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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
47章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、灰燼の地に刃を突き立てる。

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鋼鉄のライダーくんと神獣の精霊

「ん~……こっちの方だと思うんだがな」



 コークたちと別れた俺は『厳々神装(ヒーローモード)運命に傅く聖剣顕現(フェイズカリバーン)』を維持したまま、屋敷を進んでいるのだが、リョカの戦闘圧が収まり、やっと安心して進めるかと思っていた矢先、ミーシャとガイルさんの雪崩のような大量の圧、その後に喉を焼くほどの熱気とどこかで起きた大爆発、屋敷を燃やし始めている。



 それとさっきから発生している鋭い圧、これは――テッカさんだな。あの人も相当今回のことに関わっているらしい。

 リョカたちからちらと聞いたのだが、どうにもカナデの母親に惚れてしまったようで、彼女を助けるためにも動いているようだ。

 そんなテッカさんがこれだけの圧を発している。何かあったのだろう――いや、運命を支えた(・・・・・・)のだろう。



 誰かの運命を変えてしまうだけの覚悟。正直俺にはまだよくわからない。



 テッカさんもそうだが、コークもそうだ。彼らは運命を否定しながら、その誰かの運命を、幸福の運命を引き当てようとしている。



 彼らの先に何があるのか、それはまだわからない。だが、だが――きっと彼らの選択に、それこそ……誰かの言葉のように、歩む踵に福音を。



 俺はふっと息を漏らし、辺りを見渡す。

 今は早くプリマを見つけ出してやらないと俺は約束を守れない。



 けれどどこを探してもおらず、あの獣、この機に乗じて逃げ出したんじゃなかろうか。それだと捜すのがだいぶ手間だ。



 俺がため息を吐くと、どこからかキンキンと耳につくような声が聞こえてきた。



「いやぁぁっ! こっち来ないでってばぁ! カナデちゃーん! リョカ姉さまどこぉ!」



「見つけた。ん?」



 プリマの声が聞こえ、そちらに脚を進ませるのだが複数人に追われており、やはり逃げてきたのだろうと俺は安堵する。



 そしてある程度近づき拳に力を込め、左手を前に出し指の隙間から狙いを定めるように引っ込めて構えている右こぶしにさらに力を込める。



「『厳剛拳王(ヴィヴィットガン)――」



 俺の鎧がさらに形を変え、右手の拳に剣が添えられる。その剣はさらに輝きを放ち、プリマの周囲にいる敵勢反応に向かって意識を向ける。



撃ち抜け極光色の聖剣(エクス・カリバー)』」



 俺の拳に添えられていた剣は光に溶けていき、拳を放つと同時に幾つもの光線に変わり、それがプリマを追うシラヌイたち目掛けて放たれた。



「なになになになにっ!」



 驚くプリマに駆け寄るのだが、あの獣は未だに困惑しており俺は声をかけた。



「プリマ無事か!」



「その声、ジンギ――うわぁ! 変なのきたぁ!」



「変なのって言うな」



 俺はプリマを抱き上げるのだが、まだ俺だと疑っているのかその視線は懐疑的だ。

 しかしこんなところで変身を解くわけにもいかず、どうにか信じてもらおうと頭を捻りながら獣を撫でているのだが、当のプリマは一撫でしただけで体から力を抜いて安心しきったように俺の腕に体を預けてきた。

 チョロいにもほどがある。



「……お前もうちょっと警戒心持てな」



「ん~プリマ匂いでジンギってわかるもん」



「じゃあなんで最初驚いたんだよ」



「変なのだったから変なのって言っただけだもん」



「変じゃねえ、格好いいだろうが」



「そういう男の子趣味はプリマにはわからないもん。ニチアサはニチアサでもプリマはプリティーでキュアキュアしてる方が好みだし」



「何の話してんだお前?」



「ってそうか、ジンギそれってリョカ姉さまに聞いたでしょ? リョカ姉さま、アヤメ様と頭の中似通ってるからそっち勧めたんだろうなぁ」



「お、おう。とにかく、俺はカナデと約束してお前を助けに来たんだよ」



「カナデちゃんもいるのっ」



「ああ、俺の相棒と一緒にいるはずだ」



「そっかそっか」



 嬉しそうに俺の腕の中で体を揺らすプリマだったが、すぐに顔を伏せ、シュンとしてしまう。



「よかった。カナデちゃんね、なんだか知らないけれどみんなに忘れられて、それで突然現れたシラヌイの何とかって人に、何やらかんやらしてお母さんに会わせてあげるって」



「お前の説明なんでそうふわってしてんだ」



「お母さんもなんとかだから忘れられてないって。だから着いてきてくださいって。プリマは最初反対したんだよ、でも誰もカナデちゃんのこと覚えてなくて、それが相当堪えたみたいで――ってそうだ、ジンギもカナデちゃんのこと忘れちゃった?」



「忘れるわけねえだろ。あんな元気娘、忘れようと思っても忘れられないだろうが」



 プリマが尻尾を振り振りさせながら喉を鳴らした。主が忘れられていないことが嬉しかったのだろう。

 そういえばプリマ自身、カナデを忘れなかったのだろうか? 俺とリョカには効いていなかったようだが、その辺りに起因する何かがこの獣にもあるのだろうか。

 と、考えてみるが、俺で結論が出ることでもなし、後でリョカにでも聞いてみよう。

 そうやってプリマを撫でていると、この獣が突然顔を上げた。理由はわかっている。



「ジンギ――」



「――」



 迫るシラヌイの影――しかし俺はプリマを抱っこしたまま、そのまま体を分解し、奴らが俺たちがいた箇所に刃を振るうのを彼らの背後に転移して眺めた。



「わっわっ、ジンギなにそれぇ?」



「俺の新しい力だ。中々に頼もしいだろ?」



「うんっ」



 肩に飛び乗ってくるプリマに満足し、俺は飛び掛かってきたシラヌイ2人の頭を掴み、そのまま顔面同士を叩きつけた。



「それじゃあちとむさ苦しいかもだが――精霊のお嬢様、乗り心地はあまりよろしくはありませんが、目的地まではこの俺、ジンギ=セブンスターが案内いたします」



「えへへ、よくってよ。頼りにしていますわ」

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