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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
23章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、その剣聖に牙を剥く。

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魔王ちゃんと剣へ繋がる道

「まったく、リードったら先走っちゃって」



「まあそう言ってやんな。あいつらは商人だろ? テッカでもねぇのに隠密とかできるわけねえだろうに、それでもよく見つけたと褒めるべきだぜ」



「え、うちにいるお父様の(さぐり)、王宮に痕跡も残さずに忍び込めるよ」



「嘘だろ? 何で商会にそんな奴がいんだよ」



「何でって、商人にとって情報は何よりも貴重だからでしょう」



 昨夜、僕たちが夕食をとり終えて各々が自由に過ごしていると、リードの使いが飛び込んできて、探っていたのがばれてしまったと謝罪してきた。

 詳しく話を聞くと、アルフォースさんを発見した探が欲をかきもっと情報を持ち帰ろうとしたところ、彼に一瞬で間合いを詰められて斬られたらしく、何とか逃げ帰ってきたとのことだった。



 僕はガイルたちを呼び、急いで準備をして夜中にミーティアを発ち、空が白んできた今現在、アルフォースさんを発見したという場所の上空をリア・ファルで旋回している。



「しっかし、またこの面々か」



「まあ関係者だからね」



 僕と、当初の目的通りミーシャ、それとアルマリアとロイさん、ガイル――本当はバイツロンドさんたちにも来てもらおうと考えたけれど、アルフォースさんと戦いたいミーシャに却下されてしまい、結局このメンバーに落ち付いた。



「ルナとアヤメがいねぇのは?」



「う~ん……」



 僕はチラとアルマリアに視線を向ける。

 すると彼女は肩ひじ張った、何処か緊張した面持で引き攣った笑みで首を横に振った。



「……大丈夫です」



「アルマリア」



 ロイさんが微笑みを浮かべながらそっと彼女の頭に手を乗せた。

 それを受けたアルマリアは照れたような顔で頬を膨らませているけれど、振り払うつもりもないのか、視線で僕に続きを促してきた。



「ちょっと調べただけだから具体的なことはわからないけれど、アルフォースさんは何かを探しているみたいなの」



「何か? それがルナとアヤメがいないこととどうつながるんだ?」



「探し物を見つけるのに一番手っ取り早い方法って何だと思う?」



「根気と気合?」



「バカヤロウ、それじゃあいつまでも帰って来られないでしょ」



「……探し物がある場所を知っている人に聞くこと。ですか」



「さすがロイさん、正解だよ」



「つまり、アルフォース殿は女神様と接触しようとしていたと」



「なんだルナもアヤメも、親父さんの目的を知ってんのか」



 僕は頷き、だからこそ今回は2人にお留守番を頼んだ。

 話がややこしくなりそうだし、探し物が見つかるとわかった途端、また姿を消しそうだしと良いことがない。



「だからってなんでグエングリッターに」



「極星ですよ。フィリアム様は定期的にこちらに来ていたそうですし、それをどこかで聞いたのでしょう」



「女神を頼るほどの探し物ね~。アルマリア、何か聞いてねぇのか?」



「……なにも。父さんは私に何も伝えませんでしたから」



 寂しそうに笑うアルマリアに、ロイさんが手から小さなクマのぬいぐるみを生成し、それを彼女に手渡した。

 お父さんしてるなぁ。



 アルマリアの心のケアはロイさんに一任するとして、この森の中、どう捜すべきか。

 そもそもバイツロンドさん然り、どうして森の中に隠れるかな。堂々と表を歩いてくれればいいのにと小さく悪態をつく。



 リア・ファルをアルフォースさんとの接触ポイント付近に浮かせてはいるけれど、多分ここにはもういないだろう。

 噂ほどの実力者なら、リードの探で不信感を抱いてどこかに身を隠しているかもしれない。



 僕は少し考え込みため息をついた。

 そしてリア・ファルにアガートラームをセットし、それを外に射出する。



「リョカ、なにしてるのよ?」



「ん~、もっと探知の範囲を広げようかと思ってね」



「どうやって?」



「こうやって――」



 外に飛び出して行った無数のアガートラームが、ほんのり薄い魔王オーラを球全体から円を作るように放った。

 1つのアガートラームが魔王オーラを広げていくと、円を伸ばせるギリギリにある次の魔剣にオーラを当て、その球体がさらに魔王オーラを放つ――つまり連鎖作動広範囲ソナーだ。



 とはいえ音波とは違く、ルナちゃん……月神様の加護である『心打つ魂の絶唱(アリアテトラ)』を魔王オーラに組み込んでいるから、それは魂に反応するようになっており、森に生息している魔物やら動物は除外できるようになっている。



 そしてある程度索敵を広げていると、アルマリアに似た魂(・・・・・・・・・)を捉えることが出来た。

 さすが親子、ダメもとだったけれど、幾つかの類似点を引き当ててくれた。



 しかしこの加護付きオーラ、もう少し使いこなせないだろうかと思案する。



 けれど僕は首を振り、改めてミーシャたちに目をやる。



「見つけた」



「さすがだな。そいじゃあ逃げられる前にさっさと捕まえに行くかね」



「……うん」



「アルマリア、あなたはとりあえず私から離れないように。アルフォース殿から何かされるわけはないでしょうが、あなたがどう動くのか、私にはわかりませんから」



「うん、ありがとうロイさん」



 ロイさんがアルマリアの頭を撫でているのを横目に、ミーシャが呆れたように盛大なため息をついた。



「アルマリア、あたしにした一方的な約束、覚えているでしょう?」



「え? ええ、はい」



「なら見ていなさい。とりあえずぶん殴ってやるから、それから決めなさい」



「はいっ」



 少しだけ緊張がほぐれたアルマリアに安堵しつつ、僕はリア・ファルをアルフォースさんのいる場所まで進めるのだった。

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