表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
36章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都でライブデビュー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

447/594

魔王ちゃんとまたまた更地の王都

 女神さまたちが突然騒ぎ出したから、僕はみんなと一緒に絶界から出て、駆け出すルナちゃんたちをソフィアとランファちゃんと追って王都を進んでいたのだけれど、貴族がお忍びで使う区画の方からとんでもない殺気やらの戦闘圧、それと同時に獣のような咆哮と龍の球で見たような、気合で大地がめくれ上がるような衝撃と爆音、そしてめくれ上がった大地や家屋が空へ巻き上がるのを僕たちは見ていた。



「アヤメちゃん?」



「……アヤメ、あなたどうして」



「アヤメ、あなたいい加減信者に首輪をつけたらどうなのですか?」



「あちゃぁ、これはまた」



「もっと竜部分も爆発させて」



「ふわぁアヤメお姉さま、すっごいです」



「待ってこれ俺関係ない! というか悪いのルーファだろ!」



「そのルーファの女神特権をぶち抜いたのが悪いと言っているのですよ」



 ついに女神特権ぶち抜いたかぁ。

 しかしこれだけ怒っているってことは、おじさんが妙なことを言ったな。



 例えば僕を簡単に使うにはどうしたらいいのか。とか、守護神様に甘えて来いと言ったとか。そんなに軽くはないってキレちゃったかな。



「守護神様の女神特権とはそんなに簡単に抜けるものなのですか?」



「……いいえソフィア、とにかく相性が悪かったみたいですね」



「相性ですか?」



「ルーファの盾は簡単に言うと国土ほど厚さのある壁を圧縮して作ったような盾です」



「盾というよりは、圧倒的な量によって何者も通さない壁を盾と言い張っているのです。でもそれはミーシャさんにとってただの食料でしかないのです」



「と、言いますと?」



「ああなるほど。ミーシャは盾のことを食料だとは考えていない、盾だからね。でも信仰は別、その壁って全部信仰で出来ていたんですよね?」



「その通りです。ルーファは信仰で言うと女神間でトップですからね。あらゆる場所に守護を置き、その守護に人々が祈ると彼女に信仰が流れます。ですので物量での盾が可能になったというわけです」



「ついでに言いますと、冒険者や騎士や兵士に持たされる鎧や盾にも少なからずルーファの信仰が混じっていますから、戦いが起きその度に装備に感謝すればそれは全てルーファの信仰になるのですよ」



 あり得ない量の信仰ゆえに、その盾も物量任せのごり押しの盾になったと言うことなのだろう。でもそれをまさか食ってしまう聖女がいるとは思っても見なかったんだろうな。



「え~っと、今の話を纏めると、盾になるくらい濃い(・・)信仰を、ミーシャさんが吸収して、盾を消してぶん殴ったと言うことですの?」



「……ええ、はい」



「ルーファったらすっごい顔してたねぇ」



「綺麗に顔面にパンチが届いたのよね」



「まああの子も自業自得だけれどね」



 本当、うちの幼馴染は女神様にも容赦なく殴りつけるな。



 そうして僕たちは走り、更地になった区域を通りがてら歌によるリリードロップで多少怪我をした人々を回復しつつ、やっと見えてきたミーシャたちに駆け寄る。



 我が聖女の背後ではボロボロになったセルネくんとジンギくんと、彼の背中におぶって貰っているエレノーラ、クレインくんと彼に引っ付いて甘えた顔をしているピヨちゃんと腕をふりふりしているタクトくん、それとヴィヴィラ様もいるな。



「あっリョカ……」



 セルネくんが力のない声で僕を呼んだが、体ごと首を傾げ、涙をポロポロ流しながら手で顔を覆い始めた。



「止められませんでしたぁ」



「うん、うん、いいから。セルネくんの責任じゃないから。傷を治してあげるからこっちにおいで」



 手を伸ばして引っ付いてくるセルネくんを撫でながら、僕はみんなの傷を治すために少し歌い、その元凶である金髪のケダモノの背中に目をやった。



 映像で見てはいたけれど、すっごい圧だなぁ。



 そしてミーシャの正面には、見事に壁に突っ込んでお尻をこちらに向ける人が2人――いや、1人と1柱か。

 そのレッヘンバッハおじさんと守護神ルーファ様のお尻をミーシャが叩き続けていた。



「ルナちゃんあれ止めた方がいいですか?」



「う~ん……いえ、このままああやって罰を受けてもらいましょう。テルネもそれで良いですか?」



「ええ、さすがに今回のことは見過ごせません。レッヘンバッハの口車に乗せられ、挙句の果てに女神にあるまじき発言の数々。今回はこのままミーシャさんに任せてしまいましょう」



「それじゃあこの辺り修繕しちゃおっか。直るまでルーファ様には罰を受けてもらうと言うことで」



 女神さま一同が異議なしと手を上げた後、修繕の手伝いを申し出てくれた。

 するとセルネくんたちが苦笑いを浮かべており、僕は彼らに目を向ける。



「いいの?」



「みんなが良いって言っているからね。それにほら、こっちもこっちで手いっぱいになるから」



 僕が意識をセルネくんたちの後ろの方に向けると、彼もそれを追って振り返った。



「セルネぇ!」



「俺関係ないけどぉ!」



 ラスターさんが鬼のような形相で陛下を連れてやってきて、そのままセルネくんの頭をはたいた。



「関係がないならなぜ中心にいるんだ」



「だってミーシャがぁ」



「グリムガント? ……おいセルネ、あれはなんだ?」



 ラスターさんと陛下が壁尻プレイをしているグリムガント親子と守護神様を見て揃って頭を抱えた。



「……リョカちゃん?」



「え~っと、僕たちも今着たところなのでセルネくん説明任せても良い? 急いで建物直したいからさ」



「いえ、見た方が早いですよ。陛下とラスターさん、こちらへ」



 そう言ってルナちゃんがセルネくんに触れ、陛下とラスターさんに肩に手を置くように指示を出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