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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
37章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、暫し後の一服。
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魔王ちゃんと夜と運命との画策

「うん、こんな感じかな」



「いやぁ助かっちゃいますよ。嬉しい悲鳴ですが、僕も大分有名になっていますので」



「そうでしょうね。でもだからってそれをウチに頼む?」



「いやいや、世界に解ける夜だからこそ価値がある。相手は何と言ってもあのシラヌイですから」



 様々な調整を終えた僕は、協力してくれたアリシアちゃんとヴィヴィラ様にお茶を淹れ、彼女たちにねぎらいの言葉をかけた。



「ヴィヴィラまで乗っちゃってさ」



『面白そうだったからね。それにアリシアはともかく、あたしは割と死活問題だったし、丁度良い提案だったよ』



「ああ、あなた信者いない(・・・・・)ものね。ジンギくんにあげればいいのに」



『調子乗るからヤダ』



 ヴィヴィラ様の言葉に、ジンギくんが首を傾げていた。



「一体何の話をしてんだお前らは? というかリョカ、さっきのって」



「う~んと、ちょっと世界を誑かす(・・・・・・)ためにね。ちなみにこの子たちはフィムちゃんと同じで女神様に顔が利くから協力してもらったんだよ」



「……」



 するとジンギくんがアリシアちゃんに近づき、肩のヴィヴィラ様の気配に……いい加減視えない気配に気をやるのも面倒だな。

 僕はちょっとに考え込み、さっきアリシアちゃんにやったように眩惑の魔王オーラを彼女に使う。



 ただ彼女の場合、現在体を持っていないために、どうしてもその形だけ(・・・)を持ってくることになってしまう。



 つまり――。



「わっと」



「急ごしらえで申し訳ないですけれど、仮の体……幽体ですけれど、それで我慢してくださいね」



「……あたしの体。いやうん、助かる」



 助かる? 僕が首を傾げていると、アリシアちゃんが首を横に振った。まだ聞くのは早いと言うことなのだろう。僕は口を閉じ、ヴィヴィラ様の幽体――エレノーラたちのように触れることは出来ないけれど、およそこの世界での体を模倣することが出来た。



 黒の髪に、前髪で片目が隠れており目はタレ目、衣装は黒のゴシックアンドロリータ、全体的にどこか病弱な見た目の美少女。



 そんなヴィヴィラ様がふわふわと浮いて、ジンギくんの肩に腕と顎を乗せた。乗せた? 触れられないよな? 僕は彼女を触ろうとするけれど、やはり通り過ぎてしまうのだけれど、ジンギくんはその頭を撫でていた。



「ジンギくんゴーストバスターの素質でもあるん?」



「何の話だ?」



「ヴィヴィラが触れられるようにしているだけだよ。相当撫でてもらいたいみたいだね」



「うんなわけない。ちょっと黙っていなよ」



 ぷいとそっぽを向く彼女に僕が涙を流していると、ジンギくんがアリシアちゃんを撫でた。



「まあよくわからないけれど、あんまり女神様に面倒かけるなよ? 俺やリョカの我が儘で、アリシアとヴィが叱られるかもしれないだろ」



「あれもしかして僕怒られてる?」



「当たり前だろ。女神様はきっと忙しいんだから、必要とはいえこの子たちにあんまり頼るなよな」



 アリシアちゃんとヴィヴィラ様が顔を逸らしている。絶賛忙しくない女神さまたちだからか、ジンギくんの言葉がよく刺さるらしい。



「フィムが言ってたんだがよ、ルナとかアヤメ、自分を含めた女神様の信徒は女神様に愛されて寵愛を受ける特別な子どもたちだからたくさん甘やかすべきだってな。つまり、周りの行動次第で、この子たちが特別じゃなくなるかもしれないだろう。アリシアもヴィもせっかくこんなにいい子なのに、周りの俺たちが甘えちゃ駄目だろ」



「や、止めろよぅ、そんな育児の愚痴にマジレスするみたいな言葉、心が痛いんだよぅ」



「フィム……」



「……ちょっとあの子に説教してくる。いくらなんでも甘えすぎ」



 まあフィムちゃんの甘えたがりは今に始まったことではないけれど、本当に甘えるのが上手というか、義務感に駆られるんだよね。

 そんなことを考えていると、アリシアちゃんが大きく伸びをしてフェルミナ様に目をやった。



「それじゃあそろそろ行こうかな」



「外まで送ろうか?」



「いい。テルネとか出てきたら面倒だし、このままグエングリッターにでも行く」



「リア・ファルいります?」



「……リョカちゃんさ、ウチが何目的にしているか覚えている?」



「僕と友だちになりたいんですよね!」



「違う……リョカちゃんとミーシャちゃんは別口。2人を狙うのは、うちの勝手で――」



「ほ~、つまりフェルミナはまったくの想定外(・・・)ってことか?」



「――っ」



「ありゃアヤメちゃん、お昼寝はもう良いの?」



 アリシアちゃんの背中に抱き着いた神獣様が、逃げようとする夜神様の頬を摘まんでいた。



「ったく、起きたらお前の匂いがするし、一瞬リョカの匂いが途切れるしで、急いで来てやったわよ」



「……余計なお世話」



「まあそう言うなよ。これでもお前のこと気にしているのよ」



 膨れるアリシアちゃんだったけれど、もう1つ見知った気配を覚え、僕はさらにいくつかのティーカップを取り出す。



「アリシア、いるわね」



「やっほアリシア、ちゃんとご飯食べてる?」



「アリシアこの間振りですよ。アリシアもヒナに会いたかったですか? 知ってたです!」



「……」



「もうちょっとだけお茶していこうね」



 呆れたように息を吐いたアリシアちゃんだったけれど、さすがにこの面子ではどうにも出来ないと諦めたのか、改めて椅子に腰を落とすのだった。

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