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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
32章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、それぞれ王都の真相に近づく。

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魔王ちゃんと違和感を引き連れて

「……死ぬかと思った」



「お前もう良い歳だろう? ランファと同い年の子を口説くとか、どう考えても悪いのはミリオだろう」



「いやいや陛下、良い女が目の前にいるのに、口説かない方が失礼でしょう」



 ニッと笑うミリオンテンスさんに僕は苦笑いを返し、くっ付いてきているルナちゃんフィムちゃん、ランファちゃんを撫でてやる。



 しかしこの騎士団長、結構ノリが軽いな。

 さっきまでは普通に騎士団長らしくしていたけれど、僕が敵じゃないとわかるや否や速攻で化けの皮を脱ぎ散らかしたな。



「すみませんリョカさん、昔からこうでして浮名が流れ回っている男でして、近づかない方がいいですわよ」



「ひどいこと言うなお前は。ああだが心配するな、お前は口説かんよ。そもそもお前はファル姉と同じで乳がねぇ――あっぶね!」



「次口を開いたらその体に風穴あけますわよ」



 舌打ちをするミリオンテンスさんの頭を陛下がはたき、聖剣をぶん回しているランファちゃんを僕が撫でる。

 このままだと一切話が進まなさそうだな。

 僕は手を叩き、騎士団に体を向けた。



「それじゃあ騎士団の皆さん、ジブリッド商会……商人のことを守ってやってくださいね。ああそれと、これは僕の独り言ですが、ジブリッドはそれなりに戦えますから、まあ無視しても正直大丈夫です」



「それ言っちゃうんですわね」



「まあ一応ね。当日は僕もロイさんも警備に回りますけれど、やっぱり人手はあるに越したことはないからね」



「うん? リョカちゃんも警護してくれるのかい?」



「え?」



 僕は絶慈を使用し、さらに現闇からいくつもの命ある闇の塊を眼前に並べる。



「……君本当に1人で街を蹂躙できてしまう系の魔王なんだね」



「ソフィアも出来ますよ」



「聞きたくなかった」



「……ミーシャさんもですわね」



「え、今名前挙がったのってカルタスとグリムガント? そんな強いのか? それにソフィアとは何度か会ったことがあるが、そんなに強いとは――」



「鍵師ではあり得なかった二重召喚に至り、千を超える魔獣を操り、さらには太古の英雄、勇者など物語の主役を召喚しつつ、察知できない即興劇で相手を縛る化け物ですわよ」



「ソフィア傷つくから本人の前では言わないようにね」



 陛下と騎士団長殿が口をあんぐりとしているのだが、それにとどめを刺すように、ルナちゃんが2人の手を握り、そっと記録を流しているのがわかる。



「な~にこれぇ」



「……うちの騎士団より錬度高くね?」



「そして我が国待望の聖女様は、拳1つで世界を割り、未だかつて見たことのないほど戦闘に特化している聖女ですわよ」



「それ聖女の説明になりえないからな!」



 ルナちゃんが微笑み、さらにミーシャの戦闘記録を流した。



「……これを聖女のスキルでやっているのかあの子。アルフォースを追い詰めるとか、どんだけ戦闘に特化しているんだ」



「グリムガント怖すぎだろ。え、俺勝てるかな」



「あっ、ミーシャはアルフォースさんとの再戦に燃えているので、同じく剣を使うミリオンテンスさんは顔を出さない方がいいです。剣術に長けているのね、顔面殴らせなさいって言うと思うので」



「獰猛すぎるだろ! 獣でももっと行儀良いぞ」



「女神一同、ミーシャさんをケダモノと竜の聖女と呼んでいますので」



「それは聖女の評価ではないのでは? いや待て待て、グリムガントがこれほどの力をつけるのはマズい。本格的にレッヘンバッハが国乗っ取りに来る」



「あの人クビにしたらどうです?」



「それが出来る段階はとうに過ぎているんだよリョカちゃん。今あいつを辞めさせたりなんてしたら、それこそ乗っ取られる。俺なんかよりある人との繋がり、どんな場面でも引かない胆力に、機転の利く頭、唯一足りなかった武力がこれで揃ってしまったわけか」



 陛下が頭を抱えているけれど、あのおじさん一体どんなやりとりでここまで陛下を追い詰めているんだろうか。

 とはいえまあ心配はないだろう。



「それは大丈夫ですわ陛下、ミーシャさんは多分レッヘンバッハ様よりリョカさんを取りますから」



「……それはそれで心配だけれど、ジブリッドの方がリョカちゃんもジークもいるし、本当にマシなんだよなぁ」



「おじさんがなにかしたとしても、ミーシャなら親父の顔面へこませられる! って喜んで殴りに行くと思うので大丈夫です――」



「いやどんだけ顔面殴りたいんだよグリムガントの聖女!」



 僕とルナちゃん、ランファちゃんとフィムちゃんで顔を見合わせ、首を傾げてミーシャだからねぇ。と、納得する。



 呆れる陛下とミリオンテンスさんをよそに、僕は少し絶界を広げている。

 さっき感覚に引っかかったものが気になったからだ。



「リョカお姉さま、なにしているですか?」



「う~ん? いやさ、さっきなんか妙な感覚がして……いや、陛下に聞くべきか」



「何の話?」



「いや、何か王宮に隠していますよね? 亜空間に」



「いや知らないけど。というか亜空間とは?」



 僕は首を傾げ、亜空間――つまり、空間に別の空間を潜ませることで、不可視の別空間が出来ることを説明し、それが王宮にあることを陛下に教えると、そのまま辺りを見渡す。



「あっちの方に」



「ごめんリョカちゃん、ちょっと案内してくれる?」



 そうして、僕たちは違和感を追いかけていくのだった。

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