ」



「……わたくしはあのジジイの相手するの疲れましたわ」



 それぞれの反応を聞いていると、やっと包帯を取り終えたギンさんとマクルールさんが僕に意識を向けてきた。



「そうか、君たちはもう行ってしまうのか」



「僕たちにも故郷がありますから」



「俺の生涯を尽くしても返せそうにない恩を、今日一日だけで返そうとするのも無謀な話か」



「持っていてくださいよ、また遊びに来た時にでもちょくちょく返してもらいますから、ちゃんと元気でいるんですよ」



 ギンさんが頷いて笑い、そして冒険者たちに頭を撫でられているツキコに目をやった。



「ああ月神様(・・・)、そんな阿呆どもに頭を撫でられると、頭の悪さが移りますよ」



 その瞬間、ギルドの空気が凍った。

 この人ツキコについては話してなかったのか、どおりで随分と気安いなと感心していたのだけれど、マクルールさん含めたみんな知らなかったのか。



「……ヨリちゃん?」



「ええ、ルナちゃんです」



 僕が指を鳴らしてツキコの眩惑を解くと、冒険者たちが体を震わせ始めた。

 そしてこんな空気にしたギンさんはハッとした顔を浮かべ、忍び足でギルドから逃げ出そうとしているのを僕の目は捉えた。



「……ギンさん?」



「それじゃあヨリのお嬢ちゃん、明日は見送りに行く。それまでぜひベルギルマを楽しんでくれ。ではな――」



 颯爽と駆け出したギンさんの背を見て僕が微笑みを浮かべると、マクルールさんや冒険者たちがその背中を追いかけだした。

 随分と愉快なおじさんになったことで、彼はきっとこの先もああやって楽しんで生きていくだろう。



 僕は1人ポツンと残されたルナちゃんのそばに行き、彼女を抱き上げ、このギルドの未来を、明るい気前の良いギルドを、どうかどうかと繁栄を願わずにはいられないのだった。

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