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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
34章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都防衛戦線。

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魔王ちゃんと世界と女神への生きざま

「……え? なんだあれ? ソフィアは一体何をしたんだ?」



「……リョカさん、私の娘はその、あれは、一体」



 ウロ爺の聖剣と星神様の加護、そしてソフィアのまるで羽虫でも落とすような空気感での圧倒的強者の佇まい、さらにミーシャたちの方での運命神様の会話――それらのイベントに、各々が頭を抱えていた。

 まずは1つずつ。

 ウロ爺に関してはフィムちゃんが胸を張っている。



「さすがウロトロスです! 五つ星極星の名は伊達ではありません」



「あれがグエングリッターにいたらこの間の騒動も簡単に解決できていたのでは?」



「そうでしょうか? ウロトロスは海バカなので、そこまで気が回らなかったかと」



「まあスピカたちへの良いお土産話にはなりましたね」



 僕がそう言うと、フィムちゃんが顔を逸らし、冷や汗を流している。何かマズいことでもあるのだろうか。



「いえ、その、スピリカたちはテッドの力で定期的にこっちを見ています」



「ありゃそうなんだ。それならちゃんとお土産も買っていかないとね。何でそんな嫌そうな顔を?」



「……絶対怒られます。いつまで遊びに行っているんだって――リョカお姉さま、一緒に帰ってくれませんか?」



「あ~」



 確かに大分長い時間こっちにいるな。しかも騒動に首を突っ込んでいるし、スピカが怒るのもわかる気がする。

 するとルナちゃんがフィムちゃんの頭を撫でた。



「それだけ愛されているということです。ここは素直に怒られなさい、スピカさんも何も叱りたくて叱っているわけではないのですからね」



「む~、でもでも最近スピリカは、私をおざなりにするんですよ。遊ぼうと思ってもはいはいって適当にあしらわれるし」



「それはフィムが機会を間違えているからでしょう。仕事の邪魔をしているのではないですか?」



 プンスカプンとしているフィムちゃんを撫でていると、テルネちゃんが呆れたように言った。

 星神様はまだまだ甘えたがりなようで、スピカにも甘えたいのだろう。



「フィムちゃん、甘えたいのならスピカじゃなくてまずはウルミラを味方にしないと。あの子に甘えておけば自然とスピカも混ざってきますよ」



「その手がありました!」



「……リョカさん、あまりフィムを甘やかさないでください」



 僕はテルネちゃんに微笑み返すのだけれど、叡智神様は叡智神様でどこか顔色が悪い。というより考えることが多くて疲れているようだった。

 何か甘いものでも――と考え、今手持ちにはなかったこと思い出し、やはり作ってくるべきだっただろう。



「ヴィヴィラは一体何を隠しているのやら」



「アヤメとラムダは完全にあの子を保護する姿勢ですね。年長組は見守るという行動をすぐにとるから、こちらとしても動きにくいんですよ」



「相変わらず妹たちに甘いというか、その尻拭いがこちらに回ってくるのがわかっているのでしょうか」



「あ~、僕が口出していいのかわからないですが、ヴィヴィラ様って悪い女神様ではないですよね」



「リョカさん、悪い悪くないの問題ではないのですよ。アリシア然り、ヴィヴィラもそれなりのことを仕出かしました。テッドの時もそうですが、私たち女神は本来それをなあなあにしてはいけないのです」



「う~ん、それじゃあ言い方を変えますね。可愛い女神様です」



 テルネちゃんが凄く嫌そうな顔をした。

 まあそうだろうと思ってわざわざ言い直したのだけれど。



「……リョカさんにそう言われては中々手が出せませんねテルネ」



「ルナ、信者をちゃんとコントロールしてください。あなたに可愛いと言わせるということは、つまりヴィヴィラは庇護対象になったということなんですから――あなたと事を構えるのは女神としては慎重にならざるを得ません」



「ごめんなさいテルネちゃん、でも僕だって何も考えなしに言っているんじゃないんですよ。そりゃあテルネちゃんがここまで言うってことはそれなりのことを仕出かしたんでしょう。でも僕は知っていますよ、女神様がなんの理由もなく世界を、人々を傷つけないって」



「……」



「僕たちはこの世界、女神様が治めるこの世界が大好きです。だから女神様が苦しんでいるというのなら出来うる限り力を貸したい。この世界で生かしてもらっている恩を、感謝を、それをちょっとずつ返してあげたいんです。まだヴィヴィラ様とはちゃんとお話し出来ていませんが、少なくともルナちゃんやテルネちゃん、アヤメちゃんやラムダ様、フィムちゃんピヨちゃんは同じ女神様を裁くのを躊躇しているようでしたので、その原因を取り除いたうえで、改めて判断してもらいたいんです」



