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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
34章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都防衛戦線。
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鋼鉄のライダーくん、ケダモノの真価を見る

「ん~ん? ランファの奴、また無理してるな」



「え、お前主人センサーでもついてるのか?」



「センサーが何かはわからないけど、あいつが無茶するとわかるんだよ。最近ではお前もルナも、エレもわかるな」



「なんだその幼女センサー、お前リョカのこと言えないわよ」



「やめろ、一緒にすんな。それにランファは幼子じゃ……いや、似たようなもんか」



 バイクから降りた俺たちはそのコアと呼ばれるものがある区域に来ていた。

 そこには巨大な穴があり、その最下層には巨大な球体が管のようなものに繋がれており、大きな音を上げていた。



「それで、ランファ嬢に何かあったのでしょうか?」



「ん……まあ、あいつにとって辛いものであるのは間違いないわね。ラムダが一緒だから心配はないわよ」



「そうですか」



『……大好きだった人を手にかけなくちゃならないのに、大丈夫なわけがない』



「ヴィ?」



「そうね、大丈夫なわけがないわ。でもそうしなければあの騎士たちは一生傀儡(・・)のままだったし、手を抜いていたらランファが殺されていたわ。ヴィヴィラ、お前は知らないかもだけれどね、相手が大事ならちゃんと相手の気持ちにも寄り添いなさい。少なくともランファと戦った騎士たち――リック、ラーラ、アーヴィルの3人はあの子を傷つけたくはなかったし、騎士として生きられないのなら進んで死を選んだわよ」



『……』



 ヴィが黙ってしまう。

 アヤメの言葉を理解したんだろう。でも納得はしていない。きっとこの子は最後まで足掻いていたかったのだろう。



 しかし懐かしい名前を聞いた。

 お調子者のリックに、似非淑女のラーラ、大人げないアーヴィル。そうか、あいつらはお嬢様――ランファの手によって解放されたのか。



 俺はそっとヴィの思念なようなものに触れ、その頭を撫でる。



「ありがとうな、ランファのことを気遣ってくれて」



『……そんなんじゃない、そんなんじゃあないんだよ。あたしは、ただ、それじゃああたし自身が報われないから』



「それでも、俺はお前が良い奴だと思うよ」



『――』



 また黙ってしまったヴィに俺が肩を竦ませると、アヤメが呆れたような顔を向けてきた。



「イチャついているところ悪いが、これどうやって破壊しようかしら?」



「下りてぶっ壊せばいいんじゃないか?」



「こいつらの妨害の中ぶっ壊せるのならいいんだけれどね」



 アヤメがチラと背後に意識を向けたのがわかる。

 すると俺たちが通ってきた道、さらにあちこちの通路からマネキンが湧いて出てきた。



「ここの防衛システムでしょうね」



「私の絶慈で一掃しましょう――」



「だから使えないでしょうが。お前はこの金属の大地の上で何を吸収するのよ」



「む……そうでしたね」



「良いわ、俺がコアを壊す。ロイとジンギはマネキンどもをどうにかしなさい」



「はっ? いやいやアヤメは大人しく――」



「ジンギぃ、お前俺たちが可愛いだけのマスコットだと思ってやがるわね? あ~……女神に仕える俺たちはそれなりの自衛手段を持っているのよ」



「そうなのか? でも」



『ジンギ、アヤメ姉の言う通りにした方がいい、むしろ近くにいると邪魔になるよ。あたしたちの中であの姉を止められるのはクオン姉とメル姉だけだから』



「そういうこった。俺の心配をする前に、お前はやるべきことをやりなさい」



「でもよ――」



「ああもうわかったわよ。ジンギ、コアを壊し始めると俺は無防備になるわ、その間このマネキンから俺を守ってちょうだい」



「……」



「頼りにしているわよ、鋼鉄のライダー(・・・・・・・)さん」



 そう言ってアヤメが大穴の縁に立った。

 そして自身の拳を手のひらに打ち込むと、ミーシャのような戦闘圧が放たれ、聖女のように嗤った。



「『女神特権(ユニークコマンド)我は世界を牛耳る獣也アンリザルバルヴェスティア』」



 普段からリョカに与えられた服を着ていたアヤメ、しかしそのリョカ曰く女児服が一変され、黒いマントに、鎖やら何やらが装飾された見た目真っ黒な服装。

 けれど彼女から吹いてくる圧は普段のそれとは一線を画し、どこかの聖女のような重く荒々しいまでの圧が感じられた。



 そのアヤメが突然四つん這いになったと思うと、それに呼応するようにどこかから吹いてきた。



 圧倒的戦闘圧、ここではないどこかからか広がっているもので、アヤメの圧とぶつかるようにこのバルバトロスを駆け巡るように奔っていく。



「ミーシャ?」



 そのどこかから吹いてきた圧は間違いなく聖女のもので、俺が驚きに目を手で覆うとアヤメが大きく息を吸った。



「――」



 獣の咆哮、アヤメがその体躯からは想像出来ないほどの声量で遠吠えを上げると同時に、同じように咆哮がどこかから響いてきた。



 2人の咆哮はバルバトロスを揺るがし、辺り一帯を壊すように力の奔流となった。



「ったく、なんだってんだ!」



「……これが神獣様の」



『いや待て、あの聖女なんでアヤメ姉と均衡している』



 俺たちが驚くのをよそに、アヤメが大穴を下りていってしまった。

 俺は舌打ちをするとすぐにスキルで変身し、湧いて出てきた人形を睨みつける。



『待てジンギ――ロイ=ウエンチェスター、君はラムダ姉の信者だね? それなら少しばかり力を貸してあげよう』



「と、言いますと?」



『金属だって元々は大地の眷属だ。だからちょっと弄って()()()()()()()()()()()()



 途端、ロイさん周りの床が光りだす。

 ヴィがなんかやったようだが、俺には理解出来ず首を傾げると、ロイさんが俺の腰――つまりヴィにだが、彼女に頭を下げた。



「ヴィヴィラ様、感謝いたします。あなたのおかげで役立たずにはならなさそうです。『豊かに芽吹く血思体ブラックラックレギオン』」



 ロイさんのクマが大量に現れ、人形たちに飛び出していった。

 これはおれもまけていられないな。と、やる気を改めて滾らせ、俺も飛び出していくのだった。

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