??うちゃんとパーティーの役割
「……あんた、おかしいでしょ」
「ほらサジくん、お姉さんのことを姉者って呼んでみてごらん」
「ひぃん、なんでこの人こんなに絡んでくるの~」
敷物に腰を下ろし、私は大きく伸びをした後、紙に広げておいたクッキーに手を伸ばす。
サジくんがそのクッキーに手を伸ばそうとするけれど、レンゲさんに止められてしまい、誰も私と席をご一緒してくれない。辛い。
「まあまあ、とりあえずおやつにしようよ」
「そうだな。レンゲ、ヨリは今俺たちの仲間だ。聞きたいことがあるのなら真っ向から聞けばいい」
コークくんが私の正面に腰を下ろすと、それに続くようにみんなも敷物に座り、私が用意したお茶を口に運んだ。
空気を悪くするつもりはなかったんだけれど、少し驚かせてしまったか。
「お前絶対Fランクじゃないだろ」
「だからランク上げてっていつも頼んでいるでしょ。それなりの実力は持っているんだよ」
「それなりってあんた――」
バッシュくんが哀れにも胴と首がわかれている屍に目をやっていた。
まあ本当はここまであからさまに倒す必要もなかったんだけれど、少し気になることがあり、レンゲさんに目をやった。
「……どうかした?」
「さてレンゲさん、本当ならこのままみんなの戦い方を見て、私がどんな役割を担えばいいのかを思案しても良かったんだけれどね、ちょっとそうも言っていられないかも」
「どういうこと?」
私は改めてアンバイルキッドの屍に目線を投げる。
するとレンゲさんも私の視線を追ってくれたのだけれど、彼女はハッとなり、考え込むように顔を伏せた。
「出来れば俺たちにも共有してくれると助かるんだけれどな」
「ちょっと待ってて……こいつら、最初の奴らを囮にした? でも賢いと言ってもそれほどの知能は、いやでも」
「駄目だぜ大将、レンゲの奴、思考の底の潜っちまった。ヨリのお嬢さん、説明を頼めるかい?」
「ちょっと待ってね――まずアンバイルキッドの特徴なんだけれど、みんなは答えられる?」
「えっとぉ、ヒト型の小柄な魔物ではあるけれど、熟練の狩人のような戦い方をする。だったかなぁ。前にお姉ちゃんが言ってた」
「そうだね。それじゃあバッシュくん、その狩人のような戦い方をするにあたって絶対に守らなきゃいけない条件ってなんだと思う?」
「なにってそりゃあ、獲物を捕まえることだぜ」
「いや違うよバッシュ、大前提として狩りをするのなら味方に犠牲は出しちゃ駄目だ。そもそも狩りをするのならそれなりに決まった連携をとらなくちゃならないし」
「は? でも大将、こいつらは――」
「そう、明らかにらしくない戦い方をしてる。魔物の心情なんてわからないけれど、少なくともこいつらを狩ってきたあたしたちには違和感を覚えるわ」
「……つまり」
「さてパーティーリーダー、ここが踏ん張りどころだ。このまま進むのであればよく思考し、戻って応援を呼ぶのならお片づけを始めたい」
コークくんが考え込む素振りを見せ、ちょいとレンゲさんと視線を交えた。
「普段通りだったのなら引いた方がいいと提案していたわ」
「今は?」
「その子の動き次第」
レンゲさんが私に体を向けてきたから、笑顔で手を振り返した。
パーティーの動かし方をよく理解している。仲間であるのならどのような動きであれ信頼を置く。そうでなければ何も出来やしない。
「ヨリ、お前は何が出来る?」
「やってほしいことを言ってごらんよ」
「……レンゲ、ヨリ、偵察頼んで良いか?」
「いいわよ、あたしもちょっとこの子に聞きたいこともあるし」
「お手柔らかにね」
肩を竦めるレンゲさんに私は手を差し出し、2人揃って林道を偵察へ向かうのだった。