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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
32章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、それぞれ王都の真相に近づく。

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魔王ちゃんと生誕祭での役割任命

「ミリオ、少しは頭が冷えたか?」



「……ええ、情けない姿をさらして申し訳ありませんでした」



「それは構わないんだがな、ランファだってちゃんと考えて、考え抜いたうえで強くなっている。いつまでも大人が縛るものでもないだろう」



「わかっちゃいるんですがね」



「さっき使ったのもグエングリッターの星神様、その女神様から与えられた加護、ランファは極星としても優秀なようだぞ」



「極星……なんだってそんなことに」



 ミリオンテンスさんがひどく呆れたようにため息をついているのだけれど、そんな彼にフィムちゃんがトテトテと近づき、彼の手を握った。



「あ? というかなんで子どもまで――」



「ランファは私自ら見初めたのです。とてもきれいな星の瞬き、歴代でも類を見ない才能の持ち主です。その才能に見合うようにランファは努力もしています。それを否定されちゃうと困っちゃいます」



 プンプンと頬を膨らませて言う星神様に、ミリオンテンスさんは一瞬動きを止め、陛下に目をやった後、ルナちゃんにも目を向け、顔をひきつらせた。



「……は?」



「わかる、俺も驚いた」



 まあ説明もめんどいので、僕は手を叩き、さっき陛下にも見せた企画書をミリオンテンスさんに見せた。

 一応生誕祭について僕も調べたのだけれど、その際に騎士団をどう動かすかについて毎回もめるらしく、その一手として僕は1つ提案をした。

 そもそもラスター=ルーデルさんが担当している街の治安とその配属される兵士と騎士団では管轄が違う。

 騎士団は陛下直属ではあるけれど独自で権力を持っており、騎士団を動かせるのは陛下と騎士団長であるミリオンテンスさんだけだ。



 だからこそ街の治安を請け負うはずのラスターさんと衝突するらしい。

 本当は一緒くたにしてくれる方が手っ取り早いんだけれど、それも出来ないらしく、それなら片方を僕が……ジブリッドが借りるという体にすればそれなりに動ける。



「これは、生誕祭の俺たちの立ち位置か?」



「ええ、毎回ルーデル様と揉めると聞きましたので、それなら先にこういう提案をしておけば揉めることもなく始められるでしょう」



「……一応言っておくが、俺たちは騎士だぞ」



「それならこっちも言っておきますけれど、ジブリッドの店員(・・・・・・・・)ですよ?」



 ミリオンテンスさんが思案顔を浮かべると、何人かの騎士を呼びつけ、僕の企画書に目を通しあれこれと話し合っていた。



「いや助かるよリョカちゃん、正直どちらもそれなりに()を保たなければならないからね、どっちかの言い分をはいそうですか。とは受けられない。でもそれで時間を取られては進められるものも進められない」



「収まるところに収まっておけば衝突もないですからね。例え結果として揉める(・・・・・・・・)ことになったとしても、それは後回しの問題ですからね」



「そうなんだよね~、別にラスターもミリオも、兵士だろうが騎士だろうが好きなように街を守っても良いと思っているんだけれど、それに納得しない奴もいるからね。もしろリョカちゃんの提案でジブリッドを引き入れられると勘違いして喜ぶ奴まで出そうだ」



「派閥とか本当に面倒臭いですよね。僕は早々に見切りをつけちゃいましたよ」



 陛下が苦笑いを浮かべるけれど、こればかりは正直関わり合いになりたくはない。

 そして企画書を見ていたミリオンテンスさんが僕たちに向き直った。



「それじゃあ俺たち騎士団は、ジブリッドが出す出店の警護を引き受ければいいんだな?」



「ええ、ジブリッドもただの商人ですから、怖いお客さんがいらっしゃった時の対応をお願いしたいんですよ~」



「ジブリッドの出店はどれほど出すんだ?」



「そりゃあもうたくさん。ああみなさんにはジブリッドの出店を行き来してもらいたいので、出来れば2人組で行動して、街を歩きながらうちの店員たちを守ってもらいたいです」



「……それはジブリッドの店員に危険が及んだ時だけ戦えばいいのか?」



「そりゃあもう、どこかでひったくりが起きたとか、どこかの店で暴漢が出たとか、そんな人がいるお祭りでか弱い僕たちジブリッドはまともに商売できなくなっちゃいますよ」



「……ジブリッドは本当に厄介だね」



 僕はミリオンテンスさんに笑みを向ける。

 ようは理由と役割さえあればいい。



 ラスターさんの兵士たちには街の治安、騎士団にはジブリッドなどの外部の商人を護衛。それならなんの引っかかりもなく兵士も騎士も生誕祭の時に表に出せる。



「さっきの問いに答えていなかったな」



「ん~?」



「リーンと君率いるジブリッド、正直要請されてもやり合いたくはないと思っているよ」



「それはなにより。話はもうついているので、まあ細かい話はジブリッドの店員としてください、きっと期待に沿えると思いますよ」



 ミリオンテンスさんがクツクツと喉を鳴らして笑い、一度ランファちゃんに目をやると残りの騎士たちにも企画書を回した。

 そして僕に視線を寄越すと、手を差し出してきた



「魔王にしておくのが惜しいな、騎士団に入らないか。君なら歓迎しよう」



「僕どこ行っても勧誘されるなぁ。でもこれでもまだまだ花も恥じらう乙女なので、むさくるしい集団にはちょっと」



「失礼な、これでも気を遣ってるんだ」



「へ~――へ?」



 そう言うミリオンテンスさんに手を引っ張られ、そのまま抱き寄せられるのだけれど、騎士の皆さんは訓練中でそれなりに汗をかいているはずなのに確かに不快なにおいはしない。これジブリッドの防臭スプレー使ってるな。

 それよりもいきなり薄いシャツを着た男性に抱き寄せられ、男性らしい厚い胸板が目の前にあり、その上では所謂イケメンに分類される騎士団長殿が爽やかな顔で笑みを浮かべており、僕はつい顔を赤らめてしまう。



「おっ、今日一番の年相応な顔が見られたな。そっちの方が可愛いぞ――」



 僕が恨めし気な顔をミリオンテンスさんに向けていると、近くでバチバチと鳴る音、それと月が割れるような音(・・・・・・・・・)星を連想させる眩い光(・・・・・・・・・・)



「は?」



「……ミリオ、お前、口説く相手は選べ」



 僕はミリオンテンスさんから顔を逸らし、小さくごめんなさいと告げると、彼は肩を竦ませると同時にそのまま駆け出した。

 しかし女神様2柱の女神特権、そして星の勇者による攻撃からは逃れられるはずもなく、僕の見えないところで彼がまた壁に埋められたのだった。

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