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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
27章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、自家製ダンジョンで暴れ回る。2

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輪廻の魔王さんと歌に沈む者

「……」



 私はカップを傾け、お茶を飲みながら今さっき運んできた2人に意識を向ける。

 未だ意識は戻らず、呆けているというよりは魂そのものが抜けている。そんな印象を抱いた。



 私が編んだ植物のベッドで横になっている2人――オルタリヴァ=ヴァイスくんとタクト=ヤッファくんをルナ様とマナ嬢が顔を拭ったり、頬を叩いたりとしており、それを目の当たりにして女神さま一同、頭を抱えていた。



「おいルナ、オルタとタクトの状態を説明出来る?」



「はい、えっと……簡単に言うと、魂が休止している状態です」



「休止、ですか? それは死んでいるとは違うのですか?」



「ええ、本当に休んでいるだけなのです。その、これも歌なのですが、あの歌を魂で共感したことで、歌の中にあるわたくしの加護とも無理矢理ですが同調することになったことで起きた症状です」



「ルナ様の加護と?」



「ええ、わたくしの加護は極端な面を上げると、魂の安らぎです。それをリョカさんは歌にすることで相手の魂を何度も何度もわたくしの加護と共感、同調を繰り返すことで、体ではなく、心、魂に絶対的な安らぎをもたらし、結果的に魂自体を一時的に停止させるという荒業まで至ったのです」



「オルタとタクトが最初に言ってたわね、自分たちのことを褒めてくれているって。あの魔王、表現力もやたら高いからな。歌の主軸を相手にすることで同調を促してたのね」



 行き過ぎた癒しは堕落させるだけではなく、その肉体すらも機能を止めてしまう。ですか。それをリョカさんは魂に対して行なったのですね。



「しっかし、オルタもタクトも良くやってたんだがな」



「ええ、見事でした。私も一応は長く生きていますが『無価値な煌めき(ズィベンイーズ)』と『魔と歩む者(チェイサーノート)』をこれほど巧みに使う者は初めて見ました。私個人の見解ですが、強力ではあるものの、使いにくい部類のギフトですからね」



 私は寝ている2人の頭をポンと撫でて微笑むと、クオン様が考え込んでいるのが見え、彼女に目をやる。



「むむむ、今日ばかりはリョカちゃんと当たってほしくなかったなぁ。確かに全力は見られたんだけれど、もう少し詳細な戦いが見たかったかも」



「まああいつはからめ手と戦いの空気を独特にしがちだからな、評価しづらくなるのよね」



「やはりクオン様はタクトくんを?」



「そうだね、やっぱりああいう戦いをする子は龍の加護を――あだだだだっ!」



 突然クオン様が耳を押さえてテーブルに突っ伏した。

 私が首を傾げると、苦笑いのラムダ様がクオン様の頭を一撫で。



「ありゃりゃ、テッドが拗ねちゃったじゃん」



「ああそういやぁ、テッドもタクトに興味持っていたわね」



「で、でもあの子、もう権能もないしさ」



「あたしが代理」



 クオン様が頬を膨らませてテルネ様を見た。

 リョカさんの言う通り、可愛らしい女神様だ。



「ふむ……今テッドは真面目にフィムの補助をしていますし、何よりこの間頼んだチリルッテルの管理もやっていますし、女神の最後の信者を選んでもいいのではないですか?」



「あら、テルネにしては珍しく有情な裁定ですね。熱でもありますか?」



「……あの子の頑張りを評価しているだけです。もしタクトを信者にするのなら、特例として大地神としてギフトを与えることを許可しても良いですよ」



「ちょっとテルネぇ、僕がギフトあげたいって言っているんだよ」



「良いではないですか、あなたこの間有能な子にギフトを、しかも新しいものを授けたばかりでしょう」



「む……」



「あああの、フィムの奴が、どちらかというとこのギフトは自分が与えるべきとぶー垂れてたやつな」



「あれは竜です、フィムが何言ってもあれはもう僕のギフトだよ」



「まあそういうことで、ここはあたしの姪に華を持たせてあげてよ」



 ラムダ様の願いに、クオン様がため息をついた。

 しかしどうにも貴重な体験をさせてもらっている気がする。

 ギフトが選定される瞬間をまさかこの目で見られるとは、長生きはしてみるものです。



「仕方ない、今回は諦めよう。まっ、その代わり僕の新しい信者にはうんと甘くしてやろう」



「ほどほどにしておけよ。あいつもどちらかといえば甘やかしたい側のお姉ちゃん気質だからな」



「一緒にいる方が甘えん坊ですからね。次に会った時が楽しみです」



 話がまとまり、女神様方が満足げにしていると、巨大すくりーんで動きがあり、私は柔らかい葉を加工し、それをオルタくんとタクトくんに掛けると、画面に改めて目をやるのだった。

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