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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
40章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、残り火の影を見る。
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夜を被る魔王ちゃんとインスタント叡智

「なあなあ嬢ちゃん、俺のは、俺のは一体何だ!」



「少しは自分で――」



「いやだってさ! 俺スキル使っているけれどこれが何なのか全くわからないんだよ。コークは風だろ? レンゲは瞬間強化、サジは妖精、俺のスキルって……」



「あ~……」



 私はバッシュくんの顔を見て考え込む。

 確かによくよく考えればわからなくて当然か。私には違和感ないけれど、この世界(・・・・)ではそんな事象も――と、ここまで考えて違和感に気が付く。

 私はそっとツキコに耳打ちをする。



「あの、この世界の重力と引力ってどうなっていますか? 多分テッドちゃんの管轄ですよね?」



「え~っと……それそのものが加護ですね」



「なるほど」



 となると説明が難しい。

 重力なんて世界が回っていない限り存在を証明することは出来ないし、この世界が球体でない以上、世界が中心に引っ張る力なんて説明できない。




 バッシュくんのギフト『大地を踏み惹かれる者(ジオ・ド・アース)』なんてまさにお手軽サイズながらその惑星を作り出すギフトだ。

 球体を核にすることで引力と重力を発生させるギフトだ。

 だからなのか、バッシュくんはその力をまったくと言っていいほど使いきれていない。



 彼の第1スキルの『繋がり紡ぐ浮き魂(アークコア)』あれはああして拳にして敵に落とす力ではない。



 球体から発生する引力によって戦うスキルなのだけれど、バッシュくんはこのスキルを周りから物体を集めて形にするという認識しか持っておらず、スキルもまたその認識として発動してしまっているから、引き寄せる力も制限されてしまっている。



 ()であるのなら目の前で使ってみて説明できるのだけれど、今はヨリフォース。目の前で使ってあげることも出来ない。



「なあなあヨリのお嬢ちゃ~ん」



「う~む……」



「――ふむ」



 するとツキコが私とバッシュくんの手を握った。

 何だろうと彼女に目をやると、どこか女神らしい顔で微笑んだ。



「月とは世界を見守る者、月とは人を愛す者、月は常に人の傍に――『我こそ月に乞う(ヘカテリアスコール)』」



「え――?」



 突然のことだった。

 ツキコの隣に突如としてティーカップを手に持って座っている眼鏡をかけた黒髪長髪の美少女が召喚された。



「え、誰?」



「テルネちゃ――ッ」



「え、これは、リョカ――ではなく、ヨリさんとルナ……ツキコ――」



「僕たち今ちょっと困っています。はい、どうぞ」



「なにがどうぞですか! ああもう、あなた本当にやりたい放題しますね。ちょっと待っていてください」



 黒髪の美少女が本を開いてぶつくさ呟くと、私とバッシュくんに手を向けた。



「知識とはそれ即ち宝、知識とはすべての根源に繋がる唯一無二――『根源を知識で騙る者(スイッチメントオグマ)』」



「ねえ誰なのぉ――」



 バッシュくんの手から光が発生して、それが私の手に移ってきた。

 これは――。



「はい、ありがとうございました」



「ちょ、ちょっと押し出さないでください! あなた帰ってきたら甘いもののお土産を――」



 ツキコにぐいぐい押されて、そのまま美少女が消えていった。

 本当に申し訳ない。



 帰ったらテルネちゃんにうんと甘いお菓子を作ってあげよう。



 しかし彼女のギフトはそう言う感じか。

 これは助かる。私はバッシュくんに目をやり、勝気な顔を浮かべた。



「さあ、バッシュくんのスキルの神髄を見せてあげよう」



「え、いやその前に説明――」



 テルネちゃんの使ったスキル、これは素質(・・)に左右されない。魔王の喝才のように素質で引き出されるスキルではない。



 私は手のひらに大地の球体(・・・・・)を作り出す。



「『繋がり紡ぐ浮き魂(アークコア)』」



「説明責任を果たせよぅ!」



 コークくんとレンゲちゃん、サジくんは少し離れたところでプラットラットから苔を剥がしており、それぞれが遠目で見てわかるほど楽しそうにしており、こちらの一切に気が付いていない様子だ。



 私はその球体を手に持ったまま、バッシュくんに向かって指を上下させる。



「だからぁ! ああもう知らねぇ! 畜生このモヤモヤ全部発散させてやるからな!」



「さっさとかかってきな、ヨリ先生の素敵な素敵なスキル講習だよ」



「もうどーにでもなれってんだぁ!」



 そうして私たちは人の視界から避けるようにして森の中に突撃して、あちこちで爆音響かせて大地の地形を所々変えていくのだった。

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