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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
30章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、やっと王都に行く。

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魔王ちゃんとそれぞれの保護者

 ミーシャの口を塞いだ後、そこそこに言葉を交え、今日のところは解散ということになった。



「ジークがグエングリッターに出かけたと聞いてから、どうやってジブリッドをやる気にさせようかと悩んでいたが、リョカちゃんのおかげでその心配もなさそうだ。また話し合いの場は設けるから、その時にでも君の力を見させてもらうよ」



「はい、喜んで務めさせていただきます」



「うん、よろしくね――っと、そうだ」



 すると陛下がこそと近づいて来て、僕に耳打ちする。



「聖女様……ミーシャちゃんについてはあとでこっそりと教えてくれると助かる。レッヘンバッハとジークじゃ娘可愛さにその話しかしないから」



「……あ~、はい。あとで紙姫守を送っておきます」



 陛下は頷き、今度こそ離れていった。と思うと、思い出したというように僕やミーシャ、セルネくんたちに目を向けた。



「みんなも王都は久々なのだろう? 私が言うことではないかもしれないが、今は祭りの前だからかそこそこに賑わっている。せっかくだし精一杯楽しんでいくと良い」



 片手を上げて去っていく陛下に、僕たち――ミーシャとお母様以外は頭を下げ、陛下が出ていくのを見送り、その後に僕たちも執務室を後にした。



 そして僕はため息をついて肩を竦めると、ベルギンドさんもラスターさんもいるにもかかわらず、ミーシャとお母様を思い切り引っ叩いた。



「君たち少しはまともな社交性持ってくれる?」



「痛いわ」



「まさかリョカに常識を語られる日が来るとは思いませんでしたね」



 頭を抱える僕に、ベルギンドさんがそっと肩を叩いてくれた。

 ソフィアと同じで優しいお父さんだ。



「幼い日の君を見た時は、どのような怪物が育つのかと心配していたが、まさかリーンさんよりまともな淑女になるとは……私も歳を取ったのですね」



「お父様はまだまだ若いですよ」



「ですです。落ち着いた雰囲気で、うちの父と話が合うのではないでしょうか?」



「ええ、ジークさんとはよく一緒に出掛けますよ」



 やっぱりかと、流石お父様だと感心していると、ラスターさんが僕をジッと見ていた。

 セルネくんのお父さんは正直僕のことを嫌っているのではないかと思っている。向けられる視線は厳しいものだし、息子さんに悪影響を与えているし、それに魔王だからね。

 こればかりは仕方ないと肩を竦めると、セルネくんがむっと顔を浮かべていた。



「父上、さっきからリョカに失礼では?」



「……お前こそ、勇者がその様で恥ずかしくはないのか」



「生憎ながら、勇者なので常に胸を張って生きています。恥ずかしいこと、後ろ暗いことなど一切――」



「あらリョカさん、スカート捲れてしまっていますわよ」



「え――」



 セルネくんが物凄い勢いで振り返ってきた。

 もちろんスカートは捲れていない。



「――」



「ぐぇぇっ!」



 セルネくんがラスターさんに思い切り引っ叩かれ、彼はそのまま顔を両手で覆いながら膝を折って丸まった。



 お母様とランファちゃん以外の面々が生暖かい視線を向ける中、ラスターさんがため息をつき、僕に体を向けた。



「1つ勘違いしているようだから言っておくぞ。私は何も、貴様が魔王だからという理由で警戒しているわけではない」



「え~っと?」



「そこの白髪の女の娘だからこのような態度を取っている。貴様もまた、無理難題を叩きつけるのだろうと先手を取っていたまでだ。しかし先の言動、貴様は少なくともリーンよりは話が通じる相手だと理解した。不躾な視線、すまなかった」



