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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
27章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、自家製ダンジョンで暴れ回る。2

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魔王ちゃんと知識を操る者

「ソフィアまで出てきちまったか」



「というかうちの幼馴染が竜になってんだが」



「わけわかんねぇよなぁ。で、どうするよ」



 クレインくんが飛んできたから、砕けた世界を通って森林エリアにやってきた僕とガイルはミーシャたちの戦いに遭遇し、隠れて様子を窺っていたのだけれど、あれどう考えてもミーシャには勘付かれているな。



 テッカは純粋に強いし、ミーシャのあれは……ドラゴンインストール? とにかく世界に対して「おまんは竜!」をやっているみたいだけれど、クオンさん一体どんな加護を渡したんだ?

 それともう1つ厄介なのがソフィアだな。

 あれは初めて見るスキルで、尚且つ僕の喝才にも反応なし、僕に素質のないギフトなんだろうけれど、テルネちゃん関係のギフトは基本的に知識量と知識欲に直結するスキルも多く、尚且つバフとデバフをばら撒く……はずなんだけれど、あれはどうにも違う。

 見た感じ召喚系か? カナデとランファちゃんが捕まった瞬間、距離や場所関係なくあの子たちは拘束された。対象に対してソフィアが読み上げた事象を召喚する――? いや、それだけじゃないっぽいんだよなぁ。



「う~む」



「悩んでんなぁ」



「ソフィアが不気味過ぎる」



「それな。あいつもからめ手が多いよな」



「しかもあれ、僕とミーシャとは違って完全に対人特化だ。他者がいる前提じゃないとスキルが発動しないと思う」



「その心は?」



「あんな即興劇(エチュード)、魔物じゃ理解出来ない」



「なるほどなぁ」



 あと1つ気になったのは、どうしてわざわざ出てきたんだ?

 ああやって拘束するのなら表に出てくる必要は……。



「共通認識、かな?」



「お?」



「……ガイル、ちょっと耳貸して」



「おう」



 こういうのは僕は得意だけれど、ガイルが出来るか。

 いや、この勇者案外頭は柔らかい。もしかしたら可能かもしれない。

 僕はとりあえずソフィア対策を話すのだけれど、ガイルは首を傾げた。



「そんなことで良いのか?」



「うん、多分そうだと思う。わざわざ表に出てきて声を聞かせたのも、それとミーシャたちには見えていなかったみたいだけれど、あの子がスキルを発動させたとき、後ろにはあれ(・・)があったからねぇ」



 僕が顎で指した場所にガイルも目をやり、そして納得したように頷いた。



「エレノーラと組ませたらヤバいってことがよくわかったわ」



「本当に」



 僕は一度ため息をつくと立ち上がる。

 一応まだ予想でしかない。だからガイルには待っていてもらい、僕がソフィアを攻略する算段だ。




 ガイルと顔を見合わせて頷き合うと、僕はまだ残っている茂みから顔を出した。

 やっぱ精一杯可愛く出てきた方がいいだろうね。



「――やっほ、来ちゃった」



「リョカ――ッ!」



 テッカが一番に反応し、次にミーシャが呆れたようにため息をついた。

 そしてソフィアがすぐに本を開いた。



 来るか。



 確かにミーシャたちがやっている解も間違っていないだろう。

 あれは世界を作ると言うより干渉する範囲を明確に決めているだけだと思う。

 現に僕の世界にはエレノーラの世界しか生成されていない。

 あれを壊すというのは確実ではないけれど、やろうと思えばできなくはないことだ。



 でも僕はそんなまどろっこしいことはやってられない。



「その何者にも縛られない無法の銀風、我がただ持つ唯一の絶対、風をも縛る神域の鎖――『名もなき通りすがり劇(アノニムエチュード)』」



 これ完全に僕のために用意した即興劇だな。

 だからこそ僕は真正面から受ける。

 息を吐き、頭を空っぽにしてその()も、銀風(ぼく)神域(・・)すらも別の物に置き換える(・・・・・・・・・)



 本をなぞるソフィアの顔が勝利を確信していた。



 しかし僕は突然湧いて出てきた(けん)銀風(くま)神域(よろい)に跪かせて、勝気に笑う。



「他が持った認識を顕現させるスキル。言葉は知識の引き出し、後ろの小道具は視界によるイメージの固定――合ってるかにゃ?」



「――」



 ソフィアがハッと息を飲み、そして微笑みを浮かべた。



「ガイル!」



「やっと出番か! 『魔に委ね尚猛る陽(エクシードウリエ)』お前に容赦はしねぇぞ! 五重連――」



 吐き出された弾丸が地を揺らし、ガイルが聖剣をソフィアに向かって撃ちだした。

 爆炎は全てを燃やすように、ソフィアを燃やし尽くそうと盛る。



 テッカが大口を開けて顔を引きつらせているが、僕もガイルも、ソフィアがこの程度で終わることはないことを知っている。



 黙々と上がる煙に、僕たちは警戒を解くことなくソフィアがいた箇所を見続けるのだった。

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