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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
33章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都に這い寄るあれこれ。

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聖女ちゃんと這い寄る暗雲

「ジンギぃ~」



 セルネがジンギの下に早足で歩んでいき、そのまま彼のお腹に顔を埋めた。

 あの小動物勇者、日を追うごとに体の接触が多くなっている気がする。ただ女の子はリョカだけな辺り、誰にそういうことをして良いかはしっかりと判断出来ているようだけれど。



「ジンギぃ、俺だけじゃあの2人止まらないんだよ~」



「……セルネ、お前はなんつうか、俺が思っていた方向性と随分違えたな」



「どういう意味ぃ?」



 ジンギがセルネの頭をポンポンとはたくのだけれど、一瞬カリンに鋭い眼を向けた。



「何を警戒しているのかはわからないけれど、こいつはポンコツよ」



「え~ミーシャさん酷い~」



「……まっ、お前が言うならそうなんだろうな。で、こんなとこで何してんだ?」



「ちょっと厄介ごとがね」



「またなのか、お前らはどうしてそう……というかセルネさっきなんて言った? 2人が止まらない?」



「ミーシャもソフィアもやりたい放題なんだよ」



「ソフィアお前……」



「あの、どうして皆さん、私が何かするとそんな切なそうな顔をするんですか?」



 珍しくソフィアが頬を膨らませており、リョカが見たら抱き着きに行きそうだ。まああの子の言い分もわかるけれど、周りの奴はあたしたちにそうあるべきだと押し付けているだけだから気にしなくても良い。あたしもそうしている。



「お前までそっち側に回ったら誰がそこの聖女を止めるんだよ」



「あたしが止まるわけないでしょ」



「ちょうどいいところで止まれって言ってんだよ」



「ですがミーシャさんが進んだ道にこそ活路が見いだせることも――」



「おい脳筋メガネ」



「脳筋メガネ!」



 ソフィアがジンギの腹をバシバシと殴り始めたのを横目にあたしはため息をつき、ジンギに引っ付いていたエレノーラを撫でる。



「エレも良く来たわね。そういえば先にロイが来ていたけれど、昨夜はどうしていたの?」



「アルマリアお姉ちゃんとジンギお兄ちゃんが一緒にいてくれましたぁ。楽しかったです」



「そう、良かったわね。今ロイはリョカと一緒に遺跡に潜っているみたいだから、あたしたちと一緒にいなさい」



「は~い。ところで」



 エレノーラが一度カリンに目をやったけれど、それよりもカンドルクのおっさんが気になるのか、彼を見て首を傾げた。



「おじさんはぁ――」



 するとソフィアに殴られていたジンギが驚いた顔で口を開いた。



「カンドルクのおっさんじゃん」



「やっ、ジンギくん、忘れられたのかと思ったよ」



「知り合いだったの?」



「そりゃあ王都にいりゃあカンドルクのことを知ってて当然だろ。見回り兵のカンドルク、この王都でこのおっさん以上に歩き回っている人はいない。で有名のカンドルクだ。俺はこっちに住んでいた時、しょっちゅう買い物に付き合ってもらってたからな」



「え、もっと他の評価は」



「美味い飯屋を知ってる」



「兵士として! というかジンギくん随分雰囲気変わったね。もっとこう、イキリ散らして――」



「止めろ、止めろ」



 ジンギがエレノーラの耳を両手で塞ぎ、そのまま体を震わせてそっぽを向いた。あの頃はあの頃でからかい甲斐があって楽しかったけれど、セルネもジンギもランファも、入学当初の話を極度に嫌うのよね。



 学園と同じ空気感になったところで、カリンがカンドルクをみていた。こいつはさっきから人を見てばかりだけれど、そんなにギルドの人員を増やしたいのだろうか。



「普通の兵士、さんなんですね~。あたし的にはギルドで活躍してくれる人だったら何でもいいんですけれど~」



「あんたそんなにギルドのために働く奴だったかしら?」



「――はい! あたしがギルド大好きなの知っているでしょ~」



「……そう言えばそうだった気がするわ」



 するとカリンはギルドの方に体を向けた。やっと仕事に戻る気になったのかしらね。



「それじゃああたしはそろそろ仕事に戻りますね~」



「ええ、それじゃあまた」



 カリンがあたしたちに背を向けて歩みだすのだけれど、ジンギに抱き寄せられているエレノーラが彼女の背に声をかけた。



「お姉さんの魂、何か変わっていますよね? エレの知り合いに似ている気がするんだけれど、誰だったかなぁ」



「魂?」



「うんぅ、え~っと、その、こう、戦う人で、前に出て、炎バチバチで……誰だっけ」



「ガイル?」



「ううん、もっと可愛くて……駄目だ、思い出せ――むぐっ」



「……すまんすまん、長旅で疲れてんだわ。この子はまだ幼いから、あんまり気にしないでくれや」



「……はい~、あたしはただのギルドの受付員ですからぁ、似たような顔を見ただけですよぅ」



 カリンの視線が一度だけエレノーラに向けられたけれど、すぐにギルドに歩いて行ってしまった。

 あたしもアヤメも、セルネもソフィアもテルネも首を傾げるのだけれど、ジンギは何も言わず、ギルドを見上げていた。




「――で、お前ら今どんな厄介ごとを抱えているんだ?」



 リョカがいた方が楽だけれど、とりあえずエレとジンギにも今の状況を話ておきましょう。

 するとセルネが食事でもしながらと提案したために、あたしたちはカンドルクのおっさんの案内で飲食店に向かうのだった。

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