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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
32章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、それぞれ王都の真相に近づく。

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物語を紡ぐ眼鏡ちゃん、知識を超えた感情を知る

「なるほど、お前の気持ちはよくわかった」



「……」



 ジブリッドの家から自宅に帰ってきた私は、お父様と将来(・・)のことについて話し合った。

 まだ学生の、しかも一期生という身分で気が早いかもしれないけれど、まだまだ時間があるからこそ、様々な夢を持てる、進むべき道を選び、変えられる。

 だからこそ、私は今思い描く未来をこれでもかと言葉にしたつもりだ。



 お父様の反応はどうだろうか、私はチラと顔色を窺う。

 するとお父様はフッと笑みをこぼし、私の頭に手を置いてくれた。



「冒険譚に、英雄に、勇者に憧れるだけだったお前が、まさかそんな人たちの隣に並び立ちたいと言う日が来るとはな。年は取ってみるものだね」



「……ええ、私を変えてくれた人たちがいましたから」



「リョカちゃんとミーシャちゃんか。聞いた話だと、その背は遠く、とても困難なものではないか?」



「そうですね、いつの間にかあっという間に離されてしまいます」



 私が苦笑いを浮かべると、同席してくれているテルネ様が、カップを持ち上げて口に運び、お茶を飲んだ後、肩を竦めたのが見えた。



「私目線になりますが、ソフィアとリョカさんたちにそれほど差はありませんよ」



「そうですか?」



「ええ、違いがあるとすればあちらはトラブルメーカー……大事が勝手にやってくるというだけです」



「そう、なのでしょうか?」



 差がない。私はそんなことないと思っているけれど、テルネ様はそうじゃないと言ってくれる。気を遣わせてしまっただろうかと思案するけれど、叡智神様が首を横に振った。



「事の大きさによる衝撃と、色眼鏡を通して見ればそうかもしれませんね」



「あぅ……」



「ソフィアはリョカさんとミーシャさんを意識し過ぎです。仮に2人の存在がなくても、あなたの力だけで言えば国1つ程度であれば蹂躙することも容易い」



「え?」



 お父様が初耳とでもいう顔でテルネ様に目をやった。

 あまり心配はかけたくはないのだけれど、以前セルネ様の言った通り、力だけなら化け物と呼ばれるに値するのだろう。



「……でも、力だけです」



 そう言うと、テルネ様が盛大にため息をつき、少し言いづらそうに口をパクパクさせると顔を赤らめて私に目を向けてきた。



「一度しか言いませんよソフィア=カルタス、力しかない人間を、この叡智神が見初めると本気で思っていますか? そう思われていたのなら心外です。私――叡智神であるテルネは、その知識と静寂の中から確かな意思をくみ上げることに関してはルナ……月神よりも優れています。あなたがあなたを信じられないというのなら、私を見なさい、私の声を聞きなさい。女神とは、人をより良い方に進ませる存在です」



「……」



 照れたようにまくしたてたテルネ様……叡智神様はぷいとそっぽを向くと、そのままお茶を再開した。



 よりによって私は女神様になんということを言わせてしまったのだろうか。

 少し後ろ向きになっていた私だったけれど、テルネ様の言葉には本当に驚いている。

 クオン様からはテルネ様も私と一緒にいることを気に入っているとは聞いていたけれど、あまり表情も動かないし、言葉も少ない。

 私は数ある信者の1人だと高をくくっていた。

 そうでないと、自惚れてもいいのだろうか。



 私は照れて顔を逸らしているテルネ様をジッと見つめる。



「……ありがとうございますテルネ様、でも私ではリョカさんやミーシャさんみたいに女神様と接することは出来ませんよ」



「あれはいきすぎです、ソフィアくらいが丁度良いですよ」



 カップをソーサーに戻したテルネ様が本を生成して開き、読み始めてしまった。

 私はクスクスと声を漏らすと、同じように本を取り出し、テルネ様の横で文字を読む。



 すると私たちを黙って見ていたお父様が、顔を綻ばせた後、立ち上がって移動し、部屋に並んでいるお父様の趣味――国を、人を、そして物語をお父様自身が製本した物を本棚から取り出し、私たちと並んで読み始めた。

 そんなお父様と目が合うと、もう一度頭に手を置いてくれ撫でてくれた。

 そしてお父様は一度テルネ様に目をやると、そっと頭を一度下げたのだった。

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