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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
31章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都にてフラグを建築する。

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魔王ちゃんと呪われているのかも誕生日

「しかし……」



 座っている陛下がひどく肩を落とし、盛大にため息をついた。

 一国の王がそれほど辛気臭くなるのもわかるけれど、出来れば僕たちの前ではやらないでほしかった。

 まあそれだけ信用されていると取るべきか。



「リョカさん、その、陛下にも色々あるんですよ」



「色々?」



 すると苦笑いのランファちゃんが、口を開いた。



「わたくしの両親の時もそうでしたが、あれって陛下のお誕生日のすぐ近くだったのですわ」



「……そうなんだよ、だから巷では俺の生まれは呪われている。なんて陰口叩かれていてね。正直そういう噂は行政では覆すのが難しくてね」



 それは確かに。陛下が悪いわけではなく、誰かの悪意のせいでせっかくの誕生日が嫌な思い出になってしまうのは悲しい。

 ジブリッドとして何か協力してあげたいけれど……と僕が考えていると、フィムちゃんが意味深な顔で頷いており、僕は目を向ける。



「みゅ? あ~陛下さんの誕生日って、この国にとっても嫌な日だったなぁって」



「え?」



「フィリアム、お口チャックです」



 口をむっと閉じ、頬を膨らませるフィムちゃんを撫でると、座っていた陛下がとぼとぼとした足取りで、ルナちゃんに手を伸ばして近づいている。



「え、あの、え?」



「……いえ、その」



「ルナちゃん、教えてあげて。陛下このままだときっと眠れない日が続いちゃうよ」



 僕の言葉もあり、ルナちゃんがため息をついて話し始めた。



「昔の話ですよ。ただ以前、陛下の誕生日の日にこの国は未曽有の災害に見舞われたことがありまして」



「あの、それって……もしかして」



「多分聞いたことはあると思いますが――過去唯一、マルティエーターと魔王のギフトを持っていた厄災、命なき人類(・・・・・)、虚構の王――無王・アンデルセン=クリストファー、このサンディリーデを命なき楽園へと代えようとした日が、陛下の誕生日です」



「……」



 陛下がその場で膝を折り、崩れ落ちるように座り込んだ。

 そして乾いた笑いを漏らしながら天井を見上げている。



 マルティエーターと魔王、この間お母様と話していた奴かな。

 命なき楽園って一体何をどうやって作り上げようとしたのか。一切思いつかない。

 そもそも僕の場合、命なき(・・・)を作る方が現段階では難しいまである。



 そんなことが起きた日に誕生日とは、陛下も中々に不憫だ。



「……いやさ、子どもの時まだ王族に生まれたって自覚がなくてさ、どうして俺の誕生日を国中の人たちが祝ってくれるのがわからなくて父上に、俺の誕生日がこんなに喜ばれるのは、昔この国でこの日に何かいいことがあったんですね。って無邪気に聞いた時の父上の顔がさ、とても申し訳なさそうな顔してた理由がやっとわかった」



「せ、先代国王陛下は家族にも優しい方だったのですね」



「もっと気の利いたこと言えなかったんですの?」



「無理だよぅ……」



 そうやって僕が諦めていると、ランファちゃんが小さく笑みを浮かべた。



「お父様とお母様がなくなった日も、色々と調整してもらいましたからね」



「あの時はすまなかったな。生誕祭が控えているとはいえ、ランバートたちの悲報を先延ばしにしてしまった」



「いいえ、誕生日に関しての曰くは聞いておりましたし、わたくしが――イルミーゼがズラすのが筋だと思いましたので」



「お前はそうやっていつも聞き分けてくれたからな、こちらとしても何か礼を。と思っていたのだが――」



「もったいないお言葉ですわ。それにそうやって聞き分けていたばかりに、ひねくれて、本質を見落としてしまっていましたから」



 顔を逸らすランファちゃんを撫で、僕は話を変えるために手を叩く。



「そうだ陛下、そういえばセルネくん――ルーデル様から聞いたのですが、警備の方で困っていると」



「ん? ああ、人手が足りなくてね」



「人手も質も一気に揃う人材を知っているのですが、どうします?」



「そんな都合のいい人がいるのかい?」



「まあ都合は良いですけれど、陛下にとって都合がいいかどうかはちょっと判断できないです」



 首を傾げる陛下に、ランファちゃんが納得したようにうなずいた。

 多分お父様経緯で知っているはずなのだけれど、国の大事に彼を使えるかどうかは陛下の判断次第だろう。



「ロイさんって言うんですけれど――」



「ちょっと待ってくれ。そのロイさんってあれかい? そのぉ、()。から始まる通り名を持っているロイさんかい?」



「今は()ですね」



 陛下が腕を組み、目を閉じて顔を上げながら唸っている。とても悩んでいらっしゃる。



「ちなみに、何が出来るんだい?」



「ロイさんの使うスキルは豊神様の加護で軒並み強化されていまして、今はブラッドヴァンも血液を使わず、大地に流れる力を使って、100単位で兵隊を出すことができ、さらにそのすべてが強化のスキルを使います」



「聞いてた話よりずっとヤバくなってない! それと豊神様? ちょっと待って、もしかして今この国にいる女神様って」



「月神様、神獣様、星神様、叡智神様、豊神様、神鳥様、たまに竜神様と大地神様が来ます」



「おぅふ」



 頭を抱える陛下に、フィムちゃんが肩をペシペシしている。



「ロイさんと娘のエレノーラは豊神様の唯一の信者ですので、そりゃあもう強力ですよ」



「……女神様が付いているなら、うん、だが」



「ロイさんはグエングリッターを救った英雄ですよ。私もいっぱい撫でてもらいましたぁ」



「そっかぁ」



 陛下をペシペシしていたフィムちゃんが満面の笑顔で言い放つと、陛下は力なく笑い、相変わらず乾いた笑いを漏らしていた。



「一度会ってみてはどうですか?」



「……うん、そうだな、うん――今はこの国に身を置く俺の民だ、俺がビビってどうする」



「優しい人ですから、きっと気に入ると思いますよ。ああそれと、その前に見てほしいものが」



 僕はルナちゃんに目配せすると、月神様はロイさんとの戦いとその後の記憶を陛下に見せる準備を始めた。

 だから僕はテーブルと椅子を追加で作り、一応持って来ていた菓子類とお茶を取り出すのだった。

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