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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
22章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、喧嘩爺ちゃんに会いに行く。

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勇者のおっさんと懐かしき酒の席(予定)

「何じゃあの娘っ子、随分と疲れた顔をしておったの」



「まあそう言ってやるな。あれはここ最近ずっと働き詰だったからな、ヴェインの野郎が親父さんのことを知ってることがわかって一気に力が抜けちまったんだろうぜ」



 ミーティアに帰ってきた俺たちは、リョカが速攻で作り上げたギルド予定の建物の中でくつろいでいた。

 ミーシャとロイはリョカが出ていくとほどなくして、エレノーラたちの様子を見に行くと出ていった。



 現在、この建物には俺とアルマリア、バイツロンドの爺さんとパルミールの4人。



「テッカと親父さんがいりゃあ、何とも懐かしい集まりだな」



「うむ、ガイル、アルマリア、わしらが留守の間、大事はなかったかえ?」



「おおありでしたよ~。聖女候補が魔王になるし、聖女は勇者にも魔王にも引けを取らない超戦闘大好きっ子だし~、その魔王と聖女周りの子たちが速攻でA級冒険者に近づくで、ゼプテンのギルドも大分様変わりしましたよ~」



「随分と愉快なことになってるのね。あ~あ、あたしも不死者になんてなってなければその面白そうな催しにも参加できてたのに」



「じゃからスマンと何度も言っておるじゃろうが」



「相変わらずパルミールは巻き込まれてばかりだな。というかよ、不死者って言ってもただ不死身になっただけだろ? 冒険者としては逆に良いことじゃねぇか?」



「あんた本当に頭筋肉ね、その不死者を従えられる存在がいるってことが問題なのよ。常に死神に見張られているような感覚があるし、それと……」



 パルミールが顔を歪め、忌々し気に言い放った。



「その死なないっていうのが厄介なのよ。良いガイル、あたしたち人間は生きているから……死から逃れたいからあらゆることに手を尽くす。だからそれがなくなったら人間なんてすぐに頑張らなくなる。どれだけ心に言い聞かせても逃げられないのよ」



「そういうもんかね?」



「まあわしなんて長生きじゃからな、その手の感覚はとうに薄れてきておるが、主らには致命的じゃろうな。何より死なないとわかっておると喧嘩の質も落ちるわい」



「そりゃあ大問題だな」



「……あんたたちは脳を腐らせた方がまともになるんじゃない?」



 パルミールが頭を抱え、リョカが置いて行った茶をカップに注ぎ、それを口に運ぶとと、すぐにアルマリアに目をやった。



「で、あんたはどうして今さらアルフォースを捜してんのよ? やっとギルドマスターに向いていないって自覚した?」



「……そうかも」



 シュンとするアルマリアに、パルミールが目を鋭くさせた。



「あんたなにかあったの?」



「なにかってわけでもないよ。ただ、勝てなくなっただけ」



 力ないアルマリアの言葉に、パルミールが頭を掻きその手で傷心のギルドマスターの頭に手を置いた。



「おめぇも相変わらず素直じゃねぇよな」



「意味わかんないこと言わないでくれる?」



 俺と爺さんでゲラゲラ笑っていると、心底機嫌悪そうにパルミールがそっぽ向いているが、アルマリアを撫でる手を止めず、耳が赤くなっていた。

 昔からこういうやり取りは変わらんのよな。



「まあ、アルの坊主にも色々あるからの、あまり嫌ってやるなよアルマリア」



「……まあそれは、会ってから決めます」



「そうか――時にアルマリア、お主勝てないと言ったが、大分力をつけたのではないか?」



「借り物の力ですよ~」



 爺さんとパルミールが首を傾げるから、俺はエクストラコードのことを告げる。



「エクストラコードだってよ。知ってるかお前ら?」



「なにそれ?」



「ほ~、またえらく懐かしいものを。最近の魔王には不要なものであったが、あるとあるでまた厄介なんじゃよな」



「爺さんは知ってるのか。そんでアルマリアはリョカとロイからエクストラコードを貰ってっから大分強くなってるぜ」



「そのエクストラコードって何よ? スキル?」



「簡単に言うと、魔王の家臣に与えられる新しいスキルじゃな。その魔王が持つ素質をスキル化して、それを臣下に配るというものじゃ」



「なにそれズルい」



「ん?」



 爺さんの言葉に俺が違和感を覚えていると、アルマリアもなのか一緒に首を傾げる。



「お爺ちゃん、素質をスキル化って言いました?」



「む? ああ言ったぞ。エクストラコードはただの1つの素質をスキルにする」



「つまり、エクストラコードっていうのは臣下それぞれに同じスキルが与えられんのか?」



「そりゃあそうじゃろ、素質は1人1つじゃ。どれだけ才能があろうとも素質という括りな以上出来上がるスキルを1つに決まっておろう」



 俺はアルマリアと顔を合わせ、げんなりと肩を竦めた。



「ってそうか、ゲンジのスキルってロイさんのあれで強化されたスキルだったんですね」



「そういうことだな。だが……」



 臣下それぞれに異なるスキルを与えている魔王を俺は知っている。



「リョカさんのエクストラコードは与えられた人全員に別のスキルですよ」



「本当に厄介な魔王じゃのう。あの聖女の娘っ子も使えるのか?」



「性質の悪いエクストラコードを使えるな」



「ふ~ん、で、あんたはどんなのを使えるのよ?」



「私ですか? 既存のスキルを全体的に強化するエクストラコードと私の知っている攻撃を召喚するエクストラコードです」



「攻撃を召喚?」



「つまりアルマリアが知ってる最高火力をいつでもグリップグリッドで吸収できんだよ」



「いやズルすぎでしょ。なにそれあたしも欲しい」



「まずは魔王と懇意にならんとなぁ。血冠魔王は良い奴っぽいな」



「リョカに負けて以来すっかり保護者が板についてきちまってるな」



 愉快そうに爺さんが笑い、目を細めた。



「最近は魔王の質も下がっておると思っておったが、リョカ=ジブリッド、中々に面白そうな娘っ子じゃわい」



「爺さん先に手を出すなよ? まずは俺からだ」



「わかっておるわい。わしはどちらかというとあっちの聖女の娘っ子と殴り合ってみたいわい、あれは久々に見る怪物じゃ、腕が鳴るわ」



「テッカさんが打倒ミーシャさんを掲げていますね~」



「あいつじゃ相性悪いじゃろ、す~ぐ慢心するからのテッカの坊主は」



 ゼプテンのギルドにいた時と変わらない空気感、この妙な空気のせいか、何となく若い頃に普段の面々で酒を回し飲みしていた時を思い出す。



「おい爺さん、今日は俺の酒に付き合ってくれよ。リョカに頼めばうまい肴も出てくるぜ」



「え、あの子料理上手なの?」



「王都でも食べられないような絶品料理の数々が出てくるかなぁ」



「それは楽しみじゃの。ガイル、わしを誘うと言うことはそれなりの酒は用意してあるんじゃろうな?」



「当たりめぇだろ、明日はまともに動けると思うなよ」



 久々の再会に、俺自身それなりに感動していたらしい。

 あとはテッカでもいれば良かったが、今回は置いてきてしまったからおあずけだな。



 そうして俺たちは昔を懐かしむように、談笑に花を咲かせるのだった。

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