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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
29章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、迷える風を引き連れて。

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魔王ちゃんと少しの別れ

 テッカの決断を聞いてから数日後、彼は宣言通りに教員の仕事を休止し、プリムティスを出ていった。

 本人はそれほど仰々しいのは好みではないと、僕とルナちゃん、ガイルとヘリオス先生だけで見送りをし、アガートラームカスタム・ミニで飛び立って行った。

 そして今日はお父様とフィムちゃんとテッドちゃんを見送るために外に出ており、お父様にある程度リードと纏めた企画の説明をしている。



「なるほどチョコレート、まさかお前がカイルの実の菓子の製造方法を知っていたとはな。しかもこれ、普通に美味いな」



「私もチョコレート大好きです。前にリョカお姉さまにやってもらった、果物を溶かしたチョコレートに付けるととても美味しいんですよっ!」



「……あたしは、あまり甘くないびたー? チョコレートが好きだなぁ」



「というわけなのでお父様、女神様2人のためにもしっかり商品化してくださいね」



「こりゃあ責任重大だな。ああわかった、ついでにリードをこき使っておこう」



「そうしてやって。僕たちの前だとたくさん甘えてくるから、ちょっと喝入れてあげて」



 そしてお父様が僕のアガートラームカスタム・ミニの搭乗口を開けた。



「……いやお前、量産すんなって言っただろうが」



「だって移動に便利なんですもん」



「すまんなアヤメ、こうも行き来が楽になると、こっちとしても都合がいいんだ。とはいえ戦いに使うつもりもないし、ジブリッドの俺かリーンしか使わないからそれで勘弁してくれ」



「まあいいではないですかアヤメ、リョカさんは当然ながら、テッカさんもお母様もお父様も、誤った使い方は絶対にしませんから」



「そうだけどなぁ。でもこういうのがあると……ヒナリアが物凄く五月蠅くなる」



「天空はヒナの縄張りってさっきから五月蠅くしていますね」



「あとで謝りに行ってきますね」



 そういえば一度もまともに会話したことがないヒナリア様を思い出し、あとで菓子折り持って行くことを決めると、お父様とお母様が見つめ合っていた。



 僕はつい間に割り込む。



「……何だリョカ?」



「お願いだから子どもの前でイチャイチャしないで。恥ずかしい」



「そういうものですか?」



「そういうものですよお母様、こうやってみんなに見送られる前にやっておいてくださいね」



「まあお前が言うのならそうしておこう。リーン、俺は暫くグエングリッターで商売してくるが、こっちの店のことは頼むな」



「ええ、あなたも向こうでの商談、成功させてくださいね。あとリ-ドは一度ぶん殴っておいてください」



「ああ、大分怠けているようだからな、改めて商人とは何たるかを叩きこんでくるよ」



 そしてお父様が僕とミーシャを撫でてくれる。



「それじゃあリョカ、ミーシャ、お前たちは互いに、それとルナとアヤメたちのことは頼んだぞ」



 次にルナちゃんとアヤメちゃんを撫でて、僕とミーシャを顎で指した。



「ルナとアヤメも、リョカとミーシャのことを頼むな。バカやったのなら引っ叩いても良いから」



 頷いたお父様がリア・ファルミニにフィムちゃんとテッドちゃんと乗り込み、そのままグエングリッターに旅立って行った。



 テッカもお父様もそうだけれど、いつか帰ってくるとは言え、こうして一時別れるのは何とも寂しさがある。

 定期的に手紙を送ろうとも思っているけれど、それでもやっぱり傍にいないと言うのはやはり、私では覚えていない感情だった。



 僕はそうして肩を竦ませていると、お母様に声をかける。



「そういえばお母様はいかないんですね」



「ええ、グエングリッター、行っても良かったのですが、今はあれがいますからね」



「あれ?」



「……まあ兄妹みたいなものですよ」



「それ僕の叔父ってことじゃん。いたかなぁ?」



「向こうはあなたがあたしの子だとは知らないので――ああそうだ」



 するとお母様が思い出したかのように手を叩き、僕とミーシャに目を向けた。



ヒゲ(・・)が2人に会いたいと言っていましたよ。会いに行くのならまたあたしに言ってください」



「……ヒゲ?」



 僕が首を傾げていると、お母様はスタスタと店の方に戻ってしまった。

 肝心なことを話してくれないなと呆れているけれど、お母様の言うヒゲとは……話の流れからお爺ちゃんとか? でも僕どちらの祖父母にも会ったことがないんだよなぁ。

 お父様方の両親はすでに亡くなっているらしく、兄弟もいないから気にしなくて良いとお父様が言っていたけれど、お母様の両親は何でも遠くに住んでいると昔聞いたことがあったけれど、今近くにいるのだろうか。



 僕が思案していると、ミーシャに手を引っ張られた。



「ん~?」



「お腹空いたわ」



「ん、それじゃあ僕たちも帰ろうか」



 そう言って僕たちは寮に帰るついでに、昼食の材料とあとでヒナリア様に持って行く菓子類のための材料を買い、揃って帰路に着くのだった。

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