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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
41章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、ひな鳥に飛び方を教える。
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夜を被る魔王ちゃんと花と惑星の外で

「ん~……」



 私はこの間ルップクリンを追った際に来た草原で、山のほうを視線をやる。

 見知ったバカでかい殺気が今弾けて消えた。



 コークくんとレンゲちゃんを預けたのは失敗したかなと多少の後悔が生まれ、苦笑いを浮かべて薬巻の煙を宙で遊ばせる。



 するとツキコが苦笑いで近づいてきて、同じように山に目をやった。



「コークさん、よく意識を保っていられました」



「意識がぶっ飛ぶほどの圧を放つなって話なんだけれどね」



「あれは絶対に殴ろうとしていましたね。アヤメが止めていなければどうなっていたことやら」



 アヤメちゃんが人にやさしい女神さまで本当に良かった。

 しかしあの子が止めたってことはスキルかな。どんなギフトなのかよく知らないんだよね。



「アヤメはああいうスキルですか。なんだか改めてスキルを使うということが新鮮で、楽しいです」



「頑張って考えたかいがあったよ。それでアヤメちゃんのスキルっていうのは?」



「すべてのスキルはまだわからないですけれど、今使ったのは6つの戒律――条件下で発動する特殊な力を付与した鎖を操るようです」



「おっ、私好みの変わった仕様のスキルだ。喝才で使え……るわけないか。こればかりは神の領域(・・・・)だからねぇ」



「う~ん……そこはノーコメントで。ところで僕たちのギフトは信仰のイメージが(・・・・・)異なっている(・・・・・・)のですよね?」



「そうだと思うよ。人と違って才能からギフトを引き出すわけにもいかないからね。だから他世界のみんなのそれぞれが持つイメージをギフトに変えました。月神様はどこへ行っても月神様だし、神獣様は神獣様だ。でも人々からもたらされる偶像崇拝は違う」



 まだ月は出ていないけれど、私は空を見上げてこの世界の月と、私の知る月(・・・・・)を重ねて思いを馳せる。



「ツキコの癒しやら治癒なんかはかぶっているけれど、月がどこまでも追いかけてくる。隣には月が常にある。なんてこの世界ではありえないからね。月は不動だ」



「月が動くなんて面白いですよね。あんなに大きなもの、どうして動かしちゃったのかしら?」



「正確には月じゃなくて私たちが動いているんだけれどね。でも偶像崇拝なんて、化学よりも根拠よりも、そして真実よりもいい加減に出来ている。幼い頃にふと空を見上げれば、暗がりの中でも月がついてきてくれて、なんだか安心した記憶があるよ」



「僕、どこでだって癒せていましたか?」



「いつでも癒されてるよぉ~」



「きゃぁ」



 両手を握って顎に添えながら上目遣いで聞いてきたツキコに辛抱溜まらず、私は彼女を抱き上げてくるくると回る。



 そうやっていちゃついていると、どこからか苦しそうな、呆れたような、忌々し気な声が聞こえてきた。



「……お嬢さん方さぁ、そうやってキャッキャするのもいいけれど、少しは俺たちのほうを気にしてくれない?」



「おや、私の想定ではとっくにその大岩を宙に弾いているところなんだけれど」



「無茶言うなよ! 潰されないようにするのでいっぱいいっぱいなんだよ」



 そうぼやくボッシュくんの頭上には私が落とした大岩が浮かんでおり、彼と岩の間で『繋がり紡ぐ浮き魂(アークコア)』のエネルギー球がみょんみょん音を鳴らしていた。



「サジなんて見てみろ。お花に囲まれて、どの妖精さんがどの花から生まれたかの問いを延々とぶつけられて、間違える度に花を鼻に突っ込まれたりしてんだぞ。あんな友だちの姿見たくなかったわ!」



「みんなギフトの解像度が低いからね。身体能力やその他は個人が頑張るべきだけれど、こういう特訓はしたことないでしょう? しばらくはギフトの理解度を上げてもらうからそのつもりでね」



「これ……続けるんか」



「少なくともバッシュくんがその程度の大きさの岩を弾くこと、サジくんが妖精さんに花丸をもらえるまでは。ね」



「コークについていきゃあ良かったぜ」



「ハッハッハ」



 その先は地獄だぞ。



「まあ暫くは帰ってこないと思うから、のんびりやっていこうよ」



「え、帰ってこない――」



「さっ! もうちょっとしたらおやつとお茶を用意するから、頑張っていこ~」



「お~っ」



 首を傾げているバッシュくんを横目に、私とツキコは2人にたっぷりと可愛さを振りまいていくのだった。

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