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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
24章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、故郷へ帰る。

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聖女ちゃんと吹っ切れた空間越えのギルマス

 リョカとロイがどこか達観したような顔をしている。

 きっと難しい話をしていたのだろう。

 遠回りに、難しく考えて感情に名前を付けて――こういう顔をする奴は基本的に理屈を当てはめなければ自分を納得させられない。



 それが悪いこととは言わないけれど、もっと簡単に考えればいいのにとは思う。



「お前みたく誰しも簡単に生きられるわけじゃないのよ」



「難しくしているのは自分でしょう? 人間突き詰めれば戦うか戦わないかの2択よ」



「俺はそう言う考え好きだけれどね」



 何故か自慢げに胸を張るアヤメを撫で、保護者じみた顔をしてのんびりとした空気を放つリョカとロイを横目に、アルマリアたちに目をやる。



「何か2人とも年寄りじみた雰囲気ですね~」



「ああいう顔をしている時は近づかない方がいいわ。腹立つ態度とってくるのよ」



「うちのジジイもああいう顔をしている時があるわね」



「見守ってくれているみたいな顔、エレは好きですよ」



 子どもらしい甘えた表情をするエレノーラを撫でると、パルミールも横から彼女を撫で始めた。



「血冠魔王の娘って言うからどんな化け物かと思ったけれど、エレノーラは可愛いわね。アルマリアは見習いなさいな」



「どうしてそこで私を引き合いに出すんですか~? それと一応言っておきますけれど、エレノーラの補助能力はA級冒険者並みですからね」



「そんなに強いのこの子?」



「質量のある分身と幻覚、視界を奪ったり恐怖を好意に変えるなどなど~」



「……うん、ちゃんと魔王の娘だったわ」



 戦いているパルミールが小さくため息をついたけれど、懐っこい顔でエレノーラが彼女を見上げたために、肩を竦ませて諦めたように再度撫で始めた。



「お姉ちゃんがたくさんできましたぁ」



 喜ぶエレノーラに各々が和んでいると、アルマリアが一歩引いたところでロイやあたしを見ており、あたしは首を傾げて彼女の頭に軽く拳を当てる。



「あぅ」



「なに?」



「え~っと……」



 言い淀んでいるアルマリアに、あたしはしびれを切らして拳を構えて見せると、アヤメに腰を引っ叩かれた。



「その、私リョカさんにもミーシャさんにもロイさんにもちゃんとお礼を言っていなかったなって」



「好きでやっただけよ。それと約束を果たしただけ」



「もぅ、ミーシャさんはすぐそうやって当たり前みたいに言うんですから」



「負けたとはいえ、あなたアルフォースに挑んだんでしょう? 名前を知っている奴なら絶対に正面から挑まない相手に喧嘩を売った時点で、称賛されるべきよ。若いんだから素直に厚意を受け取っておきなさいな」



「まだ負けていない。あっちも本調子じゃない、あたしもまだまだ発展途上。つまり無効試合」



「ガイルみたいなこと言いだしたわよこの聖女ちゃん」



「というか父さんも大人げないですよあんなの。聖女相手に剣技まで使って」



「ん~? 戦っているんだから剣技くらいは当然でしょう?」



「ああそうか、お前『剣輝』についてよく知らないのか」



 あたしは首を傾げる。

 知らないとはどういうことだろうか? ただのギフトで、スキルを使うだけだろう。



「剣輝のスキルって人によって違うっていうか、剣技がスキルになる(・・・・・・・・・)んだよ」



「ん~?」



「ヴェインみたいに剣技がまだまだの奴にとってはただの強化スキルだが、アルフォースくらいの熟練になると、使う剣技そのものがスキルになる。しかもあいつの場合、ギフト『剣輝』と『鳴神(なるがみ)』を合わせて剣技にするからな」



「聖女相手に使う技じゃないですよもう。いや、父さんの剣を拳で弾いていたミーシャさんも大概ですけれど」



「普通は腕飛ぶわよ。どうやって弾くのよ」



「こう」



 拳を戦闘圧で覆って黒くしてみると、パルミールが興味深そうにあたしの手を握ってきた。



「なんで硬化してるのよ。この黒いのは一体何で出来ているのかしら?」



「殺気とかその他諸々の戦闘圧」



「いやよくわからんわ」



「所謂戦闘で発生する気が信仰に代わることで、聖女であるこいつは操れていたんだけれど、何故か知らないけれどこのケダモノ、信仰に変えなくても操れるようになった結果なのよ」



「これスキル使っていないの?」



「使ってない。最初の内はエクストラコードとリーブアルゴノーツで固めていたけれど、必要なくなったから」



「……え? 何言っているのこの子?」



「これが我が国最強の聖女なんですよ」



 頭を抱えるパルミールだけれど、あまりにも失礼ではないだろうか。あたしは持ちうる手段を使っているだけだ。



「まあそのとんでも戦闘圧使用闘法はリョカに聞きなさい。多分似たような事象を知っているはずだから」



「じゃあそうする」



 リョカがこんな戦い方をした記憶はないのだけれど、知っているというのなら聞いてみよう。

 するとアルマリアが、遅くなりましたが。と、前置きをして手を握ってきた。



「というわけで、本当にありがとうございました。まだまだ父さんには言いたいことがありましたけれど、ひとまずは区切りが付けられました」



「そう、次は自分でブッ飛ばしなさい。あのダメ親父、あんたがぶん殴った方がきっと効くわ」



「はいっ、今度は私がボッコボコにしちゃいます――あ、エレノーラ手伝ってくださいね~」



「わかりましたぁ。お姉ちゃんが勝てるように全力で補助します」



「……いや、1人で立ち向かうんじゃないの?」



「無理!」



 清々しく胸を張るアルマリアに頭を抱えるパルミールの肩をあたしは軽くたたき、アヤメの手を引いてリョカの隣に歩みを進めて腰を下ろすのだった。

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