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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
33章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都に這い寄るあれこれ。

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魔王ちゃんと三強の集い

「さて、それじゃあ少し纏めましょう。今この王都には無王と呼ばれる魔王の置き土産がある」



「しかもそれを女神が一切把握できていません」



 陛下に謁見する広間にて、僕とルナちゃん、ランファちゃんとフィムちゃん、ミリオンテンスさんと陛下に呼ばれたレッヘンバッハのおじさん、それにソフィアとテルネちゃん、お母様とベルギンド様とラスター様がおり、今しがた僕たちが得た情報を共有していた。



「無王ですか、まさかまたあのアンデルセン=クリストファーの名前を聞くことになるとは」



「テルネ様、その方はそれほどの魔王なのですか?」



「リョカさんよりも悪質で厄介なものを作り出すと言えば、ソフィアも危機感を持てますか?」



「……なるほど」



 それで納得できちゃうんだと僕が肩を竦めるのだけれど、正直厄介なのはそれだけではない。



「ねえルナちゃん、この辺りの亜空間に干渉って出来る?」



「いえ、ここにいる女神では……アヤメが察知できるくらいですね」



「そっか」



 僕が顔を歪めると、陛下とテルネちゃんが目を向けてきた。

 多分だけれど、この王都――王宮はその昔にとうに利用されている。



「その、これは推測でしかないんですけれど、王宮はとっくにその無王によって遺跡に組み込まれている」



「え……はい?」



「さっき見た大きなヒト型ありますよね? 僕たちが遺跡に入った時、あんな感じのヒト型は敵だったんですよ。でもあの空間に入った時、あれは動き出さなかった。正規の入り方じゃなかったからだ」



「わたくしもそう思います。そもそもアンデルセンはあの手の人形を兵士として使っていた。兵器にはなりえないです」



「嫌がらせのために作った可能性もある。でもある勢力の介入によってその線は薄いと思う」



 僕の発言に女神さまたちが首を傾げた。

 多分関わっている勢力についてまるで見当がついていない。



 そして僕はランファちゃんをジッと見つめる。



「ランファちゃん、今からすっごい酷な質問をする。答えたくないなら答えなくていい。でも、とても大事なこと」



「……大丈夫ですわ。あなたがわたくしを傷つけようとするなんてあり得ませんもの」



「ありがとう。それで――うん?」



 ランファちゃんにそれを尋ねようとしたとき、ふいに嫌な予感がし、僕は顔を引きつらせる。



「どうしましたの――あら、これは。ミリオ、こっちに来なさい」



「あ~……テルネ様、お父様、こちらへ」



「陛下とラスター様はお母様の傍に。ルナちゃん、フィムちゃんはこっち」



「あれぇリョカちゃん、レッヘンバッハのおじさんは?」



「はっはは」



 僕がおじさんに笑みを向けると同時に、宙に向かって指を鳴らし『月に身捧ぐ絶対守護(カノンルーナアイギス)』を生成、あちこちに盾を作り出すと、その嵐にも似た戦闘圧が空高くから一直線に落ちてきた。