 頭を下げてくれるラスターさんに僕は首を横に振り、頭を上げてほしいと告げる。それと同時に、今までのジブリッドの横暴を詫びる。



「いえ、こちらも母が申し訳ありませんでした。それとセルネ様ですが、今みたいなことは思春期特有の癖みたいなものですし、許してあげてくださいね」



「ああ、それともう1つ――セルネは学園に通い、貴様たちと一緒になって大分明るくなったし、力をひけらかさない男になった。学園で良くしてくれているのだろう。ありがとう」



 そう言って、ラスターさんはスタスタと行ってしまった。

 ラスター=ルーデル、どんな人なのかと身構えていたが、彼もまた子想いの良い大人だった。



「ラスターは本当にかたっ苦しいなぁ」



「あ、おじさんはもう少し威厳持った方がいいですよ」



「はっはっは、リョカちゃんは相変わらず手厳しいね。でも私が威厳なんか持ったらこの国乗っ取れちゃうからね~」



 ハハハと笑うレッヘンバッハのおじさんに、ベルギンドさんが小さく頭を抱えているのが見えた。きっといつも大変なんだろうなぁ。



 するとミーシャが僕の袖を引っ張ってきた。



「リョカ、もう飽きたわ。行っていい?」



「ああうん、ちょっと待って」



 レッヘンバッハのおじさんとベルギンドさんに目をやると、2人とも頷いてくれ、僕はミーシャに視線を戻す。



「ミーシャご飯は?」



「まだいいわ。夜多めにちょうだい」



「はいはい」



「ソフィア、セルネ、行くわよ」



「うん、こっちのギルド初めてだから、どんな依頼があるのかちょっと楽しみなんだよね」



「ですね、私の力が役に立てばいいのですが――ああそうだ、テルネ様もご一緒しますよね?」



「ええ、少し動きたい気分なので」



「ソフィアさん、テルネ太ったので、出来るだけ歩かせてくださいね」



「え?」



「……ルナ、少し口を閉じていなさい」



 膨れるテルネちゃんをソフィアがなだめ、そのままミーシャとアヤメちゃんと一緒に足を進ませていった。

 するとそのやり取りを見ていたベルギンドさんが首を傾げている。



「ん、ソフィアも?」



「あ~ごめんなさいベルギンド様、ソフィア本当に優秀で、ガイル――金色炎の勇者からも敵にはしたくはないという評価を貰っているほどです」



「……そうか、そうだったのか。ああ、うん。娘の成長は嬉しいものですね」



 複雑な顔でベルギンドさんが成長を喜んでいるけれど、レッヘンバッハのおじさんに肩を叩かれ、肩を竦ませた。



「まあソフィアちゃんは可愛いものだって、うちの愛娘なんて拳1つで女神様を何度も殴ってるからね」



「ああ、はい……え? いやそれは駄目だろう」



 ベルギンドさんが正気に戻ったのか、女神様を殴る聖女に驚いていた。

 それならついでに。と、僕は彼に目を向け、少し神妙な顔を浮かべる。



「ベルギンド様、ソフィアですが、ある死神様に女神以上の死を与えられる化け物という評価を貰っておりまして」



「……」



 ベルギンドさんが体を震わせ、頭を抱えた。



「うわ~……私たちの娘、大概ヤバいな」



「ソフィアとは、少し話し合おうと思います。ランファ、はこれ以上何もないな?」



「あ、この子極星史上類を見ない才能の持ち主で、七つ星極星に選ばれて、その加護で時間を消し飛ばします」



「――」



 ふらふらとした足取りのベルギンドさんを、レッヘンバッハのおじさんが肩で担いで運んでいく。その際おじさんは片手を上げてまた後で。と告げて去っていった。



 ベルギンドさんの反応が一々可愛くてつい意地悪してしまった。そうやって僕がホッコリしていると、突然頭を引っ叩かれてそちらに目をやる。



「ベルギンド様、心労で倒れてしまうでしょうが!」



「いや、なんか可愛くて」



「間違っても本人に直接言わないように」



「は~い」



 そうして残った僕とルナちゃん、ランファちゃんとお母様で、ジブリッドの実家に行くことを決め、王宮を後にするのだった。

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