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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
30章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、やっと王都に行く。

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魔王ちゃんと喧し鳥の囀り

 放課後になり、僕とルナちゃん、アヤメちゃんとクレインくんでヒナリア様に会いに向かっている。

 ルナちゃん曰く、街の喫茶店にテルネちゃんといるらしい。しかしあの叡智神様は本当にティータイム好きだな。今度美味しいお茶でもソフィアに持たせよう。



「リョカ様良かったんですか? 国王様に呼ばれているんですよね?」



「あ~うん、まあそこはお母様の責任にするから問題ないよ。とりあえずミーシャに伝言頼んだし」



 とはいえ心配だから、ミーシャにはソフィアとセルネくんとランファちゃんを付けてある。



「それにほら、むさくるしいヒゲに会うより、僕は可愛い子を優先したいかな」



「……可愛い」



「おやクレインくん、ヒナリア様の可愛いを疑ってる?」



「いえ、その」



「可愛いよりウザったいが勝ってるんでしょ。ミーシャもヒナに会うと殴るのわかっているから辞退したじゃない」



「ヒナリアは、ええそうですね、少し……大分思い込みが強く、自分の発言に責任を持たない系女神なので、人によっては気に障るかもしれません」



「あれは万物共通のクソウザ女神よ」



 確かに初めて会った時もちょっと前のめりかなとは思ったけれど、ああいう子にはああいう子なりの対処方法があるんだけれど、まあこのメンバーや女神様では難しいか。



 そうやって神鳥様に想いを馳せていると、喫茶店のオープンテラスでお茶を飲んでいるテルネちゃんと……テルネちゃんの額に青筋が浮かんでいる。



「だからですねテル姉、ヒナはその時こう言ってやったんですよ、ゆで卵は硬めに限ると!」



「そうですか――」



「ああそういえばテル姉、眉間のしわ増えたですね、そういえば外だとしわって文字がヒナって文字に似ているみたいですよ。あああと知っていますかたまごを甘くする文化があるみたいですけれどヒナまだ食べたことないですよ。ですのでいつか食べてみたくて――ああそれとテル姉、この間だんな様がヒナのこと撫でてくれて! そういえばテル姉の信者はなんだかちみっこいですよね、あれでそれなりに強いなんて聞いたですけれど、やっぱりだんな様の方が――あああと! この間ちょっと空を飛んでいたですけれど、その時どこかの矮小な鳥魔物がヒナに喧嘩売って来てですね、ヒナリアは負けて堪るかと女神特権で追い抜いてやりましたですよ! ああでも女神特権使っちゃ駄目でしたっけ? でもヒナなので許されますよね、テル姉もうんって言ってくれましたよね! 知ってたです!」



「……」



「……」



「……」



 ああね、なるほど。

 アヤメちゃんは頭を抱えており、ルナちゃんは苦笑いを浮かべ、クレインくんはその場でテルネちゃんに向かって何度も頭を下げており、そのテルネちゃんは顔を引きつらせ、口をパクパクしていた。



 今も尚ピヨピヨとしゃべり続けているヒナリア様、しかもその会話のすべてが非常にどうでもいい内容ばかりだった。



「ぴ?」



 そんなヒナリア様が振り返り、クレインくんの姿を発見すると、目を輝かせて椅子から飛び退いた。

 そして一目散にクレインくんに飛びつく。



「だ、ん、な、さ、まぁ~!」



「おっと」



 クレインくんはヒナリア様を受け止めて苦笑い。

 なんだかんだ、彼は女神様を無碍に扱う子ではない。まあ今回に限りその真面目さが裏目っているみたいだけれど。



「だんな様だんな様、ヒナリアはいい子でお留守番してたですよ。クッソ退屈なテル姉の話にも欠伸1つしなかったです! 褒めてください褒めてください! 撫でて撫でて撫でてくださいです!」



 瞳を輝かせるヒナリア様に押されるように、クレインくんは彼女の頭を撫でてやり、それを受けた神鳥様は頭を彼の手にこすりつけていた。



「……クレイン、その喧し鳥を甘やかしてはいけませんよ」



「テル姉の方が小うるさいですし!」



 テルネちゃんの血管ブ千切れるのではないかというほど、叡智神様の額には濃く血管が浮かんでおり、体を震わせていた。

 なるほどなるほど。



 ヒナリア様はルナちゃんとアヤメちゃんにも気が付いたのか、体をクレインくんから離し、胸を張って勝気な表情を浮かべた。



「ルナ姉こんにちはです、アリシアは元気ですかぁ!」



「――」



「あ、アヤメ姉――」



 ルナちゃんの額にも一瞬青筋が浮かんだが、さすがの最高神様だ、すぐに可愛らしく微笑んだ。ちょっと怖いけれど。



 そしてアヤメちゃんには何をと耳を傾けるけれど、ヒナリア様はスンと真顔になり、アヤメちゃんに諭すような口調で喋り始めた。



「いやアヤメ姉、あの信者は駄目でしょう。普通に女神を殴りつけるとか、どういう教育しているんですか? 女神としてもう少し自覚を持って人々を導くべきでしょう」



「おい俺だけニュアンス変えるの止めろ」



 確かにこれは厄介だな。

 と、僕がうんうん頷いていると、ヒナリア様が僕に気が付いたのか、ジッと見つめてきたから微笑み返してやる。

 すると彼女はクレインくんの背に隠れてしまった。



「ヒナリア様?」



「……ルナ姉とアヤメ姉の信者には要注意です。ヒナ何度地面に埋められたか、あの後何度も夢に見たですよ。きっとルナ姉の信者もヒナのこと地面に埋めるですよ。だからここは初手女神特権です」



 ヒナリア様が僕の前に躍り出てきて体を光らせる。

 ルナちゃんとテルネちゃんの怒りが雰囲気から大分溜まっていることから、どう考えても女神特権だろう。



 僕は肩を竦ませると、スタスタとヒナリア様に近づく。



「さあ今こそ下剋上です! 今ここにヒナリアの天下が――」



「よいしょぉ!」



 ビリビリという音を鳴らして、ヒナリア様が着ていた衣服が僕の手によって割かれた。

 クレインくんが物凄い勢いで顔を逸らし、アヤメちゃんは爆笑し、ルナちゃんは興味深そうに事態を眺め、テルネちゃんは呆然としている。



「ぴ、ぴよ?」



「クレインくん」



 そして僕は顔を逸らしているクレインくんに親指を立てて言い放つ。



「非常識には非常識をぶつけんだよぉ!」



 僕はひょいとヒナリア様を抱き寄せ、彼女の翼の付け根をジッと見つめて、その後に服はどうなっていたのかを確認する。



「ほうほう、羽の付け根はこうなっているんですね。それで一体この羽でどうやって服着てるんですか? ちょっとやってみてくれません? 僕ずっと見ているので」



「ぴ、ぴよ? ぴ?」



 困惑しているヒナリア様を、僕は笑顔で見つめ、そのまま服を何着も生成し、宙に浮かせる。

 そしてそっと足をかけて神鳥様の体勢を崩すと、そのまま床に敷いた闇のシートの上に寝かせて、馬乗りになってさらに可憐な笑顔で彼女に告げる。



「レッツお着替えタ~イム」



「ぴ、ぴよぉぉぉっ!」



 ヒナリア様の断末魔のような囀り声もむなしく、僕が満足するまで着せ替えを行なうことを決めたのだった。

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