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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
31章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都にてフラグを建築する。

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魔王ちゃんと星の助言

 色々考えることが多そうだけれど、1人だと大変だな。誰か協力者がいればいいんだけれど……陛下、にも少し聞いてみるとして、お母様、はどうだろうか。

 色々と探ってくれるだろうけれど、こうまでして隠したがっている相手にジブリッドのような大きな家が動くと目立つか。



 そんなことを考え、ジブリッドの支店……というより、ジブリッドのケーキ屋で、頭を悩ませている。

 この店は僕が考案した所謂ケーキバイキングで、時間内なら食べ放題という店なのだけれど、僕はさっとケーキを選べたけれど、ルナちゃんとランファちゃんは物凄く悩んでおり、そんな2人を微笑ましい気持ちで少し離れた席から眺めている。



 しかし記憶を操る人。か。

 正直厄介なことこの上ないけれど、どうにも妙な感じがする。まあそれに関しては今でなくても良いような気がしている。



 そうやって頭を痛めて考えていると、糖分が欲しくなり、呆けた頭でケーキをフォークに刺して口に運ぼうとすると、背後から誰かが現れ、僕のケーキをパクと口に入れてしまった。



「おぅ?」



「リョカお姉さま、考え事しながらだと隙だらけですよ」



「フィムちゃん」



「こんにちは~」



「はいこんにちは。ってそうじゃなくて、また突然現れましたね」



「ちょっとルナお姉さまがお悩み中だったので、助っ人ですっ」



「あらありがとうございます。でもルナちゃんでわからないんじゃ、フィムちゃんでもわからないのでは?」



「む~、それはぁ、そうですけれど~」



 頬をプクと膨らませるフィムちゃんを抱き上げて膝に座らせ、再度僕が持ってきたケーキを彼女の口に運ぶ。

 星神様は嬉しそうにケーキを食べており、その姿がとても可愛らしい。



「お父様はちゃんとつきましたか?」



「はい、ジークランスおじさま、すごいです。着いて早々リーデッヒを呼びつけ、すぐに現在の物流を把握すると、ミルキーウェイのギルド員を集めて対策やら売上向上の講義を開いて、早速ギルドが乗っ取られそうで、リーデッヒが泣いてました」



「うん、流石お父様だ。これなら任せちゃってもなんとかなるかな。それでフィムちゃんはそっちを放っておいていいの?」



「……むしろ、横から口を出していたら、スピリカからお外で遊んで来てくださいと追い出されました」



「あ~」



 テッドは口出してても何も言われないのに。と、プクプクするフィムちゃんを撫でる。

 つまり暇になったからこっちに来たのだろう。



「あ、そうでした。さっきのイシュルミ=テンダーについてですが、あれ多分ジンギお兄様と同じですよ」



「はい?」



「運命上では死んでいる。だから女神で把握できない――どうして忘れてしまっているのかはわかりませんけれど、彼を観測できないのはそのせいですよ」



「ちょっと待って。どうしてジンギくん? 運命では死んでいる?」



「あれ、ミーシャお姉さまやルナお姉さまたちから聞いていないですか? ジンギお兄様は多分リョカお姉さまの影響で、死を回避しているはずです」



「いや知らないけど?」



「う~ん、でもそうじゃないとジンギお兄様にはギフトは渡らないですし、何よりも、女神よりも影響力を持った人なんて稀ですから」



「どういうこと?」



「普通の人がその、例え死んでしまうことが確定していたとして、それを助けたとしても女神に観測できないなんて事象は発生しないです。じゃあどんな状況ならそうなるかというと、未来の話になります」



「未来……」



「はい、その生かされた人が、未来でとんでもない影響を残すことが確定したら、女神でも観測できなくなります。例えば、その人物が生き残ったことで、誰かの確定された未来が破綻した時、例えば、その生き残った人物が、とんでもない影響力を持った人の運命を終わらせた時、例えば、本来なら起きるはずもなかった災害が起きた時――などなどです。そしてもう1つ、女神が観測できない事態に陥る方法があります。それが、同じく女神に影響されない人物からの運命の同調です」



「えっとシラヌイ、とか?」



「はい、それもありますけれど、そもそもリョカお姉さまはこっちの人ではないので、女神からほとんど影響を受けません。加護やギフトも、それはリョカお姉さまが本当に私たちを観測してくれているからできることで、もしお姉さまが私たちに無関心だったら、加護もギフトも渡せなかったはずです」



 この場合、シラヌイというのは考えづらいだろう。彼らは冷徹な殺人一家で、誰かを助けることは稀、というか、聞いた限りだとあり得ない。それならば誰が一番可能性があるのか、つまり僕なのだろう。



「あっ、でもこれは推測じゃないですよ? ルナお姉さまの話で、ジンギお兄様のギフトはリョカお姉さまから引き出されたことがわかっているので、女神の影響というより、リョカお姉さまの福音が原因なので」