「でも、私たちは女神で――」



「テルネちゃん……叡智神様、女神様が僕たち人に頼ってはいけないと誰かが言いましたか?」



「――」



 テルネちゃんと視線を同じにするように屈み、その綺麗な瞳をジッと見つめ、僕は笑顔で尋ねた。

 同じ世界で生きる者同士、協力し合うことの何がいけないというのだろうか。女神様は僕たち人のために尽くしてくれる。なら僕たちだって女神様に尽くしても何ら問題はないはずだ。



 テルネちゃんがハッとしたように息を吐き、照れ顔を逸らした。

 そんな彼女にルナちゃんが小さく笑い、彼女の肩を撫でていた。



「テルネ、今わたくしたちは創世稀にみるほど人に寄り添えています。これだけ人に近づいたことなど過去に一度もありません。状況が変わったのです。だからこそ、今までできなかったやり方を模索してもいいのではないでしょうか」



「……そう、かもですね。女神以外の協力者がいる、しかもそれは特級の実力者。私たちも変わらなければならないのかもしれませんね」



「どんなことがあっても僕たちが何とかしてみせますよ。女神様は可愛い、僕は可愛いものが大好き、つまり可愛い女神様が僕は大好き。どうにだってできます」



 するとテルネちゃんが口を覆って可憐に笑った。

 叡智神様のああいう笑顔は貴重だな。と、満足していると、ふと僕の中で何かが動いた。これは――と、思案していると、陛下が困った顔をしているのが横目に映った。



「リョカちゃんが教会を管理してくれたら、女神様にももっと楽をさせてあげられるんだろうね」



「教会は胡散臭いので近づかないようにしています」



「それは正しい。昔は今のリョカちゃんみたいな女神様に傾倒している者も多かったんだけれど、今はなぁ。ロイ殿みたいな神官も少ないし、正直グエングリッターの教会に準ずるギルドが羨ましいよ」



「人は権利が絡むとどうしても目を眩まされますからね」



 ため息をつく陛下に、苦笑いのルナちゃんとテルネちゃん、そして自身の国のギルドが褒められてしたり顔をフィムちゃん。

 教会に関してはいつか何とかしようかなとは思っているけれど、正直女神様が結構な数僕の傍にいてくれるから、放っておいても良いかなって気はしている。

 これで教会が女神様を使って何かを企てているのならぶっ殺してでも止める気だったが、今のところそういう動きはなさそうだし、やはり近づかないに限るだろう。



 そして僕はベルギンド様に目をやる。



「ソフィアはまるで恋する乙女のような顔で敵を消し飛ばしましたね」



「それは同居しないと思うよリョカちゃん」



「戦力差が圧倒的でしたね。テルネちゃんもしかしてソフィアにご褒美でも用意しましたか?」



「え? いえそんなことは――あっ、そう言えばリョカさん、もしよかったらさっきアンデルセンと話していた知識をソフィアとも共有していただけないですか?」



「あっそれかぁ。やっと恋心でも自覚したのかと――」



「ソフィアがですか、一体だれと」



「あっヤッベ、藪蛇だった」



 ベルギンド様がジッと僕を見つめてくるからその視線を躱しつつ、テルネちゃんに頭を差し出す。



「どうぞどうぞ持って行ってくださいな。機械関係の本は頭に叩き込んでいたので、それなりの知識は持っていますよ。あとそう言う類の小説――SF小説も読んでいたのでそちらもぜひ」



 テルネちゃんの顔がパッと明るくなった。この子もこの子で知識が増えることが本当に嬉しいらしい。



「ありがとうございます。アヤメからはそういう関係は特殊な技術がいると聞いていたのですが、そういうお仕事を?」



「いえ、それは実家が。あ~……まあ色々手を出していたので、それで」



 ヤなこと思い出したなと顔を引きつらせていると、テルネちゃんが申し訳なさそうにしており、首を横に振る。



「今幸せなのでどんどん使ってくださいな――」



 テルネちゃんに笑みを返すと同時に、僕はルナちゃんフィムちゃん、テルネちゃんを抱き寄せ、陛下とベルギンド様に盾を張る。

 その瞬間、幾つもの衝撃が僕たちの傍を駆け抜け、大地に切り傷を刻む。



 僕はそれを睨みつけると、そこには一本の長い剣を手に男が嗤っていた。

 目を濁らせ、僕は戦闘の体勢をとるのだった。

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