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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
36章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都でライブデビュー

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聖女ちゃんと極悪詐欺師

「親父探しを手伝ってもらって悪いわね」



「ううん、他にやることもないから気にしないで」



「しっかしミーシャ様、お父様というとレッヘンバッハ様ですよね? この間お会いした陛下とか偉い人に聞いたらわかるんじゃないですかい?」



「……聞いてみたけれど、みんな口をそろえたかのように、知らん。って言うのよ」



「偉い人ではないのですか?」



「いやぁ、レッヘンバッハ様は王宮でも特殊な立場でね、陛下にしか命令できないみたいなんだけれど、それすら聞かないこともあるみたいで」



「ミーシャみてぇだな」



「あッ?」



 タクト、クレイン、セルネ、ジンギとエレ、そしてピヨ子を連れてあたしたちは今、親父を探している。気のせいならいいのだけれど、守護神と呼ばれる女神が親父がいなくなった時にこちらに降りてきて、さらに消息も分からなくなっているそうだ。

 疑うなというのが無理な話である。



 そしてあたしはふざけたことを抜かしたジンギの横腹をつねっていると、肩を竦める。



「いだだだだだっ千切れる千切れる!」



「やっぱり一度シメておくべきかしらね。母さんも一日中日光浴してて役に立たないし」



「グリムガント家もっと1つに纏まって」



「あたしに言われても困るわ」



「ミーシャ様のお母さん、俺たちが来てもテラスで椅子に座って空を見上げながら、口を半開きにして微動だにしなかったですね」



「あれ大丈夫ですかい、誰かに操られてないですかい?」



「ああいう母さんなのよ。意識がある時に話しかけることが出来ればその日1日は幸運ということよ」



「ミーシャお姉ちゃんのお母様、可愛い人でした。でもちょっと無防備で危ないかなって」



「ああやってぼーっとしているから、昔からリョカとおばさんに好き勝手にされていたのよ」



 街に出て親父を探す前、一応母さんのところにも寄ってみたけれど、案の定役に立たず、話を何も聞けなかった。

 あたしは手近にあるエレとピヨ子を撫でるとため息をつく。



「レッヘンバッハ=グリムガント。ああ、ルーファ姉に守護し――守護を司る者である証拠を見せろと煽り、挙句の果てに酒で酔わして加護を盗んで、酒代も払わずに逃げた世界最大の詐欺師ですか」



『この世界で最も幸運な人間、すべての運命が彼のために動く特異な人間。最初から最後まで望んだまま生きられる人間。人の世とは残酷だねぇ』



「なにそれ、スキルか?」



『スキルなんてなくても生き残れるズルい人間さ』



「ヴィヴィラ、それ親父に言っちゃ駄目よ。調子乗ってなにするかわからない」



「いやそもそもやらかしがひどすぎる。本当にいつか処刑されるんじゃない?」



「……わぁ、お父様と仲良くできなさそう」



「うん、だから正直会わせたくない。悪影響だろうし」



 親父はとても厄介な人間だ。あのリョカですら幼い時に、親父を敵に回すなら事前の準備とタイミング。と、言わしめたほどだ。

 さらに言うなら、今あたしの周辺の人たちはその親父が欲しくてたまらない強力な力を持った子たちが多数いる。

 あの親父なら何が何でも引き入れようとするだろう。それを阻止するためにあたしは何が何でも親父に会い、一度痛い目を見せるのだ。



「ミーシャ様はそれほどお父さんを警戒しているんですね?」



「あんたたちが取り込まれる前にね。うちの親父、本当にどんな手でも使うから断れないのよ。家族だって平気で人質にするわよ」



「こええよ! え、レッヘンバッハ様ってそんなのだったか?」



「あんたとランファはもう親父のお願い断れないでしょう。だからする必要がないからいい顔していただけよ」



「……父様が、ジブリッドに使われるのは良い。だがグリムガンドに隙を見せるな。って言っていたのはこれかぁ」



「そういうことよ。あんたのお父さんは大分しっかりしているわね。それが言えるってことは取り込まれていないってことだし」



 あたしは頭を抱えるのだけれど、ふと思いついたことがあり、ジンギを屈ませてピヨ子とヴィヴィラに視線を合わせる。



「少し協力しなさい。あんたたちなら親父の居場所わかるでしょう?」



「え~、ヒナが手伝うですか――」



「手伝ってくれたらクレインをどうにでもしていいわよ。あたしからクレインは逃げないし」



「え!」



「すぐに取り掛かるです!」



『おやおやケダモノの聖女、それならあたしには何を提供してくれるんだい? 並のものでは動かないんだけれどねぇ――』



 あたしはジンギの肩に微かにある女神の気配を掴み、少しだけ力を込める。



『待て待て待て! 神核を破壊しようとするな! わかった、わかったからその手を離したまえ!』



「……やってることレッヘンバッハ様と変わらないよぅ~」



「クレインの目が死んだですぜい」



「ヴィをイジメんな。エレは絶対真似するなよ」



「でもでも、人心を掌握するにはその人が最も求める物を提供する。ですね。エレもやってみたい!」



「バカやろうミーシャ、教育に悪いだろうが!」



 それぞれの言葉を聞き、女神の力を借りてあたしはおやじたちを探すのだった。

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