「待って待って、僕ジンギくんにギフト渡してないよ」



「ルナお姉さまが吹っ飛んできたリョカお姉さまからギフトが引き出されたと言っていましたよ。ミーシャお姉さまにぶん殴られた拍子にって」



「……あの時か」



 ミーシャに魔王オーラでちょっかいかけていた時、苛立った幼馴染にブッ飛ばされたけれど、確かにあの時大柄な子がいた気がする。



「そもそもナイトマイトメタルに架空の金属を生み出す力はありませんから、それも多分リョカお姉さまの影響かと思われます」



「うっそやろ、あれナイトマイトメタルの標準能力じゃないんか」



「ナイトマイトメタルは()()()()()()()()()()()が可能になるギフトですから」



 つまり、僕が影響を及ぼしたのはソフィアのギフトだけじゃなかったってことだったのか。なんか、とんでもなく申し訳なくなってきたな。



「運命というのは結構惚れっぽくて(・・・・・・)、運命自体がなくなったとしても、その最も身近……というか、助けてもらった人に限り、心を開いてくれると言うか、その相手の運命と同調してしまうので、影響を与えられる唯一の人になっちゃうんですよね」



「え~っと、つまりジンギくんにギフトを与えた僕が、確実に彼の運命に関わっていると?」



「はいっ!」



 力強い肯定だ。

 どうしよう、僕そんな他人の運命になんて責任持てないぞ。



「あっ、でも大丈夫ですよ。ジンギお兄様のこれからは、ちゃんと女神一同が責任を持ちますので」



「うん、そうしてくれると助かるかも。僕にはちょっと重い」



 僕は苦笑いを浮かべ、フィムちゃんを撫でる。

 しかし運命かぁ。女神様は随分と厄介なものを司っているんだなぁ。



「みゅ?」



「運命を司るって大変じゃないですか?」



「ああいえ、私は運命を司っているわけじゃないですよ。星神ですし」



「ん?」



「人が星に運命を見ることが多いので、私もそれに寄ってしまっただけです。運命を司るのは別の女神で……」



 その途端、フィムちゃんが苦々しい顔を浮かべた。珍しい顔だ。



「正直あまり得意ではないです。そうでなくてもヒナ姉さまと同期の女神で、あの世代ランド姉さまを含めて厄介な女神が多いんですよね」



 女神様って世代によって面倒とかあるんだなぁ。



「アヤメお姉さまやクオン姉さま、ラムダさまなどなどの一番上姉さま方、次にルナお姉さまやテル姉さまなどなどの次姉さま方、その次にいるヒナ姉さまやランド姉さまの次々姉さま、その次に私とテッド、あーちゃんの世代になります」



「アヤメちゃん一番上の世代なのに、あんなに気安いのが良いよね~」



「ですです。なんだかんだいつでも女神のことを考えてくれて、ぶっきら棒ですけれど優しくしてくれますし――でもあれで女神最強の加護持ちですからね。正直正面から喧嘩を売るのはクオン姉さまだけですし」



「え、そうなの?」



「あっ、え~っと~」



 フィムちゃんが僕から顔を逸らし、ケーキを口に運びだした。

 これは女神間でも情報の規制がされているな。それなら僕は知らんぷりしておこう。



 僕はフィムちゃんの口の周りに付いたクリームを拭ってやり、笑みを浮かべた。



 しかしこの星神様、正直末っ子だから甘やかさなければという使命感に駆られていたけれど、普通に優秀な女神様なんだよな。

 なら少し、話してみようか。



「ねえフィムちゃん、ちょっとお願いしてもいいかな?」



「みゅ?」



 そこで僕はフィムちゃんに、さっき覚えた違和感を話した。

 しかしフィムちゃんはう~んと顔をしかめてしまった。やはりこの手のことを頼むのはよろしくなかったか。



「あっ、いえ別に頼られるのが嫌というわけではなくて、そういうことならあ~ちゃんが得意なので、むしろ私だとお役に立てるのかわからなくて」



「アリシアちゃん?」



「はい、記憶に関してですが、そういう()を晴らすのならランド姉さま、靄のまま読み解くならあ~ちゃんが得意です。夜は元々曖昧なので、そういう曖昧なものを読み解く力は夜神(・・)のアリシアの専門分野です」



「夜神……」



「みんなは死神って言いますけれど、あ~ちゃんは夜を司るとっても綺麗な女神なんですよ」



「そうだね。僕もこれからはそっちの認識で接するよ」



「そうしてあげてください。でもイシュルミ=テンダー、ですか~。私も今さっき名前が挙がるまで覚えていませんでした。ギルマスになった時に何かあったのかなぁ」



「もしくはそれ以前、それか現在進行形で関わっているかだね」



「ん~、わかりました。頑張ってあ~ちゃん見つけますから、その時に聞いてみます。私のお願いだったらあ~ちゃん聞いてくれますから」



「アリシアちゃんに嫌な顔されそう」



「あぅ、あ~ちゃんのこと、あんまり嫌わないでくださいね?」



「うん? あ~確かに街襲われたり、命狙われたけれど、僕はアリシアちゃんのことは嫌っていないよ。可愛い女神様だし、ルナちゃんの妹だし」



 フィムちゃんが安堵したように息を吐いた。

 本当に仲良しなんだなと感心していると、やっとフィムちゃんに気が付いたのか、ルナちゃんが驚いた顔でこっちを見ていた。



 とりあえず、この店先払いの形式だし、店員さんに謝罪と1人追加したことを伝えて料金を払い、フィムちゃんにもケーキを取ってくるように促すのだった。

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