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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
34章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都防衛戦線。
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魔王ちゃんと戦場でのんびり会話

「思ってたんと違う!」



「ジンギ強いな。セブンスターがあれほどの力を持つか」



「いやはや、ランファもですがジンギも大きくなりましたね。私やレッヘンバッハの力など必要なくなる日も近いのではないでしょうか」



「ベルギンド、色眼鏡がかかっていますよ。ジンギはもう少し自信を持つこと、ランファは特に、もう少し素直になることを覚えさせた方がいいですよ」



 ベルギンド様にテルネちゃんが言うけれど、あのくらいなら愛嬌だろう。2人とも立派だし、ちゃんと約束通り仲直りしてくれた。



 僕は地上で、魔剣から飛んでくる映像を遠足気分で陛下とベルギンド様、ルナちゃんフィムちゃん、テルネちゃんと視ていた。



 しかしジンギくん、僕の想定では昭和のライダーさんのように殴り合いが主な戦い方になると考えていたけれど、やっていることは平成のなんかやたらめったらピカピカ色とりどりと光る世代と同じような……まあ強くなっているみたいだし、僕が言うことはなにもないかな。



「ヴィヴィラったら、なんだかんだ言ってヒナリアと同じ世代なのですよね」



「というと?」



「わたくしたち女神は世代ごとに特性というか、教育方針というか、わかりやすい性格があるのですよ。わたくしやテルネ、ルーファなどはとにかく人の世に安寧をもたらす責任を――前の世代がちゃらんぽらんだったので」



「前の世代……アヤメちゃんとクオンさん、それにラムダ様世代か」



「はい、この世代は特にやりたい放題していた世代なので、次のわたくしたちがとにかく真面目に、そして厳格に。と、教育されていました。まあこの方針を決めたのもアヤメたちの世代なのですが」



「それで次がピヨちゃんとヴィヴィラ様、それとガイルのところの太陽神様もですよね」



「はい、この世代は真面目にやり過ぎて人の心がわからないと言われてしまったわたくしたちと正反対――つまり人を学び、人に寄り添い、そして人と共に生きることを。まあ実行していたのはヒナリアだけでしたが……いえ、実行というか、それをさらに曲解して捉えたのがヒナリアですが」



 ルナちゃんもテルネちゃんも人の心がわからないと言われていたのか、そう考えると今は本当に可愛さを重視してくれていて大変結構です。



「まあつまり、この世代は人に寄り添うことばかり考えさせていたので、基本的にチョロ――惚れっぽいところがありますね」



「あ~……ヴィヴィラ様、ジンギくんに相棒って呼ばれると、顔真っ赤にしているんじゃないかってくらい狼狽えますからね」



「……ヴィヴィラ姉さま、あんな感じになるのなら、私を怖がらせる必要なかったんじゃ?」



「襲われたって言っていましたもんね。というかなんで襲ったんだあの子? いつまでも隠れていたかったのかな」



「ヴィヴィラはよくわかりませんから。とはいえジンギの前では大人しくしているみたいですし、話はあとで聞きましょう」



「あのままいい子で過ごしてくれればいいのですけれど」



 ルナちゃんが安堵の息を吐いている辺り、アリシアちゃんと同じで本当に手に負えない系の女神様だったのだろう。

 手に負えないと言えばジンギくんのあの鎧だ。



「それよりもジンギくんのあの鎧、女神特権と同じだとラムダ様が話していましたけれど、そんなこと出来るんですか?」



「う~ん、前例はありませんね。そもそもあれどうやって装備しているのでしょうか。テルネわかります?」



「わかるわけないでしょう。ジンギが見たことも聞いたこともない金属で武装し、挙句の果てに女神を取り付けてその力を扱う。リョカさんとミーシャさん以来の頭の痛くなる案件ですよ」



「なんかすみません」



「でも不思議、多分ヴィヴィラ姉さまがジンギお兄様の鎧ありきの体を女神の体として使用しているっぽいんですけれど、何でそれをお兄様が使用できるのかがよくわからないです――」



