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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
30章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、やっと王都に行く。

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魔王ちゃんと権力とは

「ほえ~、王宮。そういやぁ子どもの時以来きたこともなかったなぁ。まさかこんなところ二度と来るもんかってタイミングで出禁になってるとはなぁ」



「自覚なかったのかよお前」



「だってこの僕が可愛く歌って踊ってたのにめっちゃ叱られたんだよ? 感謝こそすれど、あんなにキレることないじゃん」



「……わたくしリーンさんから話を聞いて、そういえば幼いころ国王陛下の銅像が突然爆発して、女の子がオンステージとか叫んで歌い始めたことを思い出しましたわ」



「私も記憶にありますね。あれリョカさんだったのですね」



「あ~うん、俺も思い出した。珍しく父上が大口空けて呆けていた顔が印象深かったなぁ。でもすぐに白色の髪の人がその女の子を銅像に叩きつけて――」



「それリーン母様だろ」



「それで国王陛下の銅像粉々になって後で作り直したんですよね」



「というかリョカさんは一体どうやってあれを破壊したのですの?」



「店から火薬持ってきた!」



「……本当出禁で済んで良かったですわね」



 当時を知るそれぞれが一様にため息をつき、僕を可哀想なものでも見るかのような視線を向けてきた。

 あの頃は若かった。今の僕ならもっとうまくやれる自信がある。



 そうやって王宮を見上げながら話し込んでいる僕らだったけれど、王宮の門で警備をしている衛兵がこちらに気が付き近寄ってきたのだけれど、お母様の姿に気が付き、姿勢を正した。



 そしてお母様に「リーン殿、陛下の誕生祭の準備でいらしたのですよね」と、声をかけた。

 そうなんだと僕がお母様に目をやると、当のお母様は首を傾げており、そして思い出したように手を叩いた。



「ああ、それもありましたね」



「お母様?」



 衛兵は僕たちをジブリッド商会の人間だと認識したのか、どうぞと中に入れてくれる。ザル過ぎる、王宮の警備は本当に大丈夫なのだろうか。



 ソフィアが苦笑いを、ランファちゃんは頭を抱えてお母様の背をついて歩き、そして案内された場所に僕は首を傾げる。

 するとソフィアがこそと陛下の執務室だと教えてくれた。



 衛兵が扉を叩き、お母様が来たことを伝えると、そのまま踵を返して戻っていった。

 そのタイミングで中からどうぞという声が聞こえ、お母様が何のためらいもなく扉を開け放った。



「なんだいリーン、俺は君が最後まで来ない方にレッヘンバッハと賭けていたんだが、な?」



 そんな軽口を話す彼こそがサンディリーデ国王、エルファングリード・アイゼン=ブッシュガーラ――国王陛下がお母様ではなく僕たちに目をやって呆けた顔を浮かべた。



 すると陛下と一緒にいた3人の男性の1人が驚き声を上げた。



「ソフィアと……ランファ?」



「あ、お父様ただ今戻りました」



「ご無沙汰していますわベルギンド様、その、縁があり、こうしてリーン様と一緒に王宮へ出向いた次第であります」



 そしてもう1人、少し小太りの男性が声を上げた。



「セルネ」



「父上ただいまぁ」



「……お前学園に行くたびに軽くなっていないか?」



 そしてお腹を抱えて笑いながら陛下の背中をバンバン叩いている男性こそが、レッヘンバッハ=グリムガント、ミーシャのお父さんである。



「顔見せに来たわよクソ親父」



「ミーシャたん相変わらずパパに厳しいねぇ」



「キモい」



「あ~パパ、ゾクゾクしちゃうよぉ」



 ミーシャのお父さんに推し活について丁寧に説明したところ、実の娘を推し始めてそれ以来あんな喋り方をしている。



「リョカちゃんも久しぶり、相変わらず可愛いね」



「おじさんやっほ~、ミーシャ家に返せなくてごめんね」



 と、一通り驚いてもらったところで、体を震わせていた国王陛下がお母様に涙目を向けた。



「今ぁ! 何で今連れてきたんだよお前!」



「お前?」



 国王陛下をギロりと睨みつけるお母様に、僕は首を横に振ってお母様を制す。



「お母様、その人この国の最高権力者です」



「……」



 するとお母様はルナちゃんを抱き上げ、そのまま陛下に近づく。



「待て待て待て! その方はどちらだ!」



「……お前今暗に神獣下に見やがったな?」



 抱っこされているルナちゃんは両手を上げ、足をピンと伸ばして可憐な笑顔を振りまいている。

 何だあの可愛いスプリンクラー。



「いえ! 決してそのようなことは!」



「誰が誰より偉いと言っていますか?」



「女神様に比べればわたくし羽虫でございます!」



 お母様がルナちゃんをジリジリ近づけて国王陛下を追い込んでいる。

 そりゃあよく考えたら世界の権力者である女神様がいれば王も何もなかったわ。



 そしてこの騒動に乗じて、ソフィアが父親にテルネちゃんを紹介しているのが見えた。



「あ、お父様、こちら叡智神様のテルネ様です。今一緒に寮で生活させてもらっています」



「……なんて?」



 ソフィアよ、少なくとも紹介のタイミングは今じゃない。

 ベルギンド様呆気に取られているじゃないの。



 そして国王陛下もソフィアの話を聞いていたのか、その場で蹲った。王が丸まった。



「何で3人もいるんだ!」



「ちなみにプリムティスにもう1柱、さらにゼプテンにもう1柱いるぜ」



「今この国に5人も女神さまいらっしゃるんですか!」



「この間8柱揃いましたよ」



「なぜぇ!」



 しかし愉快な国王陛下だな。こんなキャラならもう少し歩み寄っておけばよかった。

 と言いたいところだけれど、このままじゃ話が進まなくなる。

 僕は手に命の鐘の魔王オーラを込めてそのまま手を叩いた。



 その瞬間、騒がしかった人々は口をつぐみ、一斉に僕に目をやる。



「はい、それじゃあ話し合いましょうか。お母様も良いよね?」



「……ええ、少しはしゃぎ過ぎたわ。中々面白いことをするようになったのね」



「まあね。これでも今巷を騒がせる魔王の1人ですから」



 僕はニコりと面々に目をやり、現闇で追加の椅子とテーブルを幾つか生成するのだった。

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