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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
23章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、その剣聖に牙を剥く。

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魔王ちゃんと性格診断

「ねえミーシャさんや」



「あによ」



 朝食の後、スピカに誘われたけれどどうにもそんな気分ではなく、断ったその後もダラダラとしており、さすがにマズいと厨房でお菓子作りをしているのだけれど、それについて来てたミーシャが何も言わずに椅子に座っており、耐え切れずに僕から声をかけた。



「僕さ、そんなに人の心がわからない系魔王?」



「人の心がわからないとまでは言わないけれど、あんた人から向けられる好意に鈍すぎ」



「いやいや、ちゃんと気付いてますよ。セルネくんもスピカも僕のこと大好きってことでしょ?」



「違う。その後は? セルネ……は撫でておけば問題ないけれど、スピカはどうしてほしいと思っているかわかる?」



「いやわかるわけないでしょ。僕に読心術は使えないよ」



「あたしも使えないわよ。でも少なくとも、スピカがあんたに求めているものはわかるわよ」



「おいおい僕はアイドルだぜ? ファンサも完ぺきにこなしているつもりだよ」



「……ちなみにどんな?」



「笑顔! そして笑顔! たまにウインク!」



「うっさいわね。そういうことじゃないのよ」



 いやいや、好きな推しに笑顔を向けられた時の高揚感を知らないのかこのゴリラは。と、僕が首を傾げていると、ルナちゃんがクスクスと声を漏らして笑っていた。



「リョカさん、ちょっと失礼します」



 そう言ってルナちゃんが手を伸ばすから、僕は膝を折って頭に触れる彼女の手を受け入れる。

 すると、思案顔を浮かべていたルナちゃんと、隣で彼女の手を握っていたアヤメちゃんが呆れたような顔を浮かべた。



「……いやリョカ、好きになるっていうのはファンとなるとは違うだろ」



「同義語では?」



「お前の歪みはここからか」



「リョカさん、アンリさんとの出会いが本当に衝撃的だったんですね」



「ガチ恋勢かお前は」



 まさかこの世界でガチ恋勢なんていう言葉を聞けるとは思わず、アヤメちゃんをまじまじと見るのだけれど、神獣様はそっぽ向いて口笛を吹くだけでそれに関しては言及しなかった。

 とはいえそれは否定したいために、僕は首を横に振る。



「いやいや、ちゃんとマナーは守っていましたし、しっかりとした距離感でしたよ」



「リョカさん、こちらでも言えることなんですが、人1人に向ける感情がとんでもなく大きいんですよ。よく制御できていますよね」



「真っ当な恋を本気でしたことのない憐れな獣だったんだなお前。コントロール力が高いのは元々の素質だろうな」



 何だかいわれのない非難を浴びている気がする。

 僕はさっきから焼いていたクレープ生地をクリームを間に塗って重ねていく。



「ほらミーシャ困ってますから、このくらいで」



「別に困っていないわよ。今の話で何となくだけれどわかったし」



「え、なにが?」



「あんた好意を向けてくれる相手には、自分がされて嬉しいことしかしていないってことでしょ?」



「え、当たり前では?」



「というかミーシャ、お前本当リョカのことだとよくわかるな」



「さすが幼馴染ですね」



「そういうことよ。どれだけ長い間これの相手をしていたと思っているのよ」



「おいおいおいおい、言うじゃないかメスゴリラ、お前が僕の何を知ってるって言うんだお~ん?」



「あんた撫でられたり抱き締められたり、自分だけを見てほしいとかの願望があるでしょ。おじさんにもおばさんにもあれだけ愛情注がれて育ってきたのに、愛情不足の子どもが欲しがるものを求める甘えん坊の寂しがり屋でしょ」



「やめろー! いきなり僕の内情丸裸にしてくるな!」



「というより出来ることが当たり前の環境で育ってきたのに、それを褒める人がいることを知ってしまった故に。ですね」



「止めて月神様!」



「お前そのアンリとかいうのにどんだけ銭投げて褒めてもらってんだよ」



「やめてーっ」



 アンリたんのチャンネルでは常連となっていた私は、周りからは褒められおじさんと呼ばれていた。墓まで持って行きたかった秘密である。



「さらに分別が付くのも問題だな。お前自身されて嬉しいことを他人にするくせに、他人がやったことはその相手も嬉しいことだと微塵も思っちゃいねぇ。よそはよそ、うちはうち。をお前は絶対に破らないからな」



「僕を辱めて何が目的だぁ!」



「そのケーキくれ。ミルクレープだったか?」



「……本当に詳しいですね? それについてツッコんでも良いですか?」



「今は何も答えないぜ。どうせ予想はついているだろうが、俺からはノーコメントだ」



 ミルクレープを切り分け、僕はため息を吐いてアヤメちゃんにそれを手渡す。

 アヤメちゃんは女神の中でも結構異質だ。ミーシャやガイルから神獣様についての話を聞いた時、ちょくちょく引っかかる言動があった。

 きっとそれに由来することなのだろうけれど、今はまだ語れないというのなら僕もこれ以上探るのは止めようと頭を切り替える。



 とりあえず話を戻そうとミーシャに目を向けながら、ここの聖女たち用にミルクレープを切り分けて冷蔵庫っぽい箱に入れておく。



「とりあえずあんたはスピカとウルミラとちゃんと向き合いなさいよ」



「わかったよぅ」



「ならこの話は終わりね。それでアルマリアの父親は見つかったの?」



「リードに調べさせてる。多分今日中には居場所がはっきりするんじゃないかな」



「じゃあ今日はもう暇ね?」



「え、うんまあ」



「ちょっとあたしに付き合いなさい」



「珍しいね、買い物?」



「うんなわけないでしょ。試したいことがあるから的になってちょうだい」



「ガイルかバイツロンドさんに頼みなよ」



「あいつら用の対策なんだからしょうがないでしょ」



 一体何をするつもりだこの聖女は。

 正直火力で押されるのは目に見えているから例え組手だろうとこの聖女様と戦闘したくない。けれど断っても不機嫌になるし、僕は頭を抱える。



 そうしてうな垂れるとルナちゃんに背中を撫でられてしまい、渋々と幼馴染の我が儘を飲むことにするのだった。

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