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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
37章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、暫し後の一服。
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月の女神ちゃんと二次創作な聖女ちゃん

「大丈夫ですかミーシャさん」



「……ん」



 プリムティスの中心にある噴水の公園でミーシャさんを座らせ、わたくしは近くで買ってきた果物の飲み物を彼女に手渡す。



「ありがとう――ルナ、あたし変だった?」



 カップを呷り、息を吐いたミーシャさんがそんなことを聞いてきた。

 変。といえば変ではあったけれど、些細というよりは気にならない感じだった。

 ルーファの持つ神格は愛護心、そして何者にも屈することなく、自らを犠牲にしてでも最前線で盾を構える自己犠牲――あら? 普段のミーシャさんとあまり変わらないのではないだろうか?



「えっと、変というより、こういう時リョカさんなら……二次創作?」



「ごめん、あたしにもわかる言葉で話して」



 そう言いながらミーシャさんがわたくしの頭を撫でてくれる。

 こういうところだ、確かに彼女もリョカさんほどではないけれど、わたくしとアヤメをよく撫でてくれる。

 でもタイミングが違う。

 ミーシャさんが撫でる時というのは大体が手持ち無沙汰か、わたくしたちが進んでおねだりした時である。

 こうやって何でもない時に撫でるのはむしろリョカさんである。



「つまりですね、ルーファの盾とは相性が悪いのに神格とは互換性があるというか、全体的に下位互換? 女の子に必要なのは獣の爪と龍の牙ではなく、甘いものとスパイス的な」



「……腑抜けているのね?」



「腑抜け。とは違うような――あっ、丁度良いところに」



 今のミーシャさんの状態を的確に察知できそうな人物が近くにいることを察知し、ついでに彼と彼女と一緒にいるテルネに声を送る。



「ルナ? どうしたのですか」



「ちょっとソフィアさんとセルネさんを貸してください」



 そう言ってテルネがすぐにわたくしたちの傍にやってきて、ミーシャさんを見て訝しんだ。



「おはようございますミーシャさん」



「……ええ、おはようテルネ、良い朝ね」



「? ええ、そうですね。ルナと買い物ですか?」



「リョカに頼まれて朝食の食材をね。あなたたちは――」



「どうしたミーシャぁ! もしかして具合悪い? ついにアヤメ様のように拾い食いでもしちゃった? それとも頭どこかにぶつけたとか――」



「セルネ落ち着きなさい、アヤメは人の姿じゃ拾い食いはしないわ。そもそも最近ではずっとあたしにくっ付いているからそんなことはさせない」



「……う~ん? なんというか、何でしょうねこの違和感」



「いやいや絶対変だって! 普段のミーシャなら今の発言で睨んでくるもん! アヤメ様に対しても多分――アヤメに拾い食いなんてさせないわよ、あたしが首根っこひっ摘まんでいるもの。そんなことしたらげんこつ落とすし。っていうよ!」



 さすがセルネさん、ミーシャさんガチ勢というものなのでしょうか。



「ルナ、これは?」



「多分ルーファの神格が変な影響を与えているみたいで、どうしたものかと」



「いつもみたいに消費するために吐き出させればいいのではないですか?」



「それが――ミーシャさん、信仰放てますか?」



「当然……んっ、うんっ、んぅ! あら?」



 力むミーシャさんなのだけれど、いつものような圧が感じられない。

 これ少しマズいのではないだろうか。



「どうにも感覚が緩くなっているのか、普段通りの力が発揮できないのと、それと盾が作れないことが問題ですね」



「ああ、そういえばミーシャさん、盾と絶望的に相性悪いのでしたか」



「これはぁ、リョカさんに相談ですかね」



「それが良いと思いますよ」



「あっ、俺も行っていいですか? リョカのご飯食べたい」



「セルネ様……甘えに躊躇がなくなってきましたね」



「躊躇してたらリョカいつの間にかどっか行っちゃうんだもん、いる時にいられるだけ甘えていくよっ」



「セルネさん段々アヤメじみてきましたね」



「ああ、既視感はそれでしたか。いっそアヤメに托したらどうですか? 相性もいいはずでしょう?」



「いやで~す、セルネさんは月の勇者になってもらいま~す。わたくしの勇者本当に少ないですし、アヤメにやったらまた調子に乗りますし」



 と、頬を膨らませていると、ミーシャさんに撫でられてしまい、これはこれで役得かなと彼女に引っ付くのだった。

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