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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
34章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都防衛戦線。
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魔王ちゃんとえ~し~

「……あの、本当に大丈夫ですか?」



「大丈夫大丈夫、設計図そのままに組み立てていたら体の中身ぶちまけて四散するところだったけれど、ちゃんと僕が手を加えたから」



 僕は出来上がったVOB――改め、プラネテスエクシードブースト、大地神の加護を織り込み、ある程度の衝撃には耐えられるようにした片道切符の超大型の外部ブースターに目を向ける。

 アンデルセンのおっさんから提供された高出力のエンジンにラムダ様が加護を加えたもの。

 本家大本と違うのは、機体に取り付けるのではなく、生身に取り付けるということだけれど、まあそれなりの安全は保障されている。



 けれどやはり不安なのか、ランファちゃんは乗り気ではないような、顔を引きつらせている。

 逆にアヤメちゃんとロイさんは目を輝かせていた。ロイさんも男の子なんだなぁ。そして陛下も乗りたそうにしており、ミリオンテンスさんが頭引っ叩いて止めていた。



 ここまでは来られた。あとは突入なんだけれど……僕は抱っこしている、未だに無王からの言葉に顔を伏せているルナちゃんを揺らしてあやしながら、体を震わせているテルネちゃんを空いた手で撫でつつ、この場にいるみんなに目をやった。



「さて、あの飛行要塞――無価値の破壊者(バルバトロス)への切符は手に入れた。けれどこれも完全じゃない。作戦の成功率を上げようとバルバトロスの武装について製作者に聞いたんだけれど、どれだけ前の作品だと思っている、忘れた。などとアホみたいなことを抜かしやがったから、それに関してはまったく情報がない。だから最初に伝えた通り僕は地上に残って街を守る。ミーシャたちにはバルバトロスに突っ込んでもらいたいんだけれど」



 僕は思案する。

 ああして無王アンデルセン=クリストファーと設計図を囲んで議論したけれど、あのおっさん、変態の国のド変態だ。

 一緒に技術についてあれこれ喋ったからあれがどれだけ異常かわかる。そんなド変態が作った空飛ぶ要塞、どんな兵器が取り付けられているのかわかったもんじゃない。



 危険があるのはやはりミーシャたちだ、彼女らをこのまま向かわせていいものか……。



「あいたぁ!」



 そんなことを考えていると、突然ミーシャに頭を引っ叩かれた。

 言わんとしていることはわかるけれど、せめて根拠とか、僕の心配を晴らすようなことを言ってから殴ってくれないだろうか。



「リョカ、あたしはあいつらをぶん殴りたいのよ」



「……そうだね、わかってる」



「あたしが殴るって言ったら殴るの、だから必ず辿り着く。いいわね」



「根拠がそれだもんなぁ」



 僕はため息をつくと、拳を前に出してきた幼馴染、その聖女の拳に僕の拳を当てる。



「見てわかる通り完全に制空権は取られた。しかも出てきてからずっと上昇しているから距離もある。高所からの攻撃って言うのはひどく厄介なんだ――それでも、ミーシャなら大丈夫か」



「ええ、任せなさい」



「ああそうだ、ロイさん……は乗りたそうですね。セルネくんとランファちゃん、もし無理なら――」



「何言ってるのさ、ミーシャが行くんなら俺もいくよ。うちの聖女様はリョカがいないと誰からも守ってもらえないんだから」



「わたくしも、イシュルミを止める義務がありますわ。それに今さらリョカさんたちを疑いわしませんわ。きっとあそこに辿り着けるのでしょう」



 僕はルナちゃんを下ろして2人を抱きしめると、そのまま頭を撫でてやる。

 するとルナちゃんがアヤメちゃんとラムダ様の手を取りに行った。



「2人ならそれほど心配しなくても大丈夫だと思いますが……」



「うん、任せてよ。うちの信徒もいるし何よりもこれほどの精鋭、女神的にも失いたくはない。アヤメも仮にも女神だからね、きっといい結果を――」



「うぉぉぉっ! これもう浪漫の塊だろ! こじま、こじまは!」



「こじまはないです。あんなエネルギー、実現できても使えるか」



 興奮気味のアヤメちゃんを、女神さま一同呆れたような顔で見ていた。



「……本当に大丈夫ですか?」



「あ~うん、まあサラッと解決してくるよ。ルナとテルネ、フィムはリョカちゃんたちのこと、任せたよ」



「はいっ、リョカお姉さまもみんなみんな無事でいられるように精一杯努めます」



「今回は人の身に余ることですからね。私もそれなりに力を貸しますよ」



「テルネは向こうで本でも読んでいていいんですよ。わたくしが解決しますから」



 女神さまたちが可愛らしく胸を張っている。写真を取らなければ――と、そこで僕は思い出し、ロイさんにカメラを1つ渡す。



「ああそうだロイさん、多分大丈夫だと思いますが、正直無王があんな簡単に手を貸すのが未だに納得できないので、中の写真を頼んで良いですか? もしかしたら見られたくないものがあるのかなって」



「なるほど、確かにそれはあり得ますね。わかりました、任せてください」



「でも優先は破壊なんで、無理して撮ろうとしないでくださいね。それでロイさんに怪我でもさせたらエレノーラに怒られちゃいますから」



「ええ、弁えております」



 微笑むロイさんに僕も笑みを返すと、神鳥様ほどの喧しさの神獣様が相変わらず興奮気味に声を上げていた。



「プライマル、プライマルからのアサルト!」



「だあもう! 今度再現してみますから興奮抑えてください!」



「アヤメ五月蠅い」



「ぐえぇぇっ!」



 ミーシャに頭ぶん殴られ、アヤメちゃんがやっと静かになったことで、全員がPED.(プラテネスエクシードブースト)を取り付ける。



 簡単な操作方は教えたからあとはぶっつけ本番だ。

 片道切符ではあるけれど、武装が無力化されたのならリア・ファルで回収可能だし、あとのことは後で考えよう。



「ありゃ、ラムダ様は結局ロイさんにおぶって貰うんですか?」



「うん、普通に怖いからね」



「ですよね。それじゃあみんな、気を付けてね」



 全員が頷いたのを確認し、僕は外部に取り付けられているスイッチ――つまりPEDを起動させるためのスイッチに指をかける。



「終わったらみんなにたくさんお菓子と料理をごちそうするから、無事に帰ってくるんだよ――それじゃあ、イグニッション!」




 ブースターが火を噴き、そのままミーシャたちを空に運び、別のスイッチを押すことでさらに強力なブースターが作動、まるでジェットコースターのようにトップスピードで空へと射出された。



 無王の技術にも驚きつつ、空のことはあっちに任せるとして、僕は呆けた顔をしている面々に目をやり、声を上げる。



「これで準備は整った。僕たちは街を、王都を、故郷を守るよ!」



 国王も騎士も、国に仕える者も、僕の言葉に力強く頷き、そして迫りくるマネキンの軍隊に備えるのだった。

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