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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
27章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、自家製ダンジョンで暴れ回る。2

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魔王ちゃんと魔物大好きっ子

 エレノーラの方は何とかなったみたいかな。

 しかし驚いた。まさか僕の絶界に割り込んで世界を生成するほどの力を持っていたのか。



『リョカ』



「おっとごめん」



『いいや、なんかあったのか?』



「う~んと、ちょっと女神さまたちだけだと理解出来ないことが起きたみたいでね、ちょっとその解説をしていたよ。中身を聞きたい?」



『……いや、誰かが強かったってだけだろ? じゃあそん時まで取っておく』



 流石の金色炎だ。と、僕は微笑み、ワンテンポ置いて超長距離用の大型のテッポウ――所謂狙撃銃を構える。

 視界はアウフィエルで良好、狙撃の腕は衝撃の魔王オーラでカバー。



 狙撃銃の構造なんて一般人の僕には知る由もないけれど、ようは弾丸を射出できればいい。

 それなら簡単だ、それっぽい形と中身、あとは適当に衝撃の魔王オーラで押し出せばいいだけ。

 オルタくんのテッポウはちゃんと火薬を使わせているけれど、僕の場合はそこを魔王オーラに変えればいいだけだから、作るのにもそんなに手間はいらない。



 あとはグリッドジャンプで適当に魔王オーラを設置して、そこに向かって発射するだけ。



 銃の腕も何もないけれど、そんなものはいくらでも補えるのがこの世界なわけで、僕は有効活用している。



「ガイル、アルマリアとオルタくんはどう?」



『どうもこうも、すっかりビビっちまってるな。姿の見えない相手がいる状態ってこんなにも相手に影響を及ぼすんだな』



「そりゃあそうでしょ、どこから飛んでくるかも、さらにどこにいるかもわからないんじゃ常に気を張ってなければならない。それは大分精神にくるものだよ。だから僕はこんな戦術を選んだわけだし」



『しっかし、まさかアルマリアさえも足を止めちまうとはな』



「逆だよ。アルマリアだから足を止めてるの」



『つまり?』



「これが単体戦であるのならアルマリアは、多分あちこちにグリッドジャンプし続けるだろうね。でもそれが出来ない」



『……オルタがいるからなぁ。そこまで考えてこの戦術を選ぶのか、本当に良い性格してるぜ』



 ガイルの呆れたような声を、褒め言葉としてとらえ、僕は小さく息を吐く。



「それじゃあそろそろ楽にしてあげようか」



『おぅよ――』



 ガイルの返事を聞いたのだけれど、ふと違和感を覚える。

 僕は首を傾げ、待ったと制止をかける。



「待ってガイル、誰か来た?」



『ん? ……誰か転移してきているな? なんかデカいぞ』



 僕はすぐに上空に銃弾を打ち上げ、さらに数発ガイルたちの傍に弾丸を放つ。

 上空の弾は所謂衛星カメラのようなもので、上空にスクリーンを映し出し、広い俯角で辺りを見渡すことができる。ガイルたちの傍に撃った弾丸は声を拾う役割を持っている。



『うぇ? 空に画面? 私たちが映っていますね~』



『……リョカ様でござるな。というかあちらからはこちらが筒抜けでござるね』



『ほんっとうに、良い性格している魔王様ですよぅ。ちょっとガイルさん聞いてますかぁ!』



 アルマリアのキャンキャン声を聞きながら、ガイルが視線を転移装置に向けており、僕もそこを注視する。

 すると、そこから何か大きなものが転移されてきて僕は驚く。



「う~ん? これって、エリアボス? 何で転移してきたんだ――」



 その理由を考えるより先に、エリアボスから愉快な声が聞こえた。



『ひゃっはぁぁっ! 上級の魔物ですぜぃ! 多分エリアボスですぜい、お前は一体どんな力を持った魔物だ? それにエリアボスなら魔王種なはず! ああああ気分が上がって……リョカ様が言ってたな。こういう時は――テンション、上がってきたぁぁっ! ですぜい!』



 僕もガイルも、アルマリアとオルタくんさえも、その突然湧いてきた声に呆気に取られた。

 しかしそんな呆けてもいられない。

 ただでさえ、遠距離支援という頭の処理が大変なことをしているのに、これ以上イレギュラーを増やしたくない。



 僕はすぐに狙撃銃を構え、数十発の弾丸を放つ。



 その弾丸は衝撃の魔王オーラを通り加速し、さらにガイルの金色炎を付与して火力を上げ、そのすべてをエリアボスの頭部にぶつける。



 弾丸がエリアボスの頭に抉りこむと同時に、その中身から発火し、爆発を起こし、魔物は頭を吹き飛ばして絶命した。



 突然動きを止め、そのまま大地へと体を落とした四足獣型の魔物に、魔物に乗って現れたタクトくんが驚いて飛び退き、絶命した魔物のペシペシと叩いているのが見えた。



『お~? 突然死んじまったですぜい』



『た、タクト?』



『ん~? おお、オルタですぜい』



 呑気にオルタくんに手を振ったタクトくんが、少し考え込む動作を見せると、思い切ったように今僕が倒した魔王種の体を素手で引き裂く。



『お、タクト、なにしているでござ――』



『味!』



「え?」



 僕が驚く暇もなく、タクトくんが引きちぎった魔物の肉を生のまま口に放り込んだ。

 むしゃむしゃと頬張る彼の姿に、ガイル以外がドン引きで見ており、その金色炎の勇者様は笑いを堪えていた。



『……うん、うんっ、美味いですぜい!』



『クレインに怒られるでござるよ! というか一体なにをして――』



『ん~? リョカ様の匂いがするですぜい』



『――っ! タクト、わかるでござるか!』



『は? ああ、なんつうかこう、匂いっつうか、気配っつうか、あっちからそれっぽい気配が――』



 僕はすかさず、タクトくん目掛けて弾丸を放った。



『お――』



「いっ」



 放たれた弾丸はタクトくんの魔物化された素手で掴まれ、彼は首を傾げた。



『なんですぜい?』



『……タクト、ここは共闘といくでござるよ』



『は? 共闘って』



 アルマリアがタクトくんに手を振った後、ガイルを指差した。



『ガイル師……え、リョカ様とガイル師?』



『そういうことでござるよ。大分手に負えなかったでござるが、タクトが来たおかげで活路を見いだせたでござるよ』



『というわけでお願いしたいです~。ところでタクトさん、相方はどこですかぁ?』



『え? あ、いやぁ……』



『魔物にかまけていたでござるな?』



 顔を背けるタクトくんだったけれど、すぐに自身の拳と拳をあてがい、ニッと笑う。



『うっし! 男タクト=ヤッファ、友のために助太刀するですぜい!』



『まったく、調子の良いでござるな』



 へへへと笑うタクトくん。

 正直最悪である。

 僕はさらに追加で何度も狙撃するのだけれど、それはことごとくタクトくんに弾かれてしまう。

 ミーシャ、テッカ、カナデ辺りには通用しないだろうと想定していたけれど、まさかタクトくんにも効かないとは。



『【閃気幻獣脚(タイラントバッシュ)・ルージガーデン】オルタぁ! 乗るですぜい!』



 タクトくんがオルタくんを背中に乗せ、僕の方向に足を向けた。



『アルマリア殿、こちらはお任せするでござるよ! それと、拙者が不甲斐なくて申し訳なかったでござる!』



『いいえ~、正直どっちにしろって感じでしたし、私も手が出せませんでしたからぁ』



 ギルドマスターと若き才能が互いに頷き合い、アルマリアはガイルと、オルタくんとタクトくんは僕の方に向かって――。

 僕は頭を抱えて、さっきから棒立ちしている金色炎の勇者様に口を開く。



「これでやっと好きに戦えるねぇ」



『まあそう言うなよリョカ、別にお前さんのやり方に付き合っても良かったんだがな、こっちの方が面白そうだぜ?』



「……そうだね。正直僕も姿を隠すなんてやり方したくはないからね」



『なら決まりだ。もう補助は良いぞ、お前に頼りっきりっつうのもあれだからな』



「ん、それじゃあ任せたよ勇者様」



『おう任せろよ魔王様』



 ガイルとの通信を切り、僕は頭を掻いて遠くを見つめる。

 すぐにガイルの下にグリッドジャンプで飛んでもいいのだけれど、せっかくの催しだ。勝ち方にもそれなりにこだわらなければ楽しくない。

 何よりガイルが嫌がりそうだし、僕もそれを邪魔したくはない。



 それなら、とびっきりの可愛さであの子たちを迎えるのが最適解だろう。



 僕は深く深く愉快に笑い、魔王(アイドル)に挑む者をただただ待つのだった。

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