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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
39章 ?おうちゃんと聖女ちゃん、金色を追って邂逅する。

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?おうちゃんと翻弄される炎2

「どういうことだ?」



「この子言っていたじゃない、確定された未確定の未来って。だからその未来を確かなもの(・・・・・)にしなければ良い」



「……ああそういうことですか。彼女のスキルが発動しないと言うことは未来が確定していないと言うこと。発動したのなら確定された未来に行動できる」



「つまり、その『未確定不可逆性未来(ジャックザドリーマー)』とやらで設置された攻撃箇所に、再度攻撃が出来ないに状況に押し込んでしまえばスキルは発動しないってわけね。厄介な相手よまったく、どんな思考回路持っているのよ」



 みんな揃って私のスキルを丸裸にしよって。本当に厄介な聖女様だ。



「あんた、本気を出せないんでしょ。いいえ、全力なのはわかる、でも思考と戦術に頭を回さなければ戦えない。だからある程度余裕を持たせる。そんな戦い方をするような奴を1人知っているけれど――あたしにそういうのは効かないわよ」



「そうかもね。でも人間いつどこで脚が掬われるかわかったもんじゃない、それが今日かもしれないよ『ツキにお任せ運試しラビットラックエンゲージ』」



「だから――」



 本当に初歩的な運命操作。個の持つ幸運値によって様々なことを起こすスキルであり、それは転んだり瞬間的な強化であったり、本当に些細なことだけれど、一瞬の判断が命取りになる戦闘時に置いてその些細なこと、というのは重要だったりする。

 だからこそ、いかにこのケダモノと龍を纏う聖女だろうともその隙をつくことが出来れば――なんて考えていたのも刹那の間だけ。

 忘れていたのかヨリフォース。この聖女、ケダモノのミーシャ=グリムガントはその運命すらごり押しで捻じ曲げる。



「効かないって言ったでしょうが!」



 彼女の脚が戦闘によって緩くなった箇所にたまたまつけられた。本来なら転ぶでも体勢を崩してくれればいい物の、ミーシャは足を踏み抜いて無理矢理大地をぶち抜き、地に足をつけてその体内から戦闘圧を爆発させた。

 まるで滝のように流れ込んでくる圧に私は顔を引きつらせるけれど、これだけでもうわかってしまう。

 彼女の前に運気なんて関係ない。

 幸運も不運もすべて殴り飛ばして、自分の力だけで道を歩いている。



「やっぱ本気にさせないと駄目ね。戦いのことだけじゃないわね、あたしたちについている余計なもの、それとあっちの子たちね」



 さっきからミーシャたちを観察するように見ている視線、彼女も当然そのことに気が付いている。都合がいい(・・・・・)と言ったらその通りだけれど、今は少し邪魔だ。



「余裕、なくさせてあげるわよ。201連竜砲――」



「は? ちょ――」



 私はすぐに離したところでテッカと戦っているレンゲちゃんとコークくん、それと機会をうかがっているバッシュくんとサジくんに意識をやった。

 マズい、まずいまずい。



「『大龍園(ドラゴニックエデン)』」



 大きく息を吸った聖女の口から天空へと紋章が伸びていく。今まで見たこともないほどの信仰が天を穿っている。



 大地は彼女を中心に巻き上げられ、木々はへし折られ、山すらも恐れるように震えている。



 彼女の攻撃を止めさせるか? 否、無理。

 受け止め……られるわけがない。



 私は飛び出した。

 今私だけが生き残るのは簡単だ。でもこの場所にはひよっこの戦闘員4人と非戦闘員が2人いる。



「金色炎! そっちの2人よろしく!」



「は――?」



 私が動き出すと同時に、がおおおおおっと特大の咆哮があげられ、信仰の塊は1体の国を見下ろすほど大きな龍へなったかと思うと、すぐに分裂して1000をも超える信仰で出来た龍の波。

 それが天から災いを引き起こすように地上へと降り注ぐ。



 私はイノセントリップリッパーの闇歩行で瞬時にレンゲちゃんたちの下に移動する。



「……冗談だろ」



「あれが1人の人間が起こした技なのかよ」



「お姉ちゃん逃げるよ!」



「……くっでもまだ」



「クソあほミーシャ、この国を亡ぼす気か」



 私はレンゲちゃんとコークくんの手をとると、対峙していたテッカ=キサラギに口を開く。



「そっちは自分で何とかして! レンゲちゃん、今はちょっと私に守られてね!」



「うん……」



 レンゲちゃんとコークくんをバッシュくんたちの下に集めると、私は大きく息を吸う。



「ヨリ、あれ何とかできるのか?」



「出来なきゃ死ぬ」



 私は辺りに意識を奔らせると、大地を奔る龍の衝撃と岩やらによって彼女たちを探っていたシラヌイ(・・・・)たちが次々とぶっ飛んでいっているのがわかった。



 もう見ているものはいない。

 ならば私もここで存分に戦える。



「さあ運試しの時間だ。生きるも死ぬもコインの裏表に任せよう」



「いやいやお嬢ちゃん、あんた何言って――」



「幸運不運もひっくるめてオールイン(・・・・・)ってか? 手札くらい確認させてくれってのに、本当に強引な聖女様だよまったく!」



 私はコインを宙へと弾く。

 この一投は私たちの明日を決めるものだ。

 眼前に迫る圧倒的質量の龍の信仰。あんなもの直撃したら塵すらも残らない。



 だからこそ私はそんな運命を否定する。コインが表を示した時、私は明日を切り開く。



「『福音と飛び立つ青い鳥ラビルビルットチルチル』」



 落ちてきたコインを空いた手で手の甲に叩きつけ、そっと手をどかすと同時に、()はべっと舌を出すのだった。

 

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