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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
4章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、初めてのダンジョン。

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魔王ちゃんと終わる遺跡

「みんな無事?」



 紋章によって転移した先には、だだっ広い空間があり、部屋の中央には金色の紋章が輝いていた。そこで暫く待っていると、ミーシャとセルネくんを引きずってきたカナデが現れ、僕はみんなの傷を癒している。



「大丈夫じゃないわよ。あんたがいないだけでここまで酷くなるとは思ってもみなかったわ」



「ああ、もう少し活躍できると思っていたんだけれど、まったく通用しなかった」



「わたくしに至っては新スキルすら発動できませんでしたわ。ミーシャとセルネもごめんなさいですわ」



「まあまあ、無事ならそれでいいよ。みんなお疲れ様、今お茶淹れるね。ルナちゃんも手当てを手伝ってくれてありがとうございます」



「いいえ、次の時代を背負う若者たちの助けになるのですから、これくらい何でもないですよ」



 カナデとセルネくんに傷薬を塗ったり包帯を巻いたりとしてくれているルナちゃんに礼を言い、僕は紅茶を淹れる。



「ってルナいたのね。ああだからさっきリョカの声が聞こえたのね」



「はい、ミーシャさん結構危なかったのですよ。あのまま生命力を奪い続けていたら体が先に参っていたと思います。だから何とか第3スキルを習得できるように、リョカさんの力を借りたのです」



「聖女のスキル、もっと使いやすいものにしなさいよ。危なっかしいったらないわ」



「ミーシャ、それはこっちのセリフだからね。お願いだからあんな危ない戦い方をしないでよ」



「うんなこと言われたって、ああやるしかないから仕方がないじゃない。というかなんでいきなり第3までスキル習得できたのかしら?」



「多分ですが、ミーシャさんの場合はすでにスキルを覚えられるだけの経験は積んでいたんだと思います。けれど生命力が圧倒的に足りなくて、習得までに至らなかったところを、セルネさんの生命力回復によって感化されたのではないかと思われます」



「セルネくんに感謝しなよ。それとミーシャ、ドレインタッチ――第2スキルは人に向けて発動しちゃ駄目だよ」



「イヤよ。せっかく一日一回しか回復手段のない環境から抜け出せるのに、使わなければもったいないじゃない。ちゃんと生命力を吸収する量は調節するから目をつぶりなさい」



 あれだけ苦しそうな顔をしていたのに、全く懲りる気配のないミーシャに僕は頭を抱えるのだけれど、カナデとセルネくんの2人が怪我の治療をしているルナちゃんを不可思議そうに見ており、まずは2人に紹介することにした。



「はい、こちらルナちゃんです。みんなが危険な目に遭ったからわざわざ来てくれたんです、感謝しましょう」



「紹介されましたルナちゃんです。もしまたどこかでわたくしの声が聞こえた時は気軽にしていただけると嬉しいです」



 彼女の声が聞こえる現象など神託しかないはずだけれど、それに気軽に答える人など僕とミーシャ以外いるのか疑問ではある。

 しかしそんな紹介だったにもかかわらず、カナデはともかくセルネくんが訝しんでおり、僕とミーシャに耳打ちをするためか顔を寄せてきた。



「ねえ、あの子は俺たちが気軽に話しかけてもいいのか? 何でかわからないけれど、俺のギフトが猛反発してくるような感覚があるんだけれど」



「気にしなければいいのよ。あの子、リョカがお気に入りみたいだし、神託なんてしょっちゅう飛んでくるわよ」



「神託……リョカ、今からでも聖女になっても良いんじゃないか?」



「それはミーシャに任せるよ」



「聖女は他人の生命力をぶん盗らない。ミーシャのギフトはきっと何かしらが混じっているに違いない」



「あんた随分言うようになったわね。今度サシで勝負してあげましょうか」



「信仰1回縛りで、生命力を吸わないと約束してくれるのならいくらでも相手になるよ。それ以外の条件では勝ち筋が見えない」



「後ろ向きな勇者ね、取りあえずやってみればいいのよ」



「とりあえずで命を落としたくはない!」



 大分仲良くなったミーシャとセルネくんに安堵しつつ、言葉通りに気軽に会話をしているルナちゃんとカナデに目をやる。



「ルナさんですわね! わたくしはカナデですわ、よろしくお願いしますわ」



「はい、カナデさんは元気な方ですね。わたくしまで明るくなってきちゃいます」



 キャッキャと談笑をしているカナデの陰からプリマがルナちゃんの様子を覗っていた。あれは正体に気が付いているのだろう。



「あら、プリマどうしたんですの? ルナさんの頭に乗りますの――いたいいたい! なにをするんですの!」



『カナデちゃんのバカバカバカバカぁ! そ、そん人が何か本当にわからな――』



「プリマさん、よい契約者と巡り合えましたね。リョカさんが名前を付けてしまったので、中途半端なことになっていますけれど、これはこれで楽しいことになりそうです。ああそうだ、せっかくですからあなたにもそれっぽい力を1つ」



 余計なことを口走ろうとしたプリマに、ルナちゃんが満面の笑顔で何かの術を掛けた。



「な、何するのよぅ……ですか!」



「プリマ、さっきからなにをぷりぷり怒っていますの?」



「カナデちゃんのおたんこなす! その子はヤバいのよぅ。正直関わり合いたくない度合いならミーシャと同程度だよぅ。ミーシャが化け物の皮を被った化け物なら、その子は花を被った怪物よぅ、だからカナデちゃんもあまり心を許しすぎないようにね」



 ああ、プリマが気が付いていないようだけれど、今の話を聞いて(・・・)いたミーシャが額に青筋を浮かべ、プリマの前に立ちはだかる。



「な、なによぅ、どうせ獣みたいな野生の勘でプリマが悪口言っているって察したんでしょうけれど、証拠がないもん! や~いや~い、頭の中木の実~」



「もうプリマったら。ミーシャ、この子も悪気はないんですわ。聞こえていないでしょうけれど、あまり責めないであげてくださいまし」



「聞こえているわよ」



「え? あっ! やりやがったわね神獣様の敵! というかもしかしてさっきからプリマの声って……」



「聞こえているわよ。化け物の皮を被った化け物とは随分じゃないの。あなたの皮を剥いだらさぞ高く売れそうね」



「いやぁぁっ」



 プリマが僕に飛びついて来て体を震わせたから、彼女を優しく撫でてやり、苦笑いでルナちゃんを見る。



「あまりに元気でしたのでつい」



「あまりイジメないであげてください。というかなにをしたんですか?」



「カナデさんを通して任意で姿と声を届けられるようにしました。プリマさん自体が位の高い精霊なので、その力をちょっと引き出すついででです。これでカナデさんも第2スキルが使用可能になると思いますよ」



 随分と大盤振る舞いなルナちゃんに感謝しつつ、やっと落ち着いてきた面々に僕はやっと紋章を指差す。



「それじゃあそろそろ、終点に向かおうか」



「どうして最後だってわかるのよ?」



「紋章が1つだから。もう出口が必要ないってことでしょう?」



 僕が紋章へと足を進ませると、ミーシャ、カナデ、セルネくんとルナちゃんが付いてきてくれ、大きく伸びをしてみんな一緒に紋章へと足を伸ばしたのだった。

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