「何だこの圧っ! 陛下、何かヤバいが逃げ――」



「もう遅いですわ。それにまあ、害はないですわ」



 僕とソフィア、ランファちゃんがため息を漏らすと、上空からまるで竜のようなそれが王宮を貫き降ってきた。

 竜の形をした圧倒的なエネルギーは王宮を破壊しながら地面に向かっていき、そのエネルギーを滑るようにして我らが聖女が、背に神獣を抱えて降り立った。



「リョカ」



「普通は処刑されっからな」



 僕はミーシャの頭をはたくと、頭を抱えて続けて降ってきたラムダ様を抱えたロイさんと、ロイクマさんに抱えられているセルネくんと知らないおじさんに目をやった。



「な、な……」



「ほらミーシャ、陛下に謝って」



「イヤよ」



「中々面白い登場ですね。ミーシャ、今度真似させてもらいます」



「お母様止めて、陛下がストレスで死んじゃう」



 そして僕は敢えて移動させなかったレッヘンバッハのおじさんに目をやった。

 おじさんは大分すれすれの場所でミーシャの竜王を受けており、白目向いて大口を開けて呆然としていた。



「……おいランファ、なんだあれ?」



「さっき見たでしょう? あれが我が国の聖女ですわ」



「グリムガントの聖女、間近で受けるとヤバいなアレ」



「あッ?」



 自分のことを話しているのが聞こえたからか、ミーシャがミリオンテンスさんに圧を放った。

 その圧に、現騎士団長がすぐに剣に手を伸ばしたが、アルフォースさんにやっていたように手に重さを加えられ、剣が抜けなくなっていた。

 そんな彼にミーシャが飛び掛かる。



 しかしミリオンテンスさんを庇うように盾の逸話の影――拳と盾の衝撃はさらに王宮を破壊し、その衝撃の中心で、ケダモノと物語を紡ぐ者が嗤う。



「あらソフィア、この間の続きでもする?」



「とても魅力的な提案ですが、私にとってこの場所は枷が多すぎます」



「案外何とかなる物よ。それに腕の一本や二本、なくなったとしてもたかが知れているわ」



 ミーシャとソフィアの間に嫌に緊張感のある空気が流れている。

 何だかソフィアも大分力があることを自覚してきているな。いや、これさては何かあったな? テルネちゃんにでも褒められたのだろうか。

 僕はため息をつくと、その場で胡坐をかき、膝に肘を乗せて頬杖をつき、濁った瞳で世界を夜に変えた。



「話し合いの席なんだけれど?」



「拳で?」



「物語でですか?」



「……王の言葉(・・・・)で」



 バチバチと3人で戦闘圧を鳴らしていると、陛下が白目をむいてあわあわしだし、ルナちゃんは胸を張り、アヤメちゃんは勝気な顔を浮かべ、テルネちゃんは頭を抱えていた。



 しかしそんな月神様と神獣様の頭を豊穣神様が軽くはたくと同時に、僕たちの傍に血の棘。



「そこまで」



「――っ!」



「……」



「きゃっ」



 ぴしゃりと放たれた鋭い血冠魔王の一声。本当に一瞬で現れた大地の力で作られた棘。そしていつの間に背後に回ったのか、僕とミーシャの首筋にひやりとした感触とお母様が出したであろう氷の剣。



「あらいいわね3人とも。あたしとロイ、2人であなたたちの相手してあげましょうか? そんなに元気が有り余っているのなら、年寄りの相手も簡単でしょう?」



「……遠慮しま~す」



「むぅ」



「あぅ、少し空気に酔い過ぎました。申し訳ありません」



 僕としたことが、はしゃぎ過ぎたか。

 でもあの2人を止めるには並大抵の脅しじゃ効かないんだよなぁ。

 と、僕が思案しているとパパ魔王様が、僕たちを止めようとしていたセルネくんとランファちゃんの頭を撫でたのが見えた。



「お2人もありがとうございます。すぐに動ける姿勢が取れていて大変立派でしたよ。あの3人に勝てる勝てないは別にして、しっかりと止めようとする意志を持ったのは優れた勇者である証だと思います」



「ロイさんめっちゃ褒めてくれるぅ」



「うちの勇者先生にも見習ってほしいですわ」



 こんなところで株が下がるガイルぇ。



 そして僕は頬を2、3回自分で叩くと、集まった面々に目をやる。

 しかし1人泡拭いてぶっ倒れており、僕はセルネくんに視線を投げる。



「あっ、カンドルクさんちょっと下げておくね」



 一体だれなのだろうか。

 まあ今気にしてもしょうがないと陛下に頭を下げる。



「不躾な訪問、そちらの聖女様に代わり謝罪します」



「……あ~うん、ところでリョカちゃん、君ら本当に敵にならないよね? レッヘンバッハ、ベルギンド、しっかりと娘を見ておくように。リーンもな!」



 そうして、僕たちは改めて今回の事件について話し出すのだった。

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