?おうちゃんと警戒アラートイエロー
「マジか。じゃあバンバンスキル使ってこ。そんなことも知ってれば第2ギフトも使えるか」
「まあね。でも限度はあるからね、身の丈に合っていない使い方はしないように」
「ほいほい、というかその運命を扱うのが第2ギフトなんだろ? それじゃあ第1は?」
「う~ん……ヒミツ」
探索してくれていたコークくんとサジくんが戻ってくると、先ほどした話をレンゲちゃんとバッシュくんが興奮気味に2人に話していた。
ギフトについての見解を得た2人が感心したようにその場でスキルを使ったのち、私にそんなことを聞いてくるものだから、何となく秘密にしておこうとウインクをして答えると、レンゲちゃんが何か言いたげにしていた。
「どっちの方が強い?」
「両方それなりに強力だよ」
「……全然本気出してないってことはよくわかった。Aランク冒険者なんてすぐだろ、羨ましいなぁ」
「それなりに全力は尽くしているけれどね。それよりもコークくん、君はAランク冒険者になりたいの?」
「そりゃあ冒険者やっていればAランクは目指すべきだろ」
「あらコーク、あんたいつ目標変えたのよ」
「んぐっ」
「Aランクっつうか、まずはBランクになってギンさんとパーティー組みたいんだろ?」
「ぐぬぬ……」
「ありゃ、コークくんはギンさんを目標にしているんだ」
「駄目かよぅ?」
「ううん、目標を持つことは良いことだよ。どういう道をたどるにしても、果てが見えなければ人は進むのをやめてしまう。果ても見えず、歩いてんだか止まってんだかわからない人もいる昨今、君は果てに向かって歩けているだけ立派だよ」
「……ヨリは、目標とかあんのか?」
「う~ん、ぼく……私? 私はねぇ、果ての果てで、可愛いに囲まれて、私自身も可愛くいられたら文句はないかな」
「どういうこっちゃ?」
私はクスクスと声を漏らし、妖精を回収しているサジくんに目をやる。
「どうサジくん、見つかりそう?」
「う~ん、やっぱこっちの草原はルップクリンより強い魔物ばかりみたい。だからここを通ったんだろうけれど……」
「先の麓まで逃げちゃったか」
多分、住処はその辺りなんだろうな。
さっき見かけたルップクリンも麓の方に全力疾走していたし、そうじゃないかと思っていたけれど、ここから見ても鬱蒼としているんだよなぁ。
草原の向こうにはいくつか連なっている山があり、その山からは少しばかり強い気配を覚えた。
「あっちは行っても大丈夫?」
「う~ん、どうするコーク、麓までなら俺たちでもなんとかなりそうだけれど、奥まで行くとちょっとまずいよな?」
「それと魔物の気まぐれにも注意だな。う~んどうすっかなぁ」
コークくんが私とレンゲちゃんに視線を向けてきたから、笑顔で首を傾げて返す。
「頼りっぱなしなのも情けないしなぁ。う~む」
力むように頭を捻っているコークくんの姿が可笑しく、私はつい笑ってしまい、手を叩いて視線を集める。
「大丈夫だと思うよ。縄張りさえ気を付けていれば多分襲ってこないよ」
「その心は?」
「力のある魔物って言うのは総じて頭も良い。縄張りに無遠慮に入り込んできたならともかく、別の縄張りにいる強敵を襲うことはないよ」
私は自分自身を指差した。
「……なるほど。それなら俺たちはなわばりにさえ気を遣えば良さそうだな」
「まあこう言った手前、何か出てきたのなら何とかするよ」
「うん任せた。それじゃあみんな、今回こそは金糖果を手に入れて帰るぞ!」
みんなの元気なオーという声を聞き、私は遠足の風景を思い出していた。行ったことないけど。
私は先を歩くみんなについて行こうと脚を進める――。
「――?」
のだけれど、ふと妙な感覚に振り返る。
なんだ、何故だか一瞬だけ体が重く感じた。それどころか、その一歩を踏み出すことをひどく嫌がっているというか。
「ヨリ?」
「ああうん、行くよ」
レンゲちゃんの呼ぶ声に私は笑顔で返し、頭を振って重さを振り切って足を踏み出すのだった。