魔王ちゃんと自業自得の罰
「あ~ね、なるほどなるほど――」
ルナちゃんから記憶の共有をしてもらった陛下とラスターさん、ラスターさんは頭を抱え、陛下はレッヘンバッハおじさんと守護神様のお尻を叩き続けているミーシャに近づき、一言二言交わすとおじさんのお尻叩き係を我らが聖女様と変わってもらい、近くにあった木材をフルスイングし始めた。
「やっぱクビにしたらどうですか?」
女神さまたちの協力によって僕とソフィア、ランファちゃんにも記憶の共有がされた。
ソフィアは苦笑いを浮かべ、ランファちゃんは顔を覆っていた。そう言えばこの子、おじさんから支援受けていたんだったっけ。こんな腹の内は聞きたくなかっただろうなぁ。
「はっはっはリョカちゃん、それが出来たらとっくにやっているよ。ほんっとうに面倒臭い奴なんだよこいつ」
「……いつの間にか、王都が司る様々な業務を一噛みしているからな。歯車が一つだけ外れたくらいで。とも思うかもしれないが、その1つがあまりにも重要なのだよ」
「相変わらず性質の悪いおっさんだことで」
「いやぁリョカちゃんもミーシャちゃんもごめんね。こんなゴタゴタに出来れば巻き込みたくはなかったよ」
「それはわたくしたちからもですね。ルーファが本当にご迷惑をおかけしました」
僕が苦笑いでルナちゃんを抱き上げると、ジンギくんの背中でずっと黙っていたエレノーラが僕の傍にやってきた。
「エレノーラ?」
「リョカお姉ちゃん、エレも混じってきていいですか? あまりにも無礼だったので」
笑顔で言い放ったエレノーラだけれど、その額には青筋が小さく浮かんでおり、本当に怒っているのが窺える。
そりゃあお父さんがあれだけ信心深い信徒だからなぁ。レッヘンバッハおじさんを許容は出来ないだろう。
「おっ、エレノーラちゃんも混ざるかい? おいで、おじさんと一緒にこの阿呆を懲らしめよう」
陛下に手招きされ、エレノーラがテテテ~と駆けていってしまい、ジンギくんが彼女について行った。
するとセルネくんがぷりぷりとラスターさんに詰めており、その様子を見守る。
「ほらぁ、俺関係なかったでしょ」
「……ん、そうだな。すまなかった。まあ、その、お前は困難な道を進んでいるのだな」
「だよ。まあレッヘンバッハ様みたいに悪いことは考えないのが救いだよ」
「そうだな。どのような規模であれ、グリムガントの聖女は素直なだけだ。レッヘンバッハよりも幾分も可愛げがある……いや、この惨状は、いや、言わぬが花か」
ミーシャの扱いを心得たのか、ラスターさんがセルネくんによく似た顔ではにかんだ。あの人も相当苦労しているんだな。
「ああそうだジブリッド、そのライブ会場とやらはすぐに出来るのか? 兵士たちが突然見慣れない建物が生えてきたと報告に来たからな、兵士たちにも周知しておきたい」
「ああはい、もうほとんど完成しています。驚かせてしまって申し訳ありません」
「いやいい。私も陛下からある程度は聞いていたからな、それとなく伝えてはいたんだ。だがまさか1日も待たずに完成されるとは想定していなかった。見事な建築だ、やはり王都に残ってはどうだ?」
「いえいえまだまだ学園で学びたいので」
「それは残念だ。セルネと2人揃って王都にいてくれるのなら、頼もしい限りだったからな」
僕はラスターさんに微笑みを返してあげた。
「……セルネ、あれは中々に厄介だな」
「だよぅ」
ラスターさんが心底可笑しそうに笑い、セルネくんを一撫ですると、陛下に一言挨拶をし、そのまま王宮の方に戻っていった。
そうして僕はお尻を叩く小気味の良い音を聞きながらあちこちの建物を新たに作り直すのだった。