「愛なのです!」



「うわっピヨちゃんいつからいたの!」



 気配が全く感じなかったぞこの子。

 ピヨちゃん――神鳥のヒナリア様もヒナリア様で不思議な女神様だ。なんかふわふわしているというか、存在が確定されていないというか、学園にいる時は散々な目に遭っていたけれど、これでも女神様なんだよな。



「ヒナリア、それでどうしてここに?」



「う~ん、ヴィーラが面倒なことしているみたいなので見に来たですが、ジンギさんがいるなら大丈夫そうです」



「ありゃ、ピヨちゃん結構妹さん想い?」



「そりゃあルナ姉やアリシアみたいに血の繋がった姉妹ではないですけれど、少なくともヒナはヴィーラよりお姉さんとして育てられたですし、アヤメ姉が言っていたですから」



「なんて?」



「一番お姉さんのヒナがあの阿呆世代を信じてあげれば、そこが戻ってくる場所になるって」



 胸を張るピヨちゃんを僕はゆっくりと撫でる。

 相変わらず神獣様は良いことを言う。でも阿呆世代は言い過ぎだと思う。



「……」



 フィムちゃんが感心したように映像に映るアヤメちゃんを見た後、チラとルナちゃんに一瞬目をやった。



「……フィリアム、わたくしを見るのは止めてください。心が――」



「他の世代のことはわからないですけど、ヒナはヒナがいるこの世代をそれなりに大事にしてるですよ。ああそれとあんまり好き勝手するとメル姉(・・・)に殺されるですから」



「メル姉?」



「終末神メルフォース、氷と終わりを司るアヤメ姉に並ぶ最強の古い女神ですよぅ。ヒナたちの教育係だったです」



 そんな女神様がいるのか。何とも物騒な女神様だけれど、それに並ぶアヤメちゃんとは一体。



「魔王を選定するのもメル姉だったりするですよ」



「え、諸悪の根源?」



「必要なことですから。魔王という檻がなければ女神が管理できないですし」



 なるほど。これも人の営みを円滑に進めるための女神様システムか。いつかお話が聞けたのなら、どういう世界を目指しているのか聞いてみたいな。



「まったく、フィリアムはもう――うん? ヒナリアは何の話をしているのですか?」



「メル姉の話ですよ」



「――っ」



 すると呆けていたルナちゃんと、彼女の背中を撫でて話を聞いていなかったテルネちゃんが噴き出した。一体何だというのか。



「よ、余計なことは話していませんよね?」



「余計なことって何です?」



「……ルナ、ヒナリアはそれを知りませんよ」



 ピヨちゃんとフィムちゃんが首を傾げていると、ルナちゃんの視線が僕に注がれた。



「あ~その、リョカさんはそれを聞いてどう思いましたか?」



「どうって、いつかお会いしたいなって」



「……そうですか。そうですね、いつか会わなければですよね」



 ルナちゃんがどこか覚悟を決めたように息を吐いているのが気になったが、ピヨちゃんが翼をなびかせたのが横目に映った。



「それじゃあヒナはそろそろ行くです。だんな様を置いてきちゃったので今頃寂しがっているはずです。それじゃあリョカさん、ヴィーラのこと良かったらよろしくしておいてです」



「あ~うん、可愛い子オーラを感じたから喜んでよろしくするよ」



「ヴィーラは結構泣き虫だから、この間ヒナにやったみたいに服剥いだら駄目ですよ」



「おけまる」



 釘を刺されてしまったか。

 まあこの欲望は学園に帰ったらピヨちゃんで発散しようと、彼女に手を振るとそのまま飛んでいってしまった。



 しっかしこんなに暇になるんだったら焼き菓子でも作ってくればよかったな。と、僕がリラックスしていると、あちこちから戦闘圧が上がり、やっと地上の面々も動き出したかと、女神様と陛下たちを背に僕もボルテージを上げていくのだった。

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