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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
44章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、動き出す蜃の炎を見うる。
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聖女ちゃんと久々の大暴れ

「『雁字搦めの領域(アイビーインパルス)』」



 バッシュが辺り一帯に広げた重力だかの膜が大地を押し付けて砕き、駆けまわって鬱陶しい小型の魔物のいくつかを押しつぶした。



「なんでルピターがこんなに増殖してんだよ」



「小さくて鬱陶しいわね」



 ギルドから受けた依頼はそれなりに急を要する物だったらしいが、A級3人ということであたしたちが受けることになったルピターと呼ばれるずんぐりむっくりした一頭身のまん丸に手足が生えた気持ちの悪い魔物の討伐。



「しかもなんだこいつら、体が変化してんじゃないか」



「ドッペルゲンガー持ちのルピターね。ミーシャとガイルに任せてもいいんだけれど……」



 アヤメがあたしとガイルに目をやりながら心底いやそうにうな垂れた。

 一気に殴り倒したほうが良いと思うのだけれど、神獣の考えはそうではないらしい。



「この国穴だらけになっちまうよぅ」



「ガイル、ミーシャ、大人しくしていろ」



「そうは言うがテッカ、結構面倒な部類の魔物だぜ? どうすんだよ」



 ガイルの言う通り、それなりに手間のかかる魔物だ。小柄で素早いし、ドッペルゲンガーの能力で体中を武器に変えて攻撃してくるし、捉えたと思えば小さくなって躱されるしで面倒なことこの上ない。それにこの感じ、多分このルピターという魔物は――と、あたしが思考していると、バッシュが自分の手に目を落としていた。



「あんた何とかできそうね」



「ん、いや――」



「ああ、そういやぁお前はそこまでできたんだったわね。いいわやりなさい、こっちは俺が何とかしてあげるわよ」



「……いいんだな?」



「思い切りやっちゃいなさい」



 バッシュが数回の深呼吸をすると、リョカがスパナと呼んでいた不思議な形の武器を振り上げた。



「『三千大全重力気分ジオ・ド・グラビテンション』」



 バッシュがスキルを発動させたと同時に、あたしたちの周辺大規模の四隅を囲むように四角が形成され、体が重くなる感覚に、広範囲に重力をかけるスキルなのだと理解できた。

 この空間から離れようとガイルとテッカに目をやるのだけれど、アヤメが首を横に振る。



「『不干渉の獣の盟約(グリムバンラバーズ)』」



 あたしたちにアヤメから伸びた鎖が巻き付き、途端に重さを感じなくなった。



「いいスキル使うじゃねえかアヤメ」



「アヤメ様、すみません」



 あたしたちにもかかるはずだった重さはなくなり、周辺のルピターが地面に顔を押し付けていた。

 これは加護を無視する力かとアヤメに目をやるのだけれど、バッシュと同じように体をプルプル震わせており、無視するスキルではなく、無視させるスキルなのだと理解した。



「アヤメ、体震えているわよ」



「クッソ重い。いいからさっさと倒してきてよ」



 あたしとガイル、テッカで頷きあい、駆けだすと同時に大地に押しつぶされているルピターを捻り潰していく。

 そしてある程度数が減ると、ルピターたちが奇声を上げ、這いずりながら一か所に集まりだした。

 奴らは見る見るうちにドッペルゲンガーによって体を繋ぎ合わせ始め、バッシュの重力空間ギリギリ入るほど大きな人型の形になった。



 しかしこいつら、やはり魔物なのだろう。

 的がでかくなり、大地から遠ざかった(・・・・・・・・・)



「『臣下宣言(エクストラコード)速度即ち静止=怠惰(フォーミュラガンマ)』」



「『魔をも穿つ宿敵の福音(エクストラリミット)魔に委ね尚猛る陽(エクシードウリエ)』」



 テッカが意識を先行させて巨大になったルピターを細切れにすると、バラバラになった哀れな魔物に向かってガイルが拳を向けた。



「三重――」



 ガイルの聖剣から筒が飛び出してきて、1つ出てくるごとに聖剣が輝きを増した。

 話には聞いていたけれど、あいつもあいつで高火力なのよね。



 細切れにされても生きているルピターに向かってガイルが拳を放つと、ガチャンと機械的な音と骨が軋むような音が鳴り、爆炎が空を包んだ。



 あたしは一歩前に出ると、粉々の灰になったルピターの中に奴らの核となっているのか、蠢いている肉塊を見つけ、大きく息を吸って吐き出すと同時に口を開いた。



「147連――黒竜!」



 がおおっと吐き出した信仰は真っ黒な竜となって空に伸び、ルピターの核を消し飛ばしてもなお、空を割って高く高く伸びていった。



 大地に下りてきたテッカ、腕を回すガイル、そしてあたし――3人で一か所に集まり、ニッと勝気に笑う。



「――」



「――」



「――」



 3人で拳をぶつけあい、依頼達成と満足げに胸を張るのだった。

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