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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
31章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、王都にてフラグを建築する。

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魔王ちゃんと王都での茶会

「ジンギくんは……まだかかるかな?」



「ええ、そうだと思いますわよ。というかジンギに何を吹き込んだのですの? 朝から晩まで必死に頭を捻っていましたわよ」



「格好良くなる魔法、かな」



 王宮から出た僕とルナちゃん、ランファちゃんとお母様はそのままジブリッドの実家に足を運び、そこで一息ついていた。

 その際使用人たちにそれなりに挨拶をし、久々に実家のキッチンで簡単なお菓子をルナちゃんと作ってランファちゃんとお母様にお茶と一緒に出してゆっくりとテーブルに腰を掛けている。



「あの子が食いつきそうなことを……まあでも、ありがとうございますわ。ジンギはずっとわたくしに構ってばかりで、あまり自我がなかったですから、あなたと出会って、最近では熱中できることも見つかったようで」



「2人とも大概、互いを大事に想ってるよね」



「……腐れ縁ですわ。わたくしの我が儘に、ずっと付き合ってくれていただけ。ジンギは復讐なんてきっと考えたこともないでしょうね。だからこそ、今までついて来てくれたことに感謝しているんですわ」



「そっか。でもランファちゃん、お願いだからそれを1人で成そうとしないでよ?」



「と、言いますと?」



「僕は別に、その魔王を横からかっさらって倒そうなんて思っていないし、むしろ目の前に現れてもボコボコにはするかもだけれどわざわざ倒すなんてことはしない。復讐を止めろなんて言わないし、むしろどんどんやっちまえとも思っている。だけれどもしやるのなら僕とミーシャ、それにジンギくんのいるところでやって。倒すための手助けはしないけれど、君を死なせるなんてことは絶対にさせない」



「……ええ、心強いですわ」



 するとランファちゃんがジトっとした目を向けてきた。



「わたくしの仇の魔王、知っていたんですわね」



「え? あ~……うん」



「別に怒ってはいないですわよ。リーンさんも知っていたみたいですし」



 僕がお母様と顔を見合わせると、2人揃って頬を掻いた。

 するとルナちゃんがクスクスと声を上げ、そっと茶を口に運び、ランファちゃんに目を向けた。



「アルフォースが捜していたのと、ロイさんがその魔王が支配する国の出だったからリョカさんも知っていたのですよ」



「ロイさんが?」



「黄衣の魔王――正直わたくしは、皆さんに会わせることすらしたくない程度には嫌っています」



「強いのですの?」



「強い……かは少し判断に困りますね。少なくともアルフォースでは手も足も出ませんでしたし」



 僕が首を傾げていると、お母様がポツリと語りだした。



「アルフォース、ミーシャでも相性が悪いわね。あたし、は……色々なものをかなぐり捨てればそれなりに相手できるかしらね。ギフトと絶慈、魔王のスキルが軒並み厄介なのですよ」



「いや僕お母様のギフト知らないけれど」



「近接戦闘に持ち込むと厄介という話よ。それと、なにかうかがい知れない力を持ち始めたわね」



 ため息をつくお母様に僕は1つ疑問を覚え、そのまま尋ねる。



「いやお母様、というか会ったの?」



「2人が殺されたと聞いてすぐに乗り込んでやったわ」



「え?」



「え?」



「え?」



 僕とルナちゃんだけでなく、ランファちゃんも驚きの声を上げた。

 しかしお母様はランファちゃんを申し訳なさそうに覗き、小さく顔を伏せた。



「でも、ごめんなさいランファ、あたしでは倒しきれなかった。それどころか、嫌な予感に撤退してしまったわ」



 謝罪をするお母様に、ランファちゃんは首を横に振って焦ったように顔を上げるように言った。

 しかしさっきの言いよう、多分自分の命を勘定にかければそれなりに戦えたのだろう。けれどそれをしなかった、出来なかった。

 それに今の話を聞いて、僕も逃げてくれてよかったと思ってしまった。



「リーンさん、ありがとうございますわ。でもあなたにもリョカさんやジークランスさん、ミーシャさんにルナさんアヤメさんと大事な人がいるのですから、無理はなさらないでくださいですわ」



「あなたも同じですよランファ。リョカ、あなたランファを死なせないのよね?」



「もちろん。どんな手を使ってこようが、リョカちゃんが丸裸にしちゃいますよ」



「そう、ならこれ以上は何も言わないわ。でも最後に1つ、ランファはしっかりと強くなって、その上であらゆる手段を用いて絶対に生き残りなさい」



「はい、助言、感謝いたしますわ」



 ランファちゃんが安堵したように微笑み、そして肩に入っていた力を抜いてお菓子に手を伸ばし始めた。

 僕はそれを見守っていると、横目にルナちゃんが苦笑いを浮かべていた。



「お母様でも太刀打ちできないのですね」



「基本的に近づいて攻撃しますからね。バイツロンドも厳しいと話していたわ」



「あれ、お母様バイツロンドのお爺ちゃん知ってるの?」



「それこそ腐れ縁よ。レッヘンバッハにあいつのことを紹介したのはあたしなんですよ」



「そういえばレッヘンバッハのおじさんに恩を感じているみたいな様子だったな」



「色々融通を利かせたんですよ。その代わりバイツロンドに汚れ仕事をすべて押し付けていましたけれど」



 相変わらず容赦しないなおじさん。使えるものはとことん使い、その上で求めるすべてを与える。

 ミーシャとは似ても似つかないやり方をするけれど、正直敵に回したくはない。



 僕が呆れたような顔を浮かべていると、ランファちゃんが口を開いた。



「そう言えばリョカさん、王都にはどれだけ滞在するんですの? わたくし学園に休暇願を出していないですわ」



「ああ、それならヘリオス先生に伝えてあるから大丈夫。一応生誕祭までいようと思っているから1週間――7,8回日が昇るまでかな」



「また結構な日にち休んでしまいますわね」



「あっ、ちゃんと問題集作ってきてるから1日の終わりに小テストするからね。点数低かったら学園帰った時に補習あるからよろしく」



「それを先に言えですわ! え、じゃあわたくしたちこっちにいる間も勉強しなければならないんですの?」



「当然だが? ちなみに僕はどれだけテストしても毎回満点だから免除されてる。だからこっちにいる間は僕が先生ということでお願いされました」



 頭を抱えているランファちゃんに、僕は満面の笑顔を向けた。

 まああくまで学生という立場で、さらに王都へ来たのも名目上野外実習ということになっている。



 全員家も近いし、これなら夜に勉強会を開く形で集まれば良いかな。

 そんな予定を思いつき、僕は王都での過ごし方を改めて練るのだった。

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