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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
27章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、自家製ダンジョンで暴れ回る。2

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輪廻の魔王さんと戦闘解説2

「それにしても、ついに揃ってしまいましたか」



「ああほんと、あの2人組だけは止めてくれと願っていたのだけれどね」



「ミーシャさんとカナデさんですか……戦闘に特化した2人ですよね? テッカさんもセルネさんも戦闘は卓越しているのですが、彼女たちに至ってはそう言う話ではないですからね」



「まさに理不尽、普通は魔王に抱く感情ですよ。アヤメ、あなたこれからは本当に聖女と精霊使いを与えるのは止めたらどうですか? あんな化け物生み出してしまうのは女神としてどうかと」



「俺のせいじゃないけれど! そもそもミーシャは最初、ルナの聖女だっただろうが。カナデ――シラヌイに関してもあれ精霊使いにしたの俺じゃなくてリョカのエクストラコードよ」



 その話を聞くと、本当に銀色の魔王であるリョカさんの存在が大きい。

 彼女自身それを自覚しているかは定かではないが、これだけの力の持つ者を傍に集めてしまうのはやはり女神様ですら把握できない力を持っているのかと疑ってしまう。



「ロイくんはあんな理不尽とどう戦うのかな?」



「ラムダ様、私もその理不尽の1人だと自負しております。ですがそうですね、私なら真っ向勝負です」



「……へ~、件の魔王様はあの、僕が加護を与えた聖女と真っ向勝負が出来るんだ?」



「むしろ今のミーシャさんを倒すのはそれしかないと考えています」



 確かにミーシャさんは火力面で言えばこの世界でも上位に位置する聖女だろう。

 しかし、如何せんまだ若い。

 戦い方や経験が足りていない。

 彼女はそれをガイルにもある様な天性のそれで戦いを進めるが、それでもやはり追いつけない場合がある。

 それはアルフォースとの戦いでよくわかる。

 彼女はまだ、人間の戦いのすべてを知っていない。



「変に火力で押すのではなく、ある程度技で揺さぶる。それが最も効果的かと」



「なら今どうすんだ? それが通用しなさそうなカナデがいるぜ?」



「それも同じですよ。やはり2人とも経験が足りていないように思えます。現にスキルでは圧倒できるはずのテッカに致命傷すら与えられていない。テッカの経験が、彼女たちの理不尽を上回っているのです」



「さすがの年長者ですね。ですが……」



 ルナ様が苦笑いでテッカではない方(・・・・・)に目をやる。



「その経験もスキル威力も足りていない勇者が、理不尽を一身に背負う羽目になっていますね」



 私はそっと顔を逸らした。



『いだだだだだっ! 止めてミーシャ、カナデ! 抉れる、俺の顔抉れるから!』



『耐えろセルネ! 持ちこたえれさえすれば勝機はある!』



『テッカさんさっきから全部避けてるじゃないですかぁ!』



『ふははははぁ! 燃え尽きろですわぁ! 喰らえですわセルネ!』



『なんで俺なの!』



 カナデ嬢の青い爆炎交じりの掌底を全て体で受けるセルネくんがあまりにも不憫である。

 けれどそんな攻撃を受ける銀狼の勇者を見て改めて思う。



「しかしかったいよなあいつ。ミーシャとカナデの攻撃を受け続けてなお、ピンピンしてるじゃない」



「……」



 ルナ様が顔を体ごと傾け、セルネくんを見つめている。

 何かあるのだろうかとそちらに目をやると、月神様は可憐な笑みを浮かべて首を横に振った。



「……ふむ。意外と、セルネくんがカギになっているかもしれませんね」



 私が笑みをこぼしてそう言うと、女神さまたちも小さく頬笑みを浮かべた。

 疑っているわけではなく、勇者とはそういうものなのだと変に納得してしまったゆえである。



 私は一度画面から意識を逸らすと、テルネ様が不満顔を浮かべている。



「どうかしましたか?」



「……いえ、ソフィアなのですがまだ1人みたいで」



「ありゃ本当だ。残ってんのは……タクトか?」



 ルナ様が小さく笑いを溢し、画面を2つ表示する。

 片方にはテルネ様の加護が発揮されている区域で、本を微動だせずに読みふけっているソフィア嬢と、もう片方ではアヤメ様が加護を与えたであろう魔物だらけの区域でタクトくんが魔物たちに喜々として突っ込んでいる光景だった。



「……趣味に走りやがった」



「本当に魔物が好きな子がいるんだねぇ」



「まったくあの子は……」



「ソフィアさん、リョカさんの知識の影響で、それを吸収することに貪欲になりましたもんね」



 それぞれが呆れている中、クオン様がタクトくんを見て少し残念そうな顔を浮かべた。



「あのタクトくんって子の戦いをちょっと見たかったんだよね。うちの馬鹿にあれだけの啖呵切った子だし、僕としても好ましい戦い方をしていたからね」



「タクトはセルネとは違ったタフさがあるわよね。根性で解決! を地で行く奴だからなぁ」



「それでも人間の体は脆い。根性だけでどうにもならない……んだけれど、あの子はそうじゃない。だから興味あるんだよ」



「あんだよ、竜でも渡すのか?」



「う~ん、ちょっと考えてる。でもあの子、竜も魔物と見なしている節があるんだよなぁ」



「人にとっちゃ、厄災を振り撒くもんは全部一緒だろ」



「そりゃあそうだけどさぁ。僕としてはちゃんと竜を見てくれる子にギフトは渡したいじゃない」



「リョカさんに相談してはどうですか? 彼女ならその勘違いを正してくれますし、何よりタクトくんは誰よりもリョカさんの言うことなら聞くでしょう」



「う~ん……そうしようかなぁ。でもそれも今回の戦いで見定めたかったし、何とか戦ってくれないかなぁ」



「遺跡とは何が起こるかわからないものです。それにタクトくんは何だかんだ引き寄せる性質(・・・・・・・)なので大丈夫ではないでしょうか」



「……ふ~ん、君のお墨付きなら期待しちゃおっかな」



「ええ、ぜひ存分に見定めてあげてください」



 私は笑みをこぼし、画面の中でえりあぼすに飛び乗って歓喜の声を上げているタクトくんを見つめるのだった。

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