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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
35章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都でしばしの休息。
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魔王ちゃんと氷の思い付き

「――」



「ルナちゃんどうしたぁ!」



 陛下に許可を貰った場所でライブ会場の設営をしていると、突然ルナちゃんが崩れ落ちるようにその場で丸まった。



「……なにも、そんなことを、アリシアの前で言わなくても――ジンギさん、ひどいです」



「え、アリシアちゃんいるの?」



 コクコク頷くルナちゃんを抱き上げてあやすのだけれど、どうにもジンギくんがアリシアちゃんに余計なことを話したらしく、月神様は恥ずかしさからか顔を覆っていた。

 多分ジンギくんに悪気はなく、話のついででルナちゃんのことを話したのだろうけれど、一体なにを言ったのやら。



「そういえばジンギがすごく活躍したそうだね。何か色々試していたけれど、形になったんだね」



「う~ん、ジンギくんは不思議な成長を遂げている感じだね」



「……ジンギさんは女神と相性がいいのですよね。とはいえまさか女神を装備して自分の力にするとは思いませんでしたが」



「俺の知らないところでジンギがとんでもないことになっていた」



「装備て、女神様ってそう言うことも出来るんですかい?」



「普通は出来ませんよ。ただヴィヴィラが神核の状態だったことと、ジンギさんがその神核を取り付ける機構を作っていたからできたことで、真似しようとして出来ることではないですね」



 その機構もおよそ僕が見せたニチアサのライダーの影響なんだろうけれど、あれで問題なのは女神様の加護を無条件に引き出していることなんだよな。

 ヴィヴィラ様がどんな加護を使えるのかはまだ定かではないけれど、未来視だけというわけでもあるまいし、あの子はあの子でまたどんどん伸びそうなんだよね。



「ヴィーラは過去現在未来を司るですからねぇ。そもそもの話、あの子の加護もギフトも人の手には余るですよ」



「ヒナリア様、その女神様と仲がいいんですか?」



「妹ですよぅ、ルナ姉たちの世代の一個下です。ヒナが言うことでもないかもですけれど、ヴィーラとランドは依存先がないと生きていけないくらいには繊細で面倒臭い女神ですから、もうちょっと一人でも生きていけるようにはなってほしいです」



「あなたは逞しいですからね。確かにヴィヴィラの加護は人を超越した力になり得ます。現にジンギさんは自分と相手の過去を改変すると言うことをしてのけているわけですし」



「ジンギアホみたいに強くなっているでござるな」



「俺たちも負けていられないね」



「旦那さまたちは大丈夫ですよぅ。旦那さまにはヒナが、タクトさんにはテッドが、オル……大丈夫です!」



「……ヒナリア様、拙者で言葉を止めるのは止めてくださいでござるよ」



 ドヤ顔を浮かべているピヨちゃんを僕は抱き上げて撫でると、オルタくんに目をやる。

 彼は弱いわけではなく、ただ機会に恵まれていないだけだ。2人のように新しいギフトを貰えばそれはもう伸びると思う。



「まあ器用貧乏なところは否めないけれどね」



「むぐっ、リョカ様まで」



「ごめんごめん。でも実際のところオルタくんは何でも出来るからねぇ。女神様から見てどうなんですか?」



「まさにその通りですね、女神間でリョカさん周りの人たちは期待度が高いです。でもオルタさんはどの女神が付いてもそれなりに力を発揮できるからか、未だに議論が止まっていません」



「才能あり過ぎる感じですぜい」



「……才能って、リョカ様ほど突き抜けていればそれも良いでござろうが、拙者結局は特質した能力がないってことでござるからなぁ」



「リョカさんと比べたらそうかもですけれど、本当に高い技術で均衡がとれているんですよ。世の英雄と呼ばれる者たちの突出した能力と同程度の才能を持っていながら、それを満遍なく使いこなせる」



「つまりパラメーターを円グラフにした時、巨大な円になる感じだね。ふるい落とされないくらいの大きさであるのなら誇るべきだね」



 首を傾げるオルタくんを横目に、設営のために現闇をあちこちに展開しているのだけれど、ふと一緒に来て今の話を聞いていたお母様がジッとオルタくんを見ていることに気が付く。

 どうしたのだろうと疑問を覚えていると、お母様が手元にビー玉ほどの氷の飛礫を作り出し、それを突然オルタくんに向かって弾いた。



「――ッ! な、何でござるか!」



 しかし飛ばされた飛礫を瞬時に銃で撃ち抜いたオルタくんが驚いたような顔でお母様を見ていた。

 本当にうちのお母様がごめんね。というか突然なにをやっているんだこのお母様は。



「ふ~ん、確かにいいものを持っていますね。リョカ、少しこの子を借りていくわよ」



「え?」



「ヘリオス、この子の休学を認めなさい。うちでこき使うわ」



「……」



 オルタくんが救いを求めるような顔を向けてきたのだけれど、タクトくんもクレインくんも、セルネくんも僕もサッと目を逸らしてしまう。



 お母様の思い付きだ。僕が止められるわけもなく、でもそれはあんまりだし、それなら――。と、僕は手を上げた。



「あのお母様、もう1人有能な人がゼプテンの冒険者ギルドで受け付けやっているので、オルタくんと一緒にさせたらどうかなぁって」



「そう、ならその子もウチに連れてくるわ。リア・ファル借りていくわね」



「リョカ様! ちょ、せめて止めて――」



 僕はオルタくんに向かって両手を合わせて頭を下げる。



「せ、殺生なぁ――」



 オルタくんの叫びもむなしく、お母様に引きずられるようにして連れてかれてしまった。



「リョカ酷いことするね、なんでマナさん巻き込んだの?」



「いや、慰めになればなぁって」



「オルタ、ドンマイですぜい」



「リョカ様のお母さまって相当強いですよね?」



「うん、そうらしいんだけれど、僕はよく知らないんだよ」



「リーンフォース――夜を練り歩き、闇を従えた氷結の女王、時さえ凍らせる終焉女帝。まさか人の親をやっていたとは」



「なにそれ僕知らない。通り名が基本的に物騒なんよ」



「悪人ではないよリョカ=ジブリッド、君の母親は偉業を成し遂げ、そして世界に向くはずだった混沌を一挙に従えていたんだ」



 それを聞いて安心できる子は少ないのではないだろうか。

 しかしお母様もあれでそれなりに人を見るし、気に入ったというのであれば本当のことなのだろう。怪我とかはさせないと思うけれど、まあ無事は祈っておこう。



「オルタ、達者でやるんですぜい」



「健康第一に頑張って」



「君の成長を楽しみにしているよ。そしてまたいつか、一緒に依頼を受けよう」



 タクセが揃って僕と同じように手を合わせて、なむなむなむと唱え始めた。前に余計なことを教えてしまったけれど、男子高校生チックな雰囲気で僕も乗っかっておく。



 するとピヨちゃんが首を傾げており、ルナちゃんが苦笑いを浮かべていた。



「なんだか、知っている人の雰囲気に似ている気がするです」



「……まあ、そうでしょうね」



 女神さまたちの会話を心に留めておきながら、僕は手を叩いて作業の再開を促すのだった。

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