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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
5章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、休日に街をぶらりする。

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魔王ちゃんとのんびりガールズトーク

「ふぃ~、歌った躍った。満足満足」



「お疲れ。みんな見入っていたわよ」



「ありがとう、ミーシャもすっごく見てくれてたよね」



 ライブを終わらせ、街の人々との交流も終え、じっと待ってくれていたミーシャと合流する。



「今日はミーシャと過ごすつもりだったのにごめんね」



「良いわよ別に、あたしも十分に楽しめたし」



 2人っきりになれずに膨れているかもと想像していたけれど、そんなことは一切なく、ライブを楽しんでくれていたようだ。

 僕は嬉しくなり、彼女と腕を組む。



「それに、あんたはあたし1人が独り占め出来るような子じゃないのを再認識したわ」



 そう言ってミーシャが顎でどこかを指したのだけれど、その先にはカナデとセルネくん、ソフィアとオタクたちがいた。



 さっきまではあれだけ2人きりに固執していたのに、ミーシャがみんなの傍に歩いて行こうとするから、僕は少し寂しくなり、彼女を傍に引き寄せる。



「こうしてミーシャに甘えられる時間も僕は大切なんだけどなぁ」



「はいはい、あたしはいつだって空いてるからまたいつでも誘いなさい。独り占めはしないけれど、隣を譲る気はないわよ」



 僕は小さく声を漏らして笑い、ミーシャに引っ張られながらカナデたちと合流する。



「リョカリョカ、なんですの今のは! すっごく可愛かったですわ!」



「はい、吟遊詩人の唄う歌とは違ってこう、なんだか力が湧いてくるような歌でした。リョカさん、本当にすごかったです」



「ありがとうカナデ、ソフィア、楽しんでもらえたのなら良かったよ。みんなは依頼帰りかな? お疲れ様」



 口を開けば褒め言葉を言ってくれるカナデとソフィアに照れていると、男性陣が、というより特にセルネくんが呆然とした顔で僕を見つめており、首を傾げて見つめ返す。



「セルネ様、本当にリョカさんに夢中ですよね」



「歌っている最中も瞬き1つせずにリョカのことを見ていましたものね」



「あら嬉しい」



 僕はセルネくんに近づき、顔を正面でまじまじと見つめる。

 するとハッとなったセルネくんが顔を赤らめて飛び退いてしまい、そのあまりにもあからさまな思春期ムーブが面白く、僕は口を手で覆って笑ってしまう。



「……い、いえその、とても、その、良かったので、ええ、見惚れていました」



「ありがとう。でもこの場で僕をわかりやすく褒めると、大変なことになるんじゃない?」



「え――」



 首を傾げたセルネくんの両サイドをオルタくんとタクトくんが埋め、腕をがっちりホールドし、クレインくんが背中を押す。



「流石セルネ殿、セルネ殿はどことなく我らと同じような気配がしていたでござるよ」



「我ら3人でオタクだが、セルネ殿も入りオタクセとなるか」



「うんうん、でもその近さは駄目だよね。リョカ様のことは陰ながら守っていこうね」



「え、あいや、俺は別に……いや待て、どこへ連れて行くんだ」



 オタク3連星改め、オタクセ4連星が挨拶もそこそこに、街の中へと消えて行った。



「仲良くて何より。セルネくんは本当に取っつきやすくなったよね。可愛くてからかいがいがあるし」



「そうですね、最近では率先して街に出て人助けもしていますし、学園では魔王に被害を受けた生徒たちに進んで話を聞いて、どうすればいいのかを考えていますし、きっと良い勇者様になっているんだと思います。まあ、少しリョカさん贔屓が強くて不信感を持たれていますけれど」



「あ~、そのあたりは僕が動いちゃうと逆効果だから、なんとかセルネくんに頑張ってほしいなぁ」



「そんなのセルネは悪くないでしょ、割り切れない奴が悪いのよ」



「みんなミーシャみたくさっぱり生きられるわけじゃないんだよ。そもそもの話、魔王に不信感は抱くべきなんだよ。そうじゃないと、本当に魔王が攻めてきた時、僕たちは何も出来なくなっちゃう。魔王・リョカ=ジブリッドだから特別。は通用しない。僕と交流したければすればいいし、したくないのならしないでも良いんじゃないかな」



「そういうもの?」



「そういうものだよ。だからみんなも無理強いはしないようにね」



「でもリョカって、教会の言う主とも交流があるんですわよね? セルネがヘリオス先生に話していて、先生が頭を抱えていましたわ」



「カナデちゃん、あれは主とかじゃなくてプリマたちの敵だよぅ。いつだって信仰の奪い合いをしているんだから。最近では神獣様とある人間の信仰の主導権を奪い合っているって聞いたよぅ」



「信仰の主導権ってなんですの?」



「わかんない。けれど、神獣様がえらく気に入った人間がいるらしくて、次のギフトでどっちが主導になるのか競っているってみんな話していたよぅ」



 僕はチラリとミーシャを覗くのだけれど、幼馴染は呑気な顔で欠伸をしていた。



「……今の話、私も聞いてよかったんですか? とんでもないことのような気がするんですが」



「ソフィアにも今度紹介してあげるね。とっても可愛いし、すぐに仲良くなれると思うよ」



「確かにソフィアとはすぐに仲良くなりそうな気がするわ。ルナってあれで加虐性質だし」



 自身の主に対してその評価はどうなのだろうか。ミーシャの邪見は十戒に引っかからないかとひやひやするけれど、ルナちゃんがこんなことで怒ることもないだろう。



 どういう意味かをミーシャに問いただしているソフィアを横目に、僕は大きく伸びをする。



「そうだ、2人とプリマ、せっかくだし今日は家に泊まりに来なよ。あの様子じゃ男の子たちは帰って来なさそうだしさ」



「え、いいんですの?」



「うん、多分明日はオタクたちの冒険者登録証の試験の面倒を見ないとだし、休暇は続行だよ」



「あたしが特別試験官よ。舐めたことをしたらぶん殴るわ」



「もう少し穏便にいきましょうよ」



 苦笑いのソフィアに僕は同意し、今日の夕食をみんなで相談しながら帰路へと着くのだった。

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