魔王ちゃんとダンジョン企画
「もう形にしたのか、やはりお前に頼んで正解だったな」
「俺が休んでいる間に面白れぇ話すすめてんのな」
「……ああ、魔王は休むことなく来たというのに、学園所属の勇者はこぞって休みをとったんだったな」
「悪かったって。俺もまさかリョカとミーシャが普通に登校するとは思ってなかったんだよ」
翌日、テルネちゃんとまとめた書類、それと出来上がった装備や道具を持ってヘリオス先生とテッカに会いに行くと、そこにはガイルもおり、話に加わった。
「リョカ=ジブリッド、しかしこれは」
「テルネ様がこれだけ協力してくれたのか」
「ええ、はい。多分ルナちゃんと一緒にいることへのお礼だと思います」
今朝はミーシャの方にルナちゃんがおりここにはいない。だからこういう話も出来てしまう。
「あ~、テルネ、何だかんだルナに甘いもんな。というか基本的にルナの話しかしねぇ」
「死神様のこともな」
「年の離れたお姉ちゃんって感じだよね」
僕の淹れたお茶を飲みながら、先生組が愉快そうに笑っている。
「しかしこれは面白いですね。一般生徒は遺跡――だんじょん? ですか。それを探索し、その最中に腕試しのためにボス部屋? に飛んでいく選択が出来る」
「しかもそのボスである俺たちの近くに飛ばされる仕組みか」
「なによりも、ギフトを制限した俺たちの誰かと戦うことができ、もし倒すことが出来たのなら褒美としてダンジョンにはない強力な加護付きの装備を得ることが出来る」
「あと僕が力を入れたのはギブアップクマくんだよ」
「なんだそれ?」
「ラムダ様のおかげで魔物が出るからね、グリッドジャンプを使えるクマが出てくるアイテムを作ったの。これなら続行不可能だと判断してもすぐに出てこられる。それともしもの時のためにロイさんの小麦をダンジョンにまこうと思っているよ」
「ロイの?」
「あ、テッカは知らないか。ロイさん小麦まくと分体を生成できるんだよ」
「『豊かに芽吹く血思体』な。あれ本当に厄介なんだよな。テッカ、今のロイを血冠魔王時代のあいつと思うなよ、多分あの時よりつえぇ」
「……親父さんを倒したとは聞いたが、それほどか。俺も一度手合わせしてもらわなければな」
テッカの意欲が見えたところで、ヘリオス先生が苦笑いを浮かべたのが見えた。
「血冠魔王ですか。話には聞いていたのですが、大分馴染んでいるのですね」
「まあ、思うところはあるかもしれないですけれど、最早別人ですから。女神様に預けた魂が血冠魔王ということで1つ」
「いや、私も生徒を救ってもらった身だからね、何も言わないですよリョカ=ジブリッド」
「ロイとアルマリアが一緒のところを見たらびっくりするぜ。あいつ常に甘やかしてるからな」
「いや、昨日ラムダ様に聞いたんだけれど、サボろうとするアルマリアをロイさんが優しく叱りつけて、なんと一度も仕事を抜け出さなかったってマナさんが喜んでいたそうだよ」
「……あいつ、グエングリッターに行っても成長できなかったのか」
「今のアルマリア強いよ。僕とロイさんからのエクストラコード持ってるし」
「はっ、魔王の力を借りてやっと俺たちとどっこい程度だろう」
したり顔のテッカだけれど、久しぶりに慢心テッカが見れて、僕は何となくホッコリする。
「なんだその顔は?」
「いや、うん」
「まっ、それはお楽しみっつうことだな」
ガイルの言葉に僕も頷き、そして学校向けに僕がまとめた書類をヘリオス先生に渡す。
「これ、幾つか刷っておいたので先生方で共有してください。それと企画通すならこういうのがあった方が何かと便利ですよね?」
「ああ助かるよリョカ=ジブリッド、これで学園を納得させられると思う」
「それならよかったです。それと先生、今からちょっとダンジョンを作りに行きたいので、授業の方なんですけれど――」
「ああ構わないよ。ガイル先生とテッカ先生も手伝いますか?」
「じゃあそうすっかな」
「うむ、それではそうしよう。他に手伝いはいるか?」
「ロイさんが手伝ってくれるそうです。今アルマリアとラムダ様とこっちに向かっています」
話はまとまり、この後僕はダンジョン建設に取り掛かるのだった。




