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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
25章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、企画を任される。

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聖女ちゃんと新たな祝福

「む~」



「今日のルナはご機嫌斜めね」



「ルナがいないことをいいことに、リョカが好き放題言ってるからな」



「どうせテルネとのことでしょう? あんたテルネに甘えるのは良いけれど、もう少し態度を何とかなさい」



「……」



 ルナが呆然とした顔であたしに振り返った。



「まあ、釈然としねぇよな。お前にだけは人となりについて言及されたくねぇって」



「何か言った?」



 アヤメの頭を掴むと、神獣はあっさりと目を逸らして何も言っていないと言った。

 


 今あたしたちは教室で自習をしている。

 ヘリオス先生が昨日リョカが提案したダンジョンについて学園に説明しているらしい。



 すると、最近では自分のクラスに戻らず、あたしたちと授業を受けているソフィアがクスクスと笑う。



「テルネ様、いつもルナ様のことを心配していましたよ」



「む~……」



「こいつテルネになら何言っても許されると思っているからね、今さら対応を変えられないのよ。何といってもウン千年の付き合いだしな」



「その点あんたは上手くやっているわよね」



「そりゃあ俺はただ見守ってただけだしね。テルネのことをクオンが見てるみたいにな。アリシアは……ラムダは役に立たなかったし、ルナも放置しちまったからな」



 アシリアの話が出ると、ルナはすぐに肩を跳ねさせる。

 そんなに気になるのならさっさとあたしとリョカに頼めばいいのにとため息をつくけれど、どうにもそんな話が出来る段階は過ぎているらしい。



 あたしはルナの頭にポンと手を置く。



「あたしもリョカも、あんたにだったら甘えられてもいいのよ」



「……はい」



「え、本当? それなら今日の晩御飯――」



「あんたには言っていないわ。あんたはもう少し自分で何とかなさい」



 あたしはため息をつき、アヤメの顎を撫でてやるのだけれど、ふとソフィアとテルネの2人が気になり尋ねる。



「ソフィアのところは手がかからなさそうでいいわね」



「……え~っと」



 ソフィアが苦笑いを浮かべる。

 あれはあれで大変なのかしら。



「女神は完ぺきではないって言うのはよくわかったわ」



「あ、いえ、そういうことではなく。その、テルネ様は、あまり感情を言葉にはしないのでその、私と一緒にいて楽しいのかがわからなくて」



 寂しそうに言うソフィアに、あたしは拳を見せてみる。わからないのなら一発殴っておけばいい。そう助言しようとすると、妙な気配が背後からして振り返る。



「大丈夫だよソフィアちゃん、テルネ、十分楽しんでいる。あの子は顔にも言葉にも出ないけれど、態度には出るからね。君のところから離れないのが何よりの証拠さ」



「クオン」



「やっほ、ルナにアヤメ、ミーシャちゃん、昨日ぶりだね」



「……昨日も思ったけれど、あんた暇なの?」



「暇だよ~。だってルナとアヤメはいないし、最近ではテルネまでいない。まともに上で仕事しているの僕だけなんだもん」



 クオンの軽い非難に、ルナが顔を逸らした。



「えっとその、すみませんクオン、アヤメだけでも上に戻しましょうか?」



「絶対に嫌よ! というかお前が戻りなさいよ」



 いーっと歯をむき出しにしてガウガウするアヤメを抱き寄せて黙らせ、クオンを見る。

 別に怒っている感じではないように見える。



「ああううん、別にいいんだけれどね。アヤメとラムダはともかく、ルナとテルネが楽しそうなのは僕も嬉しいし、最近ではフィリアムも楽しそうだし、僕は何も言わないよ」



「それは……ありがとうございます。でも、それならどうしてこちらに?」



「う~ん? そりゃあ楽しそうだから――は半分。もう半分はちょっとお礼にね」



「お礼?」



 あたしが首を傾げると、クオンの手から光が上がった。



「あ、は?」



「あら、これは――」



 クオンの手から離れていった光がどこかに飛んでいった。

 クラスメートたちが一瞬驚いていたけれど、あたしの顔を見て、何かを納得したように日常風景に戻っていった。



「リョカちゃんとミーシャちゃんのおかげで、新しいギフトが生まれたよ。だからそのお礼」



 ギフトが生まれた? 正直そんなこと言われてもあたしでは理解出来ない。

 とりあえずチラとルナとアヤメを覗くと、2人が考え込んでいた。



「ミーシャちゃんにこのギフトを上げても良かったんだけれど、適性がなくてね。今は唯一(・・)の適性持ちのところに行ったよ」



「どんなギフト?」



「う~ん、それは次に会った時(・・・・・・)かな。ただ新しいギフトっていうのは、新しい信仰が必要なんだ。それをリョカちゃんとミーシャちゃんが作ったの」



「記憶にないわ」



 クオンが空を指差した。



「竜の新しい形を空に打ち上げてたでしょ? 信仰による星の龍、人々は空で瞬く竜に願いを見た」



「ああ、あれ――ってことは」



 クオンがニコリと笑みを浮かべた。

 なるほど、ということはあの竜はあの子の下に行ったのね。



「いや~、それに今あっちには都合よく竜に詳しい馬鹿ムス……図体のデカいのがいるからね。あの子は強くなるよ」



「そう、楽しみだわ」



 するとクオンがあたしの手を取った。



「ケダモノと、そして我らが龍を司る聖女・ミーシャ=グリムガント、あなたの気高き信仰は我ら龍とも並ぶほど圧倒的であり、龍をも超えるほどの清純である。その信仰に我ら龍は敬意を持ち、あなたをただ1人の龍の巫女として――」



「おい」



「……何アヤメ、邪魔しないでよ」



「なにどさくさ紛れにうちの聖女引き抜こうとしてんのよ」



 クオンがプクと膨れた。



「僕に聖女いないもん。アヤメはいつだって聖女得られるじゃん」



「つい最近女神間で聖女もつなって言われたばかりよ!」



 2人が喧嘩しそうな雰囲気になったから、あたしはアヤメとクオンを同時に撫でる。



「ったく、しょうがないな。今日はこのくらいで勘弁してあげよう」



 そう言ってクオンがあたしに触れて、何か得体のしれない力が流れ込んできた。



「あ、こらてめぇ!」



「それじゃあねミーシャちゃん、今度アヤメのいないところでゆっくりお話をしよう」



 そう言ってクオンが手を振って教室から飛び出して行った。

 何というか、アヤメとは違った騒がしさ……リョカ風に言うのなら華やかさのある子ね。



 クオンの触れたところを頬を膨らませて擦って払おうとするアヤメを抱き上げて、あたしは呆然としているルナとソフィアに目をやる。



 まあ、普段通りね。

 そうしてあたしはいつも通りにどっしりと椅子に腰を深く下ろすのだった。

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