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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
25章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、企画を任される。

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魔王ちゃんと旅で得たもの1

「魔王種、魔王種ですかい……っ!」



「実物がこちらになります~。強力な魔物の一部だから、使う時はよく考えてね」



「ふぉぉぉっ!」



 先生のご厚意によって授業丸々僕たちの話になり、まだまだ話し足りなかったけれど、すでに授業も終わり昼食の休み時間になっており、話を途中で終えると同時に、向こうで買った物や持ってきた物をクラスメートに配っている。



 そして案の定魔王種に興味を持ったタクトくんにその腕を渡すと、とても喜んでくれた。



「オルタくんにはこっちね」



「これは――?」



輝華星(きっかせい)――オルタくんにはエンゲージスターって言った方がわかりやすいかな」



「――ッ! これが、これがかの星神様に祝福された鉱石。世に出回っているもののほとんどが偽物のあの」



「祝福されたって言うか、まんま隕石なんだけれどね」



 僕はそっとオルタくんに耳打ちをする。



「それ、偽物じゃなくて本当にフィムちゃん……星神様に頼んで落としてもらった大変貴重なものだから、あんまり使い過ぎないようにね」



 オルタくんがあんぐりとしている。

 さっき僕がみんなの前でした話だけれど、当然女神様関連の話は伏せてある。

 ルナちゃんとアヤメちゃんも学校に通っているし、あまり女神様の話題を出すと、2人の正体につながる可能性もあるからだ。



「は、はいでござる。しかしこの大きさ……削っても大丈夫でしょうか?」



「うん、そのために特大にしてもらったから」



 喜ぶオルタくんだけれど、ルナちゃんがそっと僕たちの傍でその小さな口を開いた。



「フィリアムが欲しかったらいつでも落とすと言っていましたよ」



「あ、結構です~」



 オルタくんが残念そうな、切なそうな顔で僕を見ているけれど、こんなものぽんぽん人の世に降らせていたら女神様の格があまり良くない方向に行ってしまいそうだ。

 そんな僕たちを見ていたクレインくんが小さく笑った。



「リョカさまたちはどこへ行っても、偉業を成し遂げてしまうのですね。差支えなければ後で星神様のことも教えてください」



「うん、オタクたちになら大丈夫だよ。そんで、クレインくんにはこれ」



「あれ、これって」



 グエングリッターにいる時、リードから興味深い話を聞いた。

 食品の流通が未だグエングリッター全土とはいかず、頑張って『星呼びの道具屋(ミルキーウェイ)』の勢力を伸ばしているらしいのだけれど、ある村に商談を持ちかけた時、断られてしまったとのこと。

 曰く、この村には女神様が祝福してくれた果実がある。これさえ口に入れておけば飢えることはない。

 とのことだった。



 僕はその村が気になり、ルナちゃんとアヤメちゃん、フィムちゃんを連れてリードと共にその村に行ってみたのだけれど、そこには思いがけない宝物があり、僕はついリードに「あ、これは無価値なものですね。ということでこの村は僕のギルドが管理するということでよろしいですね」と、あまりにも驚いたために、あからさまな対応をしてしまったからか、リードに一枚噛ませろとしつこく問い詰められ、村全体と取引することを進めた。



「あのリョカ様、これって確かカイルの実の……」



「食べてみ」



 首を傾げるクレインくんだったけれど、それを口に運び、すぐに驚いたような表情を浮かべた。



「あ、あれ? これ、こんなに美味しかったんでしたっけ?」



「市販されているそれは、大量の甘味料を使ってるし、テンパリング……温度管理も甘い。貴重ではあるけれど製品としてはまったくなっていない商品だった」



「あ、あのリョカ様、もしかして」



「うん、グエングリッターの新しい名産になるよ。ジブリッドとミルキーウェイの共同開発、チョコレート。まさかあんなところで育っているカカオを見られるとは思ってもみなかったよ」



 チョコレート、この世界にも存在していたのだけれど、さっき言ったように商品としては非常におざなりな出来だった。

 だから昔お父様にカカオ……カイルの実を買って商品にしようと提案したことがあるけれど、何とお父様ですらこの果物(・・)を見たこともなければ、どこで採れるのかもわからないのだと言った。

 そもそも加工品だということも知らなかったらしく、カイルの実自体幻の果物という認識だった。

 だからこそ、唯一カイルの実を取り扱っているカイル商会(・・・・・)に何度も取引を持ち掛けたそうなのだけれど、上手くいかなかったとのことだった。



 故にリードも村に実っていたその植物の正体もわからず、何も加工せずに売ろうとしていたほどだ。



「本来のチョコレートはね、栄養価も高く、カロリー……力の出る食品なんだ。君なら使いこなせるでしょう?」



「ちょこれーと……」



「あ、でも食べすぎ注意ね」



 そんな注意をしながら、僕はリードと試作したチョコレートをクレインくんに渡したのだった。